NAKAHARA-LAB.net

2017.12.20 06:19/ Jun

人が集まらない「学会」はなぜ生まれるのか?

「最近、学会の年に一度の大会に、人が、だんだん来なくなってきているんだよね」
「そうそう、僕のいってる学会も、最近、どうも、盛り上がりに欠けるね」
    
  ・
  ・
  ・
   
 ちょっと前のことになりますが、ある大学の先生たちと話していたときのことです。話が、こんな話題に及びました。
 これは学会によって、分野によって相当事情が異なるので、一般化は全くできません。
 しかし、その場にいた数人は、この話題に同意していたところを拝見すると、あながち、無視できないことなのかな、とも思いました。僕も、最近は学会参加に関して「まったく褒められた状態にない」ので、「申し訳ない思い」をもちながら、話を伺っておりました(本当にすみません)。
    
 あくまで、一般論ですが、これにはいくつかの「原因」が考えられます。
 たとえば、こんなものがあるでしょう。
   
 0.そもそも学会員が減少している(たぶん高齢化も進んでいる)
    
 1.大会の内容に問題がある
   ・面白み / 新鮮みにかける / マンネリ化などでしょうか
   
 2.大会のスケジュールが厳しい
   ・学事や入試が入ってしまっている
   (入試が複数回実施されたり、免許講習が入ったりしますね)
   
 3.大会にくるひとが固定化し、新たな出会いがない
   ・メンバーや発言者のマンネリ化
          
 4.学会にいかなくても大方の情報はネットなどで手に入る
   ・データベースの普及
    
 5.研究費が潤沢ではない
   ・特に若年層は雇用形態が不安定で
    研究費やスケジュールの獲得が難しい分野もあります
    
 6.海外学会で発表したい
   ・業績カウントが海外学会しかされない
     
 7.学会は休日祝日連続で開催されることが多いですが、そもそも休日や祝日に自宅をあけることができない
   ・共働き子育て中の場合
   ・介護などの場合
 
 8.大学院生がそもそも少ない
   ・若い人がいなくなっている
   ・社会人大学院生は、なかなか自由に動けない
    
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    ・
    ・
   
 ま、他にもあるかもしれないけれど・・・とりあえずは、こんなところまで。
   
 0から8、どれも、あり得そうな話ですね。
 このうち、個人的には、「休日や祝日に連続で自宅をあけることができない」というのは、ひそかに、かなりありえるのではないかな、と思っています。
   
 僕よりも、ひとまわり上の世代の先生方は、多くが男性で(今もですかね・・・)、しかも、専業主婦のご家庭が多い印象があります。
 たいして、僕と同等の世代の先生方は、共働きの方が多い印象がありますし、まことにまったく十分な数とはいえませんが、女性研究者の方々も増えてきています。そのなかには、子育て中の方も少なくありません。
    
 学会も最近、そこに配慮し、育児施設・託児施設をつくっております(まことにありがたいことですね)。ただ、たとえば、小学生と未就学児のセットで連続日程を預けるというのは、難しい面もでてくるように思います。
   
 この問題、皆さんの周囲ではいかがでしょうか?
  
 そもそも、あなたの学会に、人は集まっていますか?
 もし人が来ないのだとしたら、その理由は何ですか?
   
   ▼
  
 今日は学会のお話をしました。
 この問題、かなり分野や領域によって異なるのでしょう。
  
 ちょっと前になりますが、ある格式と伝統ある学会から招待を受けて、ある学会の年大会にうかがったのですが、そこは、校舎が本当にがらんとしていて人がおらず、非常に戸惑ったのを覚えています。
  
 これとは対照的ですが、せんだってご招待を受けた学会で、盛り上がりに盛り上がり、人が1万人クラスで集まっている学会もございました(その学会では、羽毛布団とかマッサージ機器とかを売っていました・・・みなさまお疲れなのでしょうか?)。
 まさに悲喜こもごもですね。
  
 この問題、そもそも
  
 年に一度の「大会」を盛り上げる
  
 という方向に舵をきるのか、
  
 年に一度・休日祝日開催の「大会」というコミュニケーションスタイルを見直すのか
 
 というのも、大きな岐路かと思います。

 あなたの学会に、人は集まっていますか?
 もし人が来ないのだとしたら、その理由は何ですか?
  
 そして人生はつづく

  ーーー

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