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2017.11.22 06:27/ Jun

ゼミ・研究室選択がうまくいかなくても「人生オワタ」にならない理由!? : 「人生、行き当たりばっちり理論」で乗り切ろう !?

 ゼミ選び、研究室選び ー 秋も深まる大学のキャンパスでは「進路選択」に悩んでいる学生がでてくる時期です。
 思うようにゼミ選択ができなかったり、意向とは違う研究室に入ることになったり・・・。キャンパスは今日も悲喜こもごもの学生で満ちあふれています。
   
 進路選択にシリアスになっている学生さんの様子を見ていると、おいそれと、安易な慰めはできないな、とも思いつつ、一方で、「まともな励まし」もできず、ただただ、「大丈夫だよ」を繰り返すばかり。嗚呼、どうして、自分はもう少し「まともな相談相手」になれないものか、と「自己嫌悪」に陥ってしまいます。
  
 とはいえ、これは相手にとっては一大事。時間的制約はあるものの、教員である以上、その手の悩みはなるべく聞いてあげたいなとも思うのです。
  
  ▼
  
 学生さんとお話をしていて、ひとつ思うことがあります。
  
 それは、
  
 キャンパスでの「キャリア上のつまづき」が「その後の人生すべて」を「お先真っ暗」にしてしまうのではないか、という恐怖症に陥っておられる場合がある
    
 ことです。
   
 たとえば、具体的に申しますと、ゼミ選択がうまくいかず不本意なゼミに入ることになってしまった。望む研究室に入れず、不本意な研究室に配属になってしまった。この失敗で、自分の将来思い描いている将来は、「お先真っ暗」だと考えてしまうようなことを意味します。
    
 この気持ち、僕は、痛いほどよくわかります。
 なぜなら、僕も22年前、同じように研究室選びで、思い描いていた進路をとることができなかった経験をもつからです。
    
 当時、僕は、当初、「臨床心理学」の道に進もうと思っていました。
   
 しかし、残念ながら、学部1年生ー2年生の進路競争に惨敗し(東大では学部1年生ー2年生の成績の平均点が、その後の進路選択を決めてしまいます・・・つまり3000人の点取りスペシャリストの皆さんとキャンパス内で競争するわけです・・・小生当然惨敗)、全く「別のコース」に入学することになります。
  
 そのときの自分を思い出してみると、
  
 進路失敗した・・・・人生オワタ(笑)
  
 ぐらいに考えていた節があります。
  
 しかし、今から考えてみれば、僕は臨床心理の道に進まなくてよかったと思います。カミサンから「生返事を繰り返すナマヘンジャーめ」と揶揄されるほど、人の話がきけない僕が、カウンセラーは向いていないでしょうから(笑)
   
 そして、「別のコース」には行きましたが、そこで腐らず(すぐに過去を忘れるので)、新たなものを学び直して、よかったと思っています。
   
 別のコースに入った当初、「多少の違和感」はあったように記憶しています。しかし、仲間にも先生にも恵まれ、そのような思いはただちに消えました。また、他コースの授業などを重ね合わせてとることで、何とか精神の安定を保ちつつ(笑)、次第に次第にそのコースの面白さに惹かれていきました。
 一月も二月も立たないうちに、自分たちで自主ゼミなどを立ち上げるなど、かなりコースを満喫していたような気がします。当時の仲間や先生方には心より感謝をしています。
    
 ともかく、
   
 キャンパスでの進路失敗した・・・・人生オワタは「ないな」
  
 というのが僕の実感です。
   
 かつて「リフレクティブマネジャー」という本でご一緒させていただいた、神戸大学の金井壽宏先生(キャリア論、モティべーション論、リーダー論)にご教示いただいた言葉があります。
  
 その言葉とは、
    
 人生は「行き当たりばっちり」だ
   
 というものです。
  
 金井先生は、スタンフォード大学のジョン・D・クランボルツの「Planned Happenstance Theory(計画された偶発性理論)」を日本語に訳す際、ゼミ生のどなたかが訳されたものー「行き当たりばっちり」をご著書のなかで紹介されていました。「行き当たりばっちり」とは、まさに慧眼・名訳。そのとおりだと思います。
  
 ただし、どんなときでも「行き当たりばったり人生」では(笑)、人生は「生きた」ように生きることになってしまいます。
  
 まぁ、お気楽ご気楽でそれもよろしいのかもしれませんが、できれば、自分の生きたいように生きたい。
  
 キャリア論でよくいうように、人生には、漂流してもよい時期(ドリフト期)と、とはいえ、しっかりと物事を考える時期(デザイン期)があるのではないかと思います。
 そして「デザイン期」には、行った選択が必ずしも、奏功するわけではありません。場合によっては、ゼミや研究室選択でうまくいかないこともある。
   
 しかし、そういう場合には、別の選択肢のなかで、「行き当たりばっちり」を信じて、「ドリフト」してみることも重要なのかなと思います。ドリフトしていくなかで、「本当に違う」と思えば、もう一度、「デザイン」をしなおせばいい。
  
 大切なことは「自分の人生やキャリア」から逃げたり、目をそらさないこと。「行き当たりばっちり」を信じて、ドリフトとデザインを繰り返していれば、いつかは「行き当たりばっちり」に到達するのではないでしょうか。
   
 皆さんはいかが思われますか?
   
  ▼
  
 キャンパスには、今日も、進路選択に悩む学生さんたちが、あふれています。今日もおひとり、そのお話を伺う機会があります。
 そんな学生さんを見ていると、「行き当たりばっちり」を信じて、力強くドリフトとデザインを繰り返して欲しい、と願っています。
  
 大丈夫だよ、僕なんか、42歳になってもいまだにドリフトだぜ。ウェイウェイ(笑)
 そして人生はつづく
  
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