2017.12.13 06:39/ Jun
「うちのフリーアドレスオフィスですか、みんな耳栓して仕事してますねぇ」
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フリーアドレスオフィスというものが、すっかりと一般的になってきた印象があります。
学術的には「ノンテリトリアルオフィス(Non-Territorial Office)」というのかな・・・スペースを固定化・領有化(テリトリー)しないで、複数の人々で用いることのできるようになるオフィスのことを、そういいます。
僕の記憶では、ノンテリトリアルオフィスは、1990年代中盤に、1)コスト削減の文脈、2)知識創造を行う場としての役割の2点から、注目されたという記憶があります。
特に、僕が学部学生であった頃は、2)知識創造を行う場としてフリーアドレスオフィスを導入する、という説明が、よく見受けられました。当時は、野中郁次郎先生の知識創造理論が脚光を浴びておられたときだけに、
様々な人が事由に行き交い
自由闊達にコミュニケーションを行いながら
ほとばしるアイデアを交換しあい
経営課題であったイノベーションの創出をめざすようなオフィス
のあり方が注目されていました。
実際、先進的な企業では、フリーアドレスオフィスを導入し、これに近いことが実現できていたような気もします。
当時、経営者や、経営企画、総務・人事の皆さんが、オフィス改築や、オフィス移転の際に、ノンテリトリアルオフィス・フリーアドレスオフィスに着目したのは、そういう理由であったと思います。
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しかし、いつの時代も「現場のリアル」は「経営的意図」を超えていくものです。
ちょっと前のことになりますが、フリーアドレスを導入した企業の方が、こんなことをおっしゃっていました。ICレコーダをもっていたわけではないので、一字一句同じというわけにはいきませんが、趣旨は、だいたいこんなようなところです。
「フリーアドレスをうちもやってますけどね・・・座席も、いつのまにか固定化しちゃいますしね。職場には、よく電話がかかるメンバーもいるので、隣になると、気が散りますね。だから、みんな、耳栓つかってます(笑)」
コミュニケーションを意図し、スペースを領有しないことをめざしたフリーアドレスオフィスが、いつのまにか、固定席、極めつけは「耳栓」になってしまっている(笑)
なかなか愛すべき、微笑ましい状態だなと思いました。でも、これは、そうなると思います。
僕も大学の会議で、どこに座ってもよい会議がありますが、この5年くらい、同じ場所に座り続けています。
また、いくつかの研究では、フリーアドレスオフィスは、運用次第によっては、プライバシーが侵される、効率がかえって下がる可能性があることは指摘されていました。
まぁ、特に人間関係が悪化しているわけでもないし、メンバーの間には、それなりにコミュニケーションもあるのでしょう。実際は、そんなものだよね、とも思います。
そんな会社は、かなり多いのではないでしょうか? あなたの会社はいかがですか?
僕は、そんな「現場のリアル」が大好物です。
フリーアドレス、別に嫌いじゃないです。でも、なかなか、意図通りにはいかないよね(笑)。
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今日はフリーアドレスオフィスについて書きました。
「現場のリアル」は「経営の意図」をいつだって超えていくものです。
「導入」するのは比較的容易ですが、ねらったとおりの効果をだすための「運用」は、なかなか難しいですね。
そして人生はつづく
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