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2018.10.4 06:45/ Jun

日本とアメリカの子どもたちの「思考スタイル」はいかに異なるのか?:渡辺雅子(著)「納得の構造」書評

 日本とアメリカの子どもたちの「思考スタイル」はいかに異なるのか?
   
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 この問いに挑んだ面白い研究に、昨日、僕は出会いました。
 不勉強汗顔の至りですが、たまたま、渡辺雅子(2004)「納得の構造」(東洋館出版)を読む機会に恵まれたのです。専門外のわたくしがいうのは何ですが、素晴らしい研究です。知的興奮を与えてくださった著者にまずは、この場を借りて感謝をいたします。
   

  
 本書は、日本とアメリカなど、異なる国の子どもたちに「4コママンガ」を見せて、作文をしてもらう実証実験から、両国の思考スタイルを探究する本です。
  
 たとえば、「小学生のけんた君が、しょんぼりした一日を過ごした4コママンガ」を、様々な国々の子どもたちに見せて、この4コママンガに書いてあることを説明してみて、と指示をだす場面を想像してください。
    
 当然ながら、両国の子どもたちがつくる「作文の質」には「思考スタイルの違い」がでます。この作文実験を通して、両国の思考スタイルがいかに異なるか、そして、その違いが、どのように生まれてきたかを考察するのが、本書の眼目です。
  
 実験の結果は、詳細は本書を見ていただくとして、大方の予想どおりといいましょうか・・・日本の子どもとアメリカの子どもでは、先の「小学生のケンタ君の1日」を表現した文章に差が出ます。僕は専門外なので、自分の言葉で要約しながら語りますが、見いだされた違いは下記です。
  
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1.日本では「何かを説明しなさい」といったとき、時系列にそって説明をする傾向がある。
・その場合には接続詞「そして」を多用する。
・すなわち出来事Aと出来事Bを「そして」で順接してつないで、時系列に物事を説明する
・出来事Aと出来事Bの連関は「そして」という接続詞で接続するため、因果律はゆるい
出来事を時系列で述べるため「はしょり(省略)」は少ない
  
Ex. 日本の子どもの作文の例(超絶短縮版)
 ケンタくんは、こんなミスをしました
 そして、こんな出来事に巻き込まれました
 そして、こんなチョンボをかました
 しょぼりしました
  
  ーーー
  
2.アメリカでは「時系列の説明」もなされるが、一方「結論」から先に述べる説明もなされる
  ・その場合には、そのあとで接続詞「なぜなら」を用いる
  ・接続詞「なぜなら」をもちいるので因果律が明瞭になる
  ・最初に「結論」を述べる場合、それにあわない出来事は「はしょり(省略)」が行われる
  
Ex. アメリカの子どもの作文の例(超絶短縮版)
 ケンタくんは、しょんぼりした一日をすごしました。
 なぜなら・・・こんな出来事に巻き込まれ、さらにこんなチョンボをかました
 ケンタくんは、やっぱりしょんぼりでした
    
 アメリカでは、因果律の明瞭な結論から述べる説明と、時系列の説明を使い分けている
  
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 書籍では、このような実証実験が厳密な実験計画によって明らかにされています。上記はブログなので、短縮要約してございますが、ぜひ、ご興味をお持ちの方は、目をとおしてみられるとよろしいのか、と思います。
  
 先のような作文か題の場合、アメリカも日本も、くどくど説明するやり方(fs型といいます)をする子どもは、それぞれ一番多いです。しかしながら、因果律を明瞭に「結論」から述べていく作文は(bs型といいます)、アメリカの子どもたちの方が、統計的有意に多いことが実証されました。

 アメリカの場合は、因果律の明瞭な結論から述べる説明と、時系列の説明を使い分けているという結論になるのかな、と思います。
  
  ▼
  
 今日は、日本とアメリカなどの国別の思考スタイルを実証的に探究した研究をご紹介いたしました。
  
 実は、この話を、論理思考を教える学部1年生のクラスLINEに投げかけたところ、個人的な質問をM君からいただきました。M君、よんでくれてありがとう。疑問をもつことは素晴らしいことです。

 M君は、どうやら、そうした思考スタイルの違いが、どのように生まれてきたのかについて、興味をもたれたようです。
    
 M君からの質問は要約すると、
  
 なぜ、そのような思考スタイルが生まれるのですか? 先生のお考えをお聞かせください
  
 です。
   
 下記は答えではないですが、考え方のヒントです。
    
 M君。
 こうした場合、その違いをもたらすであろう「可能性」を「まずは並べて考えてみよう」。たぶん、いろいろあるよね。だから、それを分類する軸なんかがあったほうが考えるときに楽かも知れないですね。

 たとえば、思考スタイルの違いは、1)先天的なものと、2)後天的なものに分けられるのではないか、と考えますよね。もちろん、これは仮の分類です。「仮そめの要は・・・」をまずはあげて、分類してみよう。
   
 その「仮の分類」のもとで、次に、そのカテゴリーの下にどのような可能性があるのかーすなわち「たとえば」を考えてみよう。
    
 もし、先天的なものならば、民族性、国民性といった要因が考えられるのかもしれない。対して、後天的なものだとすれば、学校の作文教育、国語教育、親とのコミュニケーションの仕方、文化などがありえますね。
    
 可能性を「すべて並べてみよう」
 次に、これに迫る様々な文献を読んでみるといいと思います。
    
 まずは、渡辺雅子(2004)「納得の構造」(東洋館出版)をお読みになって、感想を聞かせてください。
 そのうえで、そういえば、こんな研究もありました。古典的な研究ですが、東洋(著)「日本人のしつけと教育―発達の日米比較にもとづいて」なんかはおすすめです。あとは恒吉先生の著作「人間形成の日米比較―かくれたカリキュラム 」も面白いですよ。それぞれの本には、巻末に参考文献、引用文献がついています。それらのなかで気になったものを、さかのぼって読んでいくのも勉強になります。
   
 
  
 ちなみに、僕は、2)後天的なものよる影響の方が大きいのではないかと思っています。ただ、僕自身が実験をしたわけではないし、僕は、データをもっていません。

 つまり、僕は、リーダーシップの授業では「あなたの先生」ですが、「この問題」に関しては、あなたと同じ地平に立っています。つまり僕は「先生」ではありますが、「わからない」のです
  
 大学には「わからないこと」がたくさんあります。
 ぜひ「わからないこと」にチャレンジしてみてくださいね。
  
 ぜひ、いろいろ読んでみて、先の分類軸の可能性、そして、その答えの検討をつけてみてください。
 Enjoy!
  
 そして人生はつづく
  
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