NAKAHARA-LAB.net

2018.12.18 06:47/ Jun

続・組織開発の難問「クソはオレだった問題」をいかに攻略するか?:あなたは依頼主に問題をどのように告げるのか?

組織開発の難問「クソはオレだった問題」をいかに攻略するか?
   
 朝っぱらから「お下品」恐縮ですが、せんだって、このブログでは、この問題を、組織開発最大の「皮肉」と「もっともよく起こる難問」ととらえ、問題提起をさせていただきました。詳細は下記をご覧ください。
   
組織開発の難問「クソはオレだった問題」をいかに攻略するか?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/9717
   
 「クソはオレだった問題」とは、
  
1.組織開発を外部コンサルタントに依頼してきた依頼主(権力者)の行動や考え方こそが
    
2.組織が抱える問題のひとつであり、
    
3.外部コンサルタントとしては、生殺与奪を握られている依頼主に、それをなかなか言い出しにくい問題
  
 のことをいいます。
  
 端的に申し上げますと、「組織開発を依頼してきた依頼主の言動」こそが、「組織が抱える課題の張本人」だったということですね。もちろん、レベルは種々ございます。
  
 たとえば、
  
 結局、クソはオレ「だけ」だった問題(依頼主が最大のガン)
 結局、クソがオレ「も」だった問題(問題系のなかに依頼主のマズさも含まれていた状況)
   
 という感じで、その深刻さにも、様々なレベルがあるのです。
  
 さて、問題はここからです。
   
 組織開発の現場では「頻繁」に起こる「香ばしすぎる状況」の場合、あなたが組織開発の担当者なら、どのように振る舞うでしょうか? 
 依頼主に「あなたがクソです」とはっきり言ってしまいますか? もし言うのでしたら、なんとつげますか? クライアントなので、言いませんか?
  
 これがせんだってのブログ記事の問題提起でした。
  
 幸い、この問題には、ソーシャルメディアなどで、さまざまなご意見をうかがいました。ご意見をすこしまとめて、下記、今日の記事とさせていただきたいと思います。
  
  ▼
  
 組織開発の依頼主が「組織の抱える問題」である場合、組織開発担当者はどうするか?
   
 まず大きな分岐は、
  
 1.言うのか
 2.言わないのか?
  
 にあります。
  
 このたび、多くの方々の意見は「言う」にあったのかな、と思います。そして、僕もそれに同意見です。
 依頼主に対しても、しっかりと言わなければならないことは言う。それが組織の抱える課題を解決するためには、多くの場合、もっとも近道になるのかな、と思います。
  
 しかし、
  
 正しいことを言うときこそ、気をつけなければなりません
  
 言い方を間違ってしまえば、(心の)シャッターをガラガラと閉められてしまいます。
 かくして、問題は「いかに言うのか?」ということに収斂します。
  
 もっともスタンダードなのは、月並みですが、一番最初のエントリー(組織開発担当者が、依頼主とどのような組織開発を行うかを握る部分)にあるのかな、と思いました。たとえば、僕の場合でしたら、エントリーの際には、このように依頼主には告げると思います。
  
1.組織の抱えている課題というのは、さまざまな問題が「つながっているもの」でして、それは「依頼主」であるあなたも「無縁」ではありません
(=組織のかかえる問題系のなかに、本人を位置づける)
  
2.組織開発では、サーベイやヒアリングをして、組織の課題を「見える化」していきます。もちろん、「見える化」した組織の課題は、それぞれのひとが、それぞれの立場から、それぞれの気持ちで「意味づけた」ものであり、唯一絶対の「真実」ではありません。組織開発では、それぞれが何を「真実」としているかを、ガチで対話をしながら話し合い、「これから」を決めていきます。どんな課題でも「見える化」して向き合うのが、組織開発です。
(=解釈の重要性を打ち込む / 組織開発の重要な価値観を打ち込む)
  
3.ただ、このプロセスでは、やっかいなこともあります。組織開発の「見える化」のときには、さまざまな認識が「表面」にでてきます。その際には、依頼主であるあなたに対する言及もでてくる可能性があります。いいえ、多くの場合、「必ず」あなたに対するお話もでてくると思います。
(=リスクの提示)
  
4.組織の課題を「見える化」したときに、あなたに対するお話がでてきた場合、それをご自身は「見たい」ですか?それとも、見ないでおきますか? いかがでしょう。これは、ぜひ、ご自身にお決めいただきたいことですが、いかがでしょう。
(=あくまで自己決定を求める)
  
5.(自己決定していただけたとして・・・)わかりました。あなたに対するお話がでてきた場合も「向き合われる」ということでよろしいですね。組織の抱える課題は、それなりに複雑ですので、多くの場合、つながっています。それがよろしいかと思います。
(=意向の再確認・契約)
  
  ・
  ・
  ・
   
 この解決策の要旨はこうです。
 最初から「組織がかかえる問題系のなかに、あなたが含まれること」を先に宣言してしまい、しかしながら、一方で「解釈は無限に開かれていること」を申し添えます。本人を「無駄に追い込まない予防線」を一応は張っておきます。
 そのうえで、自分に対する話題を「見るか / 見ないか」は「自己決定」させる、ということを行います。おそらく、ここで「見ない」という選択肢をとる人は、相当、少ないと思われるのですが、いかがでしょうか?
  
 これが「言う」の場合です。もちろん、これが「唯一絶対の答え」ではありません。それぞれの現場や状況に従って、様々な解決策がありうるでしょう。
  
 また、もちろん、「言わない」の場合も状況によってはございます。
 こちらの意見には、たとえば、
  
 自分の話題がでてきた場合に、本人が逆ギレしてしまうような人材の場合には、本人には「言わない」という選択肢をとることもありえる。本人よりも「さらに上役」とつながれるようであれば、「上役」に相談するのも一計
   
 といったご意見や、
  
 本人が課題であるとはいわずに、知らず知らずのうちに、本人の影響力を外すような改革を進める
  
 といったご意見もございました。
  
 皆さんは、この問題、どういうご意見をお持ちでしょうか。
  
  ▼
  
 今日は組織開発の難問「クソはオレだった問題」に対する「ひとつの答え」を提示させていただきました。くどいようですが、これは「唯一絶対の答え」ではなく、あくまで「答えのひとつ」です。
  
 組織開発にも、こうした実践知が様々なかたちで交換できる場や機会が、多々あるといいですね。
   
 組織開発の難問「クソはオレだった問題」に対して、皆さんでしたら「言いますか」それとも「言いません」か?
 もし「言う」のでしたら、なんといいますか?
  
 そして人生はつづく
  
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