NAKAHARA-LAB.net

2019.2.1 06:57/ Jun

「自分の将来」をもれなく狭めてしまう「モノサシシンキング」に陥っていませんか!?

 また「モノサシシンキング」がはじまったか・・・やれやれ(笑)
  
日々、学部生と接していていると、いろいろな発見があります。そのなかで、最も気になるもののひとつに「モノサシシンキング(モノサシ思考)」というものがございます。モノサシシンキングとは、お気楽ご気楽な「マイ造語」(笑)。世界中、どこでも、通用しませんので、あしからず。
  
 モノサシシンキングとは、下記の3つの特徴をもつ思考法です。
  
1.自分と他者を比較する、一元的な評価軸「モノサシ」を「妄想」します
  
2.1でつくった「モノサシ」をもとに、自分と他者を比較評価して、自分は「とるにたらない」と勝手に思い込みます。
  
3.勝手に想定した「評価軸=ものさし」が、社会全般に通用するものであるかのように錯覚し、自己肯定感を低下させ、勝手に自分の将来を「呪縛」してしまいます
  
 学部生とお話をしていると、このモノサシシンキングに陥っているひとが、たまーにいます。
  
 たとえば「TA(ティーチングアシスタント)になれたか、どうか」というのがモノサシシンキングです。僕の大学の所属学部は、「TA」のことを別の名称でよぶのですが、「これになること」は「非常に人気」です。学生たちのなかには「これになれたか、どうか」が評価のポイントだと思っている節がございます。この軸によって、他者と自己を比較して、自己評定を行います。
  
 この手のことは、いくらでもあります。
  
「あの子は、あのインターンに言ってるから、ちょめちょめだよね。でも、わたしは、そうでないから、ほげほげだし」
  
「あの子は、プロジェクト学習で表彰された組だけど、わたしたちは、そうじゃないし」
  
 ・
 ・
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 考えてみれば、多くの大学生は、少し前まで「高校」で「偏差値」という「モノサシ」を意識して生活していました。大学に入学と同時に「偏差値」という「モノサシ」がかつてと同じほど価値をもつことはなくなってしまったのですが、やはり「モノサシ」が欲しいのでしょうか。
  
「偏差値」に「替わるモノサシ」を求めて、それで、勝手に自分を他者と比較評価して、一喜一憂しているように感じてしまうときがあります・・・いや、その「モノサシ」、たいした意味がないんじゃない?
  
 いろいろな「モノサシ」をつくり、「自分は取るに足らない」と勝手に思い込んでいるところが、まことに香ばしいところです。・・・いや、勝手に想像したモノサシで自己を卑下してるけど、あんたは「できるって」。
  
 ちなみに・・・大学に入っても、いまだに「偏差値」に呪縛されている学生も、ごくごく希ですが、います。
  
「僕は、偏差値70くらいあったんですよ」
  
 へー。
 オレよりすげーじゃん(笑)。
 オレに替わって、講演してくれよ(笑)
   
 ▼
   
 モノサシシンキングが、まことに「香ばしく」て、ヤレヤレと思ってしまうのは、大学で学生たちが勝手に想定した「モノサシ」は、大学を「出てしまえば」1ミリも意味をなさないことが多い、ということです。
  
 大学を出てからの社会では、大学時代に
  
 TAになれたかどうか
 インターンができたかどうか
 プロジェクト学習で表彰されたかどうか
 ましてや
 偏差値が高かったかどうか
  
 なんて、1ミリも話題になりません。大学時代に勝手に想定した「モノサシ」の多くは、その後の「生活の質」や「ビジネスでの成果」には、ほとんど関係がないといって差し支えないでしょう。
  
 僕は、仕事柄、年間数千人を超えるビジネスパーソンにお逢いしているんじゃないかなと思いますが、大学をでたあとのビジネスパーソンが、「TA」や「インターン」や「表彰」や「偏差値」を話題にしていることを聞いたことがありません。
  
僕は、偏差値70くらいあったんですよ」
  
 なんていうことを話題にするビジネスパーソンがいたら、たぶん、僕は「アチャパー」と声をあげてしまうのではないかと思います。それこそ「痛すぎて」、思わず「お大事に」に申し上げたくなる衝動を抑えることができないかもしれません。
  
 つまり、モノサシシンキングとは「想像の評価軸」なのです。
 まず、社会では、その「モノサシ」は「ない」
 仮にあったとしても、社会ではモノサシが「一元的」であることは、まずありえません。
  
 つまり、自分を他者と評価して一喜一憂しても、ましてや自分を「呪縛」しても、さして「意味」がないのです。
  
 乙。
   
 ▼
  
 今日は僕が1年間、大学で学部生と向き合う中で気になってきたことを、モノサシシンキングという概念で、お話ししました。
  
 要するに言いたいことは、
  
 勝手に「モノサシ」つくらないで(笑)
 勝手に「他者」と比較して、萎縮しないで(笑)
 あなたがたは「できる」んだから
 自分の将来の可能性を、自分で狭めないで
  
 ということです。
  
 まぁ、こういうことを本当は、学生にめんとむかって声を大にして言いたいところですが(たまに言ってる・・・・笑)、
  
 「新しく来た先生、暑苦しいよねー」
 「だよねー」
 「わかるー」
 「ねー、それよりさ、タピオカ飲みにいこうよ」
 「いいねー」
   
 となってしまうのがイヤなので、このあたりにしておこうと思います(笑)。
 でもね、教師にできることは「勝手に想像したモノサシ」が意味がないよ、と言ってあげることなのかな、とも思うのです。そして「あなたはできるんだ」と声をかけてあげることなのかな、とも思うのです。
  
 あなたの周囲で「モノサシシンキング」に陥っているひとはいませんか?
 モノサシシンキングで自己を呪縛していませんか?
  
 そして人生はつづく
  
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