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2018.7.20 05:59/ Jun

「伝達する自己紹介」と「意味づける自己紹介」を通して「対話型組織開発のエッセンス」を学ぶ!?

「これから、2つの自己紹介をします。ひとつめの自己紹介と、ふたつめの自己紹介のやり方で、どんな風な違いがあるかを話し合ってみてください」
  
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 せんだって開催された、ブッシュ教授の組織開発のワークショップで、ブッシュ教授が、冒頭、こんな問いを、60名の参加者に投げかけた。
  
 ひとつめの自己紹介は「自分の名前、自分の所属組織を順に述べる」
  
 というものである。これは日本全国、世界各地、どこでもやられているものである。特に目新しさは、ない。僕の場合ならば、
  
 「中原淳と申します。立教大学につとめています」
  
 といえばいいだけのことだ。
 他のメンバーは、「へー、ほー、はー、ふーん」と聞けば良い。
  
 対して「もうひとつめの自己紹介」とは、「ある問い」に「答えること」を求められる。
   
 その問いとは、
  
 What does the world need from you?
   
 という「悪魔的な問い」だ。
  
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「What does the world need from you?」は、直訳すれば、
  
「世界は、あなたから何を必要としていますか?」
  
 である。
  
 先ほどの問いに、小生お得意の「超絶適当、意訳的意訳」をかましていくと、「世界で、あなたが必要な理由は何ですか?」となり、さらにぶっとぶと、たぶん「あなたは、世界に対して、どんな貢献をしていますか?」ということになるんだろうと思う(意訳しすぎ?)。
  
 ここで、このブログ記事をお読みの読者の方も(?)、気のおけない誰かを探して、ぜひ、ふたつの自己紹介をしてみてほしい。
  
1.自分の名前と所属を順番に述べてください
2.「あなたは、世界に対して、どんな貢献をしていますか?」に答えながら自己紹介をしてください
  
 この問いにお互い答えたあとで、どんな感じがするだろうか。
  
  ▼
  
 ブッシュ教授の問い「2つの自己紹介にはどのような違いがありますか?」には、様々な答えがありうるのだと思う。60名の参加者の方々からは「後者の問いの方が、パッションを問われている感じがする」とか「後者の問いの方が、人となりがわかる気がする」とかいう意見が寄せられた。僕もそのように思う。
    
 しかし、僕は、一方で「異なる答え」を、ひそかにもっていた。
 ブッシュ教授のこの問いに対する答えこそが、ブッシュ教授が、この2日間のワークショップで「もっとも言いたかったこと」ではないかと直感的に思ったのである。逆にいうと、この「自己紹介のワーク」でやったことが、「ブッシュ教授の主張」そのものだ、と直感的に感じた。
  
 それは「何」か?
  
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 それは、下記の3点だと僕は思う。
  
1.ひとつのめの自己紹介は「情報伝達」であり、ふたつめの自己紹介は「意味づけ」をもとめられている
2.意味づけとは「ふだんは投げかけられない問い(Driving Question)」によって促される
3.意味づけは「思考・内省」をうながし、「他者理解」を促し、場合によって「他者同士」を結びつける
   
 ということだ。
   
 ひとつめの自己紹介は「なまえ」と「しょぞく」という情報を相手に「投げつけている」。それは、いわば「情報伝達」である。だから、「中原淳と申します。立教大学につとめています」と言われても、「へー、ほー、はー、ふーん」ですむ。
  
 対して、二つ目の自己紹介は、「自分が、世界に貢献できていることは何か?」という「答えのない問い」にこたえることで、「自分自身のやってきたこと」を意味づけなければならない。
 たとえば、僕の場合ならば、「人材開発研究を20年弱、なりふりかまわず、一心不乱にやってきてですね・・・まぁ、頑張っているのですけど・・・・まだまだ世界は広くてですね。その知見を、皆さんに、お届けするには至っておらずですね」という風に、これまでの自分のやってきたことの歴史を振り返り、自分を意味づけなければならない。
  
 そして、「意味づけ」は、それを行うものに「思考」や「内省」をうながす。
 聞いているものは、「情報を投げつけられる」よりは、「相手の意味づけを通して、相手をより立体的に理解」することができる。それによって、先ほどまでだった「他人が、むすびつく可能性が高まる」ということなのだろう。すなわち「組織がWorkするような状況=組織開発が達成される」ということになる。
    
 その意味では、この自己紹介こそが、このワークショップで紹介された「生成的イメージ(ふだんは投げかけられない言葉で、みなが思考をうながし、ひとつになれるような言葉)」だったのだと思う(わからないかたは、下記の記事をお読みください)。
  
 ブッシュ教授が、どこまでの意図でこの問いを投げかけれたのかはわからないが、僕は、この問いを聞いて、そんなことを脳裏に思い浮かべていた。
 この「補助線」を引きながら、過去3回、僕が書いたブログ記事をお読みいただきたい。おそらく、対話型組織開発において、ブッシュ教授のいわんとしていることが、もう少し立体的に見えてくるのではないか、と思う。
  
対話型組織開発とは何か?ー「語り方・意味づけの変革にもとづく組織変革」論
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/9180
  
続・対話型組織開発とは何か?:対話型組織開発とは「問うことによる組織変革」である!?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/9189
  
「働き方改革でとにかく時間がない職場」に「対話型組織開発の良さ」をいかに伝えるのか?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/9204
    
 つまり、ワークショップ冒頭に行った自己紹介は「対話型組織開発とは何か?」に対するひとつの答えを、参加者に対してしょっぱなから提示していた、ということなのではないか、と思う。

 ブッシュ先生、おぬし、できるな!(アタリマエ・・・すみません)
 なかなか、やりよるわい(本当にすみません)。

  ▼
   
 今日の話題は、自己紹介には2つのパターンがあるを紹介した。端的に述べれば「伝達する自己紹介」と「意味づける自己紹介」である。「意味づける自己紹介」は、思考や内省を促される分だけ、この問いに向かうのは「シンドい」。しかしながら、たまには、こうした問いに向き合うことも重要なのかな、と思う。
  
 What does the world need from you?
 (あなたは、世の中に対して、どんな貢献をしていますか?)
   
 そして人生はつづく
  
  ーーー
  
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