2018.11.15 06:41/ Jun
「うちの会社でも、1on1(ワン・オー・ワン)というのをはじめたんですけどね。うまくいっているところは、すごくいいって言っているんですよ。でも、部署によっては、1on1という名の説教大会になってるみたいですね」
「うちの上司の1on1が、いやでいやで、たまりません。だって、やっていることは、1on1という名の詰め会議なんです」
「先生、1on1って、本当は何をするためのものなのですか。うちの支店長の1on1は、なぞなぞ大会みたいになっているんですよ。支店長の持っている答えを、なぞなぞみたいに、あてっこしなきゃならないんです」
・
・
・
これらは、僕が、この半年間に耳にした、「残念な1on1の事例集」!?です。
1on1は、一般には「上司と部下が定期的に頻度をあげた面談」のことをいいます。
基本的には、部下の話を聞くことを目的にしているので、何をしてもいいのですが、主に多くの現場で実践されているのは「日常の仕事の振り返り」なのかな、と思います。
それが時に、職場の人間関係のトラブルの相談や、キャリア相談、また期初・期末には、フィードバックなどにとって替わられることはあるのかもしれません。
しかし、上記で行われている「残念な1on1」は、それらのどれとも「異なります」
「仕事の振り返り」が、いつのまにか、
1on1という名の説教大会
1on1という名の詰め会議
1on1という名のなぞなぞ大会!?
になっているというのですから、かなり残念なことですね。
あべし(泣)
▼
組織においてこのような「残念な1on1」を防止し、1on1を効果的に運用するためには、やはり「1on1の担い手たる上司」に対する働きかけをしっかり行うことしか、方法はないのだと思います。とりわけ、事前・事後の働きかけが重要です。
事前に行わなければならないことは、まずは「目標の打ち込み」でしょう。これはしかるべきポジションの方が、その意義を語る必要があるかと思います。
特に、
1.1on1をなぜ行うのかを「経営の観点」から語ること
2.1on1を行った先に「組織をどうしたいのか」を語ること
は重要なことかと思います。
1on1というと、「人事の言葉」「人材育成の手法」ですので、それをそのまま上司・マネジャークラスに語りたくなってしまうものですが、僕個人は、あまりそれをおすすめしていません。
あくまで「経営として・・・が課題だから、1on1を導入したい」「組織を・・・にしなければ勝てないから、1on1を導入したい」と経営陣が経営の言葉で語ることをおすすめしています。
もちろん、。この段階で、できれば、上司の評価項目に「人材育成」のひとつとして「1on1」を入れてしまえれば、それにこしたことはありません。
▼
次に、必要なのは、「武器」を渡すことでしょう。
やはり、1on1は「1on1をしてみることでしか学べません」。ですので、実際に、上司の方には研修やワークショップなどで、擬似的に1on1をロールプレイングしてもらうことは必要かと思います。
3.1on1の具体的な手続き、やり方を学んでもらうこと
4.何度もロールプレイングを行ってもらうこと
最後に必要なのは、事後の働きかけーいわゆるフォローアップだと思います。
たとえば、
5.半年後などに、1on1をやってみての悩みや不安を持ち寄る場をつくる
などの事がよく行われます。
もちろん、1on1は上司と部下が密室で行いますので「ブラックボックス」になりがちです。「ブラックボックス」といっても、放置しておいては厳しいかも知れません。上司の中には、ひそかに「1on1という名の説教大会」をいつのまにか毎週開催してしまう人も少なくありません。
こうしたケースの場合、あなたの会社がES調査などをすでに行っていたとしたら、その中に、職場の1on1の実践度合いや、上司による1on1の実用度などをはかる質問項目をいれておいて、組織内の分散をモニタリングしていくことも、重要です。
6.何らかの手段で、組織における、1on1の実践度合いをモニタリングする
最後の最後に必要なこと、それは、たとえ、これだけやったとしても、忙しい毎日で、すぐに1on1は後回しにされがちです。
ですので、粘り強く粘り強く、繰り返し繰り返し、1on1を実践する意味を、しかるべきポジションの方が語ることだと思います。
7.繰り返し繰り返し、言葉をかえ、品をかえ、1on1を実践する意味を語る
以上、1on1を「定着」させるための7ステップでした。
最初、書き始めたときは、3ステップくらいかな、と思っていたのですが、意外に増えましたね。それだけ、定着させるのは手間暇かかるということなのでしょう。
よかった、7というキリのいい数字終わって。
それっぽいじゃん(笑)
▼
今日は、1on1を組織内に定着させるプロセスを7ステップで書いてみました(最初から7つがわかっていた風の書き方ですね・・・書きながら、結局、7つになっただけなのに・・・すみません)。
1on1を組織内に定着させるのは、たとえば、「1on1の本」(世の中には素晴らしい1on1本がございます)をマネジャーたちに渡しておいて、
「うちの会社、1on1やることになったから。これ読んどいて。」
では、1ミリもうまくいかないことが、おわかりいただけたのかな、と思います(笑)。
あなたの会社の1on1は、「1on1という名の説教大会」になっていませんか?
となりの部の上司は「1on1という名の詰め会議」をやらかしていませんか?
あなたは1on1を定着させるために、何ができそうですか?
そして人生はつづく
ーーー
新刊「組織開発の探究」発売中、重版3刷決定しました!AMAZONカテゴリー1位「マネジメント・人事管理」を獲得しています。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
ーーー
新刊「女性の視点で見直す人材育成」(中原淳・トーマツイノベーション著)が、AMAZONカテゴリー1位「企業革新」「女性と仕事」を記録しています。女性のキャリアや働くことを主題にしつつ、究極的には「誰もが働きやすい職場をつくること」を論じている書籍です。7000名を超える大規模調査からわかった、長くいきいきと働きやすい職場とは何でしょうか? 平易な表現をめざした一般書で、どなたでもお読みいただけます。どうぞご笑覧くださいませ!
ーーー
【注目!:中原研究室のLINEを好評運用中です!】
中原研究室のLINEを運用しています。すでに約9300名の方々にご登録いただいております。LINEでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記のボタンからご登録をお願いいたします!QRコードでも登録できます! LINEをご利用の方は、ぜひご活用くださいませ!
最新の記事
2024.11.9 09:03/ Jun
なぜ監督は選手に「暴力」をふるうのか?やめられない、止まらない10の理由!?:なぜスポーツの現場から「暴力」がなくならないのか!?
2024.10.31 08:30/ Jun
2024.10.23 18:07/ Jun
【御礼】拙著「人材開発・組織開発コンサルティング」が日本の人事部「HRアワード2024」書籍部門 優秀賞を受賞しました!(感謝!)
2024.10.14 19:54/ Jun
2024.9.28 17:02/ Jun