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2019.2.12 06:40/ Jun

あなたの組織に潜む「職場のぐるぐる」とは何か !? : 「個人」を悪者探しで「アチョー」しても問題解決できない、たったひとつの理由!?

 長時間労働は「円環的因果律」から生まれている
   
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 最近、長時間労働を「職場ぐるみ」で解決するようなプロジェクトに従事するようになりました。どの現場も事態は深刻で、そこで起きている人々の苦労は多種多様なのですが、一方で、どの現場にも「共通」するようなこともございます。
  
 そのひとつに間違いなく掲げられ、かつ、僕の脳裏に浮かび上がってくるのが「円環的因果律」というまことに奇妙なワンワードです(円環的因果律は、もともと家族療法のキーワードですね)。
    
 端的に申し上げるのであれば、
  
 長時間労働の問題は「円環的因果律」から生まれている
  
 ということになります。
  
 これは、いったい、どういうことでしょうか。
 以下では、具体的に見ていきましょう。
   
  ▼
  
 まず、円環的因果律とは
  
 1.「原因」と「結果」が複数あって、しかも、相互に結びついていて、ひとつに特定できない
 2.「原因」と「結果」の複雑な結びつきによって、結果として「問題」が浮かび上がっている
  
 状態のことをいいます。
  
 円環的因果律の「逆」は、「直線的因果律」です。
  
 対して「直線的因果律」とは、
    
 1.「原因」と「結果」がひとつに結びついていて
 2.「問題」を生み出す「原因の特定」を行えさえすれば、「結果の改善が見込める」
  
 ような状態をいいます。
   
 直線的因果律は極めて「シンプル」です。「直線的因果律」が支配する現場では、「原因」がひとつに「特定」できますので、「悪者探し」が可能です。だから、それを「悪者」を探して「叩くこと」を行えば問題が解決するのです。
  
 これに対して、円環的因果律の解決は、そう単純ではありません。
  
 円環的因果律の「問題の解決」のためには、
  
 1.様々な打ち手を円環の諸要素に同時に働きかけていく
 2.原因と結果にまつわる人々を、同時に呼び出し、この問題の対処策をさぐる
  
 といったことが行われます。
  
 たとえば、ある現場で「長時間労働」が「問題」として生まれていて、しかも、そこに「円環的因果律」が生まれているとします。その場合には、たとえば、こんな円環が存在するとしますね。
  
管理職が多忙  →  メンバーとのコミュニケーションが機能不全  →  役割分担がうまくいない  →  仕事がうまくまわらない  →  一部のメンバーと管理職が尻ぬぐいをして、長時間労働が横行  →  管理職が多忙(最初のふりだしに戻る)
  
 この「円環」を断ち切るためには、いったん、長時間労働がこういう「円環」で生まれていることを、管理職+メンバーが理解し、問題の解決策に向かう対話を行うこと。同時に、管理職に働きかけ、いかにマネジメントを立て直すかの作戦を立て直してもらうこと(必要に応じてスキルを高めること)などがあげられます。
  
 要するに
    
 長時間労働の解決のためには「職場ぐるみの課題解決」が前提になる
  
 のです。
 
 そして、職場ぐるみで「組織的課題」を「見える化」し、それらを「ガチで対話」し、未来を自ら決めていくことを「組織開発」といいます。
  
 かくして、長時間労働の問題を解決するためには「職場ぐるみの組織開発」であるという主張が正統性をおびはじめます。「組織開発が流行しているから、やる」のではありません。「職場ぐるみの課題解決が必要だから、やる」のです。
 ちなみに、拙著「残業学」(中原淳+パーソル総合研究所著)にも、横浜市教育委員会との共同研究プロジェクトの共同研究成果を記した本にも「データから考える教師の働き方入門」(辻和洋・町支大祐編著+中原淳監修)にも、このことが論じられていると思います。
  
 
  
(辻さん、町支さん、横浜市教育委員会の皆様、毎日新聞出版の久保田章子さんらのご尽力で「データから考える教師の働き方入門」が完成し、2月28日に刊行です!お疲れ様でした&ありがとうございます!また詳細は、ドカーンとこのブログでご紹介させていただきます。今日は、ブログの話題が話題なので、チラッとご紹介させていただきました!また詳細は後日!)
  
 これまで、長時間労働の問題は、多くの識者が「個人の仕事術」だけでそれを解決しようとしてきました。長時間労働の問題を「個人の努力」に帰属する議論が、これまで、この領域では支配的でした。
    
 しかし、長時間労働を「個人の仕事術」「メンバーのスキルアップ」だけで解決しようとするのは、僕の視点でいえば「直線的因果律」を前提にしている議論です。
  
 しかし、「現場」に出向いて、問題を見極めましょう。
    
 現場は「直線的因果律」で動いていません。
 現場は「円環的因果律」で動いているのです
  
 ですので、「個人の仕事術」や「メンバーのスキルアップ」だけでは、長時間労働の問題は解決しません。
 たぶん・・・少なくとも僕が出かけている現場では・・・。
   
  ▼
  
 今日は「円環的因果律」のお話をしました。
  
 「円環的因果律」という言葉が難しければ「職場のぐるぐる」と言い換えてもいいですよ。
 「職場のぐるぐる」が生まれているのに、悪者探しをして「特定の個人」をアチョーと叩いても問題は解決しません。
  
 今日の話題は長時間労働のお話でしたが、「円環的因果律」は、私たちの仕事の現場の「ここ、あそこ」、いたるところに転がっているような気がします。

 大学の内部、身近なところでいえば、「ゼミの運営がうまくいかない」とか「グルワ(グループワーク)での課題解決がうまくいかないいう問題も、ほぼほぼ「円環的因果律」の問題です(笑)。学生諸氏、「円環的因果律」を感じていますか?「直線的因果律」で「悪者探し」をしていませんか?
  
 あなたの組織が抱えている課題の背景には「職場のぐるぐる」がありませんか?
 悪者探しで「個人」を「アチョー」しようとしていませんか?
  
 そして人生はつづく
    
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