2018.11.27 06:41/ Jun
※一身上の都合により、11月28日・29日・30日のブログ記事は、更新をお休みさせていただきます。週明け12月3日から再開させていただきます。またお逢いしましょう!※
このブログでは、ここ数日、「組織開発」におけるサーベイフィードバック(組織調査のデータを現場の人々におかえしして、現場を改善に役立てること)のポイントをご紹介しています。
連載1日目:調査データを現場にフィードバックしても シャッターバーンにならない方法!? : サーベイフィードバック型組織開発、11のポイント
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/9679
連載2日目:「上から目線のサーベイフィードバック」が現場を1ミリも変えない理由 : サーベイフィードバック型組織開発、11のポイント
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/9683
1.キーマンと握る
2.現場ファースト宣言
3.キーマンには最初と最後
4.やさしく、しぼる
5.これまでを讃える
6.淡々と行う
7.持続可能性を問う
8.絶望させない、希望を見せる
9.とっかかりを提供する
10.インターバルで実践をうながす
11.フォローアップで讃える
今日は、5から11までをご紹介させていただこうと思います。これらは、現場の方々にデータをお返しする、サーベイフィードバックのワークショップを開催したあとに、参照できそうな実践知なのかな、と思います。
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まず「5.これまでを讃える」と「6.淡々と行う」と「7.持続可能性を問う」は実は、セットになる項目です。
要するに、サーベイフィードバックのデータというのは、現場の方々にとっては「耳の痛い情報」も含まれていることが多いのですが、それを、どのような順番で、いかに返すか、ということにまつわる項目です。
まず、ここで大切なことは、
サーベイフィードバックでは、いきなり、耳の痛いデータをお返ししない
ということです。そんなことをすれば、ただちに「現場の方々」には「シャッターバーン」(拒絶)を食らいます。耳の痛いデータをかえすときほど、わたしたちは慎重にならなくてはなりません。
「いきなりフィードバックdeシャッターバーン」ではないのです。
そうではなくて、サーベイフィードバックでは、まずは、「5.これまでの(実践や取り組みの素晴らしさやよい点)を讃えること」からはじめる。データの中でも、調査結果のなかにある「ポジティブなデータ」をお返しすることから始めたい、ということです。
しかし、一方で「大人の学びは、ときに痛みを伴うもの」です。
場合によっては「痛み」をともなうデータをお返ししなければならないケースもございます。そのときにわたしがいつも心がけているのは、
「6.(事実をつつみ隠さず、耳の痛い情報をおかえしすることは)淡々と行う」
ことです。現場の方々のあいだに「緊張感」が走ります。しかし、ここで「ひるんではいけません」。むしろ、腹をくくって、相手を正視して、敬意をもちつつ淡々とお話をすることだと思います。
そのうえで、そのうえで、さらに「もっとも大切なこと」があります。
ここまで来るまでに、まず、わたしたちは最初に「現場を讃えた」のですよね。そのうえで「耳の痛い情報」をおかえししました。これから行うことは、これらの2つのデータを接合して、「7.持続可能性を問うこと」にチャレンジします。
すなわち、
XXさんの部門たちは、よい御取り組みをなさってきましたよね
それはいろいろなかたちで評価されていますよね
そのことがデータでもわかりますよね
素晴らしいことですよね
でも、一方で、こんな耳の痛い情報もあるんですよ。
こういう事実もあるみたいですね
ああいう情報もあるみたいですね
で、どうでしょう?
皆さんの素晴らしい御取り組みを「持続可能」にしていくためにも、
先ほどの「耳の痛い情報」で指摘された内容をどのように改善したら
を一寸考えてみませんか?
せっかく、よいことをなさってきたのですから、
それを「持続可能」にしてみませんかね?
という具合に「ポジティブなフィードバック」と「ネガティブなフィードバック」を「接合」して、「ポジティブな実践の持続可能性を問いかける」という論理を組み立てます。これがもっとも重要なところです。わたしはこれを「持続可能性への問いかけ」と読んでいます。
そのうえで、ここからはさらに気合いをいれて、ポジティブな方向を魅せていきます。
「8.絶望させない、希望を見せる」とは、変わろうとすれば変われるのだということを繰り返しといていき、そのうえで「9.とっかかり(となるような事例やケース)を提供する」のです。
すなわち、
他の組織では、XXXさんの部門と同じような課題を抱えて
いたのですが、こんな風に解決したケースもあるみたいですね
あの組織では、XXXさんの組織に似た課題に直面して
こんな課題解決を行っていったみたいです
という風に、「変革のとっかかり」になるような事例を提供していきます。
事例そのものに、実は意味があるわけではありません。
「事例」は「事例」
おそらく、他の組織で行ったケースを、そのまま「コピペ」することは、実際にはできないのです。しかし、大切なことは、ケースをコピペすることではありません。むしろ、エモーショナルに、「変わろうとすれば変われるのだ」と「希望」を感じていただくことがもっとも重要なことなのかな、と思います。
たいていのワークショップでは、ここらあたりから議論が白熱し、将来的に自分たちが、自分たちの組織をいかに変革していきたいかについてガチ対話がはじまります。アクションプランをみなでつくり、実行していきます。
▼
かくして、サーベイフィードバックのワークショップは終わるのですが、ここで気を抜いてはいけません。
組織には「慣性(イナーシア)」というものが常に働きます。
どんなにホットな変革のワークショップをやったとしても、仕事現場に戻れば、
サーベイはサーベイ
仕事は仕事
になってしまいがちなのです。
ここで重要になってくるのが、
一度のワークショップで、組織開発を終えようとしないこと
だと僕は思います。
むしろ、「10.(複数の研修をもうけて)インターバル(=合間合間)で実践をうながす」を行ったり、「11.フォローアップ(のときには)再び讃えること」が重要になるのかなと思います。
▼
さて、ここに開陳させていただきましたノウハウは、ここ5年にかけて、僕や僕の研究室が取り組んできたチームビルディングの人材開発、組織開発の研究案件で、積み重ねてきたものの一端です。
近年では、お名前は差し控えるものの、様々な事業会社のみなさまとのプロジェクト、そしてトーマツイノベーション様との共同研究(「女性の視点からみなおす人材育成)」、パーソル総合研究所様との共同研究「希望の残業学プロジェクト」、横浜市教育委員会様との共同研究「持続可能な働き方プロジェクト」などで、様々な知見を積み重ねてきました(みなさま、ありがとうございます)。
また近いうちに機会があれば、このような「実践知」をご紹介させていただこうと思っています。
ちなみに、現在、日経新聞で、南山大学の中村和彦先生が「組織開発」について非常にわかりやすく解説をなさっております。そちらの方も、どうぞご笑覧くださいませ。
そして人生はつづく
(※一身上の都合から明日から2日間、ブログの更新を休止させていただく可能性が高くなっております。どうかご容赦くださいませ)
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