2019.2.21 06:27/ Jun
会社は、いくつもの「異なる島」からできているのだとします。
島は、それぞれ「課」と言われ、それぞれをマネジメントする「上司」がいます。
島の間は、わずか「3メートル」くらいしか離れていないのかもしれません。
しかし、島には、それぞれ「目に見ること」はできない「独自の文化とルール」がしかれており、
島における「人々の暮らし」を決めています。
島の文化、島のルールにもっとも強い影響力を与えているのは、島の主である「上司」です。
島が異なれば、上司も異なります
そして
上司が変われば、島は変わります
・
・
・
つい、せんだって、ある文献に出会いました。
Lazear et al(2015) The Value of Bosses. Journal of Labor Economics 33, no. 4 (October 2015): 823-861.
という論文で、上司が職場に与える影響力を考察する論文でした。
論文は、下記のように
1.職場の生産性に対して、上司が与える影響力は少なくないこと
2.もし仮に「下位10%の質の低いドサイアク上司」と「上位10%の質の高い上司」を置き換えるとすると、職場全体の生産性は1割程度高くなること
3.質の高い上司のもとで働く部下は、会社を辞める可能性が低いこと
を明らかにしていました。
Replacing a boss who is in the lower 10% of boss quality with one who is in the upper 10% of boss quality increases a team’s total output by more than adding one worker to a nine-member team would. Workers assigned to better bosses are less likely to leave the firm.
(上記、論文要旨より引用)
とりわけ2で指摘されている内容は、なかなかに香ばしい(笑)
「下位10%の質の低いドサイアク上司」と「上位10%の質の高い上司」を置き換えるとすると、職場全体の生産性は1割程度高くなる(笑)アチャパー!
ドサイアク上司とキラキラ上司のつくりだす生産性は、かくのごとく異なるのです。
▼
先ほどの論文の数字、皆さんは、それぞれいかにお感じでしたでしょうか?
おそらく、ハダカン的には「そうだよな」と感じる方が多いのではないか、と思います。
むしろドサイアク上司とキラキラ上司の差が「10%程度」というのは「思っていたよりも低めだな」と感じた方も多くいらっしゃるのではないか、と思いますが、いかがでしょう?
ドサイアク上司とキラキラ上司の差がどのくらいかって?
そりゃ、
「月」と「スッポン」
「美女」と「野獣」?
「天国」か「北斗の拳的世界」
くらいに「大きな差があるよ」と思われた方も、いらっしゃるのではないかと推察します。
ただし、ここでは、その程度の是非について問うことはせず、「ドサイアク上司とキラキラ上司の職場の生産性には差があること」を、とりあえず「是」として話を進めましょう。
しかし、問題は、ここまで「職場の生産性に差があること」はわかっているのにもかかわらず、企業の中には、
1.「上司になるとき」にきちんとしたマネジメントスキルを教えている例は、そう多くはない
2.「上司になったあと」に、 日々のマネジメントを振り返ったり、フィードバックを与えたりする機会を提供したりしている例は、そう多くはない
3.数回にわたり行動改善をうながしても、変わろうとしない「ドサイアク上司」を下げる仕組みが、あまり多くはない
というのが現状かと思います。
要するに「野放し」。
「北斗の拳的世界の野放し」
そして、そのような場合、結果として
プアなマネジメントの犠牲は、いつだって、一般従業員に及びます。
生産性をあげたくても、あがらない
どうしようもないので、長い時間働くことでカバーをする
よって生産性がさらにさがる
次第に疲れて、離職につながる
もう一度、申し上げます。
プアなマネジメントの犠牲者は、いつだって、一般従業員です。
あべし(泣)
オマエはもう死んでいる
▼
今日は、上司が職場の生産に与える影響力についてお話をしました。
皆さんは、ドサイアク上司のもとで働いたとき、どんな影響を受けていましたか?
皆さんの知っている「ドサイアク上司」と「キラキラ上司」の生産性の差は、どのくらいありますか?
島が異なれば、上司も異なります
そして
上司が変われば、島は変わる
そして人生はつづく
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