2018.9.27 06:08/ Jun
昨今の授業では、よく学生や生徒に「ふりかえり」を求めます。今日はその話題。
ちょっと前のことになりますが、あるところで、学生諸氏の書いた「ふりかえり」を読んでいて、奇妙なことに気がつきました。
学生の書いた「ふりかえり」というものの中に、授業中に「僕が言ったこと」や「僕がしゃべったこと」が、「そのまま」抜き出されていたからです。要するに、先生の言っていることの「丸写し」です。
たとえばこんな感じ。
中原先生は・・・と言っていた。ためになった。
中原さんは・・・だと言っていた。刺激的だった。
先生は・・・だと発表した。勉強になった。
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ちょっと「求めているもの」が違うんだよなぁ、と思いつつ、それをどのように伝えようか、しばらくモンモンとしておりました。
まぁ、結論からいえば、「僕が一番悪い」。先生がきちんと伝えていないことが一番悪い、のだけれども、それをどのように伝えようかな、と考えていました。
でも、思い切って言っちゃおう。
これは「ふりかえり」ではない。
正確にいえば、僕が、ぜひ取り組んで欲しい【ふりかえり】ではない(笑)。
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上記の「ふりかえり」が【僕が、ぜひ取り組んで欲しいふりかえり】ではない理由。それは列挙してみれば、下記のようになるのかな、と思います。
1.「自分の考え」や「自分に対する矢印」が欠如している
ふりかえりの対象は、「授業内発話者」の発話や、「授業内容の再現」だけとは限らない。むしろ、その「内容」を通して、「自分が何を考えたのか」を書いて欲しい
2.「思考の深み」が欠如している
「ためになった」「刺激的だった」「勉強になった」はたいていの場合、「思考停止ワード」である。これを「ためになった病」「刺激的症候群」「勉強になりました病」とよぶ。むしろ、どの点で、どのように「ためになり」「刺激的であり」「勉強になった」のかを書いて欲しい。
3.「未来志向の言葉」が欠如している
ふりかえりとは「未来志向」の言表である。結局、これから何をどのように考えたり、行動していくのかが書かれていない。「ためになり」「刺激的であり」「勉強になった」のはいいけれど、だから、これから、どうするのだ?(So What?)。そこに関する考察を深めて欲しい。
まぁ、まとめてみると、こんな感じかな、と思いますが、いかがでしょうか。
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もちろん、毎回毎回、上記の3つをすべて含むのは難しいのかもしれないです。まず、時間がない。ですので、上記はあくまで参考程度にお考えください。
しかし、
そもそも【ふりかえり】とは
1.過去を見つめ
2.現在と照らし
3.未来をつくる思考
であると僕は考えています。
ふりかえりとは「先生の言っていること」を丸写しすることじゃない。
でも、聞くところによると、学生は中学・高校の時代から、毎回毎回、異なる授業で、毎回授業のたびごとに「ふりかえり」をさせられている、らしいですね。これは僕も至極反省するべきところで、授業のたびごとに求めているところもあります。
ある学生は、
ふりかえりって、「授業で習った内容を書くこと」っすよね!うっす!
と言いきっておりました。おまえ、いいやつだよな。おまえさんの、そういうスカーンと明るいところが、オレ、好きだわ(笑)。
短い授業時間で、異なる科目の、異なる授業のたびごとにふりかえりを書くのだから、まぁ、そうなるよな、と思いました。このことはとても、学生に同情してしまいます。
ふりかえりは「いつも」じゃなくて
ふりかえりは「とっておき」
くらいにしたほうがいいのかもしれないですよね。じゃあ、授業のたびごとになんか書くことはどうするんだ、と言われそうですが、それは「コメントシート?」・・・わかんない。
今日の話は、自分も反省するべきところがかなり多いです。
わたしたちは、ともすれば「他者に安易に振り返りを求める」。
しかし、ふりかえりが本当に「過去を見つめ、現在と照らし、未来をつくる思考」ならば、これはかなり「重い」ものなのですよね、そもそも。
あなたのまわりでは、きちんと、振り返りがなされていますか?
そして人生はつづく
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