NAKAHARA-LAB.net

2017.10.20 06:02/ Jun

生き急いでいる新入社員!?、のんびりしている会社の人事!? : 「成長の時間軸のズレ」をいかに対処するのか?

会社の考えている「成長の時間軸」と、新入社員の考える「成長の時間軸」が、合わなくなってきているんじゃないですかねぇ・・・
    
 ・
 ・
 ・
  
 先だって、都内某所で開催された会合で、ある人事パーソンAさんがご発言なさった内容です(示唆にとむご指摘です!ありがとうございます!)。
 今年から僕は、都内某所で、人事部・人材開発部の方々が集まり、各社の課題を持ち寄って議論する、ゼミのようなことをさせていただいております(皆様ありがとうございます!)。
 ゼミでは、様々な人事施策、人材開発施策が持ち寄られ、それを効果的に回していくために何をしていくべきか、どのようなデータを準備するべきかが話し合われます。
   
 上記のご発言は、最近、新入社員の「離職」や「組織適応不全」が、少しずつ増えてきたという、ある会社の状況を、皆で、議論していた際になされたものです。
 
 新入社員は、なるべく早く自分がやりたいと思っていた仕事につきたいと思う。思い描いていた配属先で、ばりばりと仕事をして、自分の専門性を高めたいと思う。
  
 しかし、一方、会社は、全員の配属を配属希望どおりにかなえてあげることはできない。場合によっては、違う部門で少し勉強をしてから、配属希望の部門で働くことを求めたりする。
  
 新入社員は
   
 はやく、はやく、今すぐに
  
 と願う。
 その願いは、年々、高まるばかり。
   
 一方、会社は、
  
 まぁ、まぁ、まぁ、仕事人生は長いのだから
  
 という。
 この問題の背景には、さまざまな事情もある。全員の希望をかなえてあげられないこともあるのだけれども、新入社員が配属を願う部署に、何の業務経験もなく放り込んでも、うまくいかないこともわかっていることが多い。だから、そのまま希望通りの配属にならないこともある。
    
 こうしたときに、
  
 会社の考えている「成長の時間軸」と、新入社員の考える「成長の時間軸」があわない
  
 という事態が起きます。
 最悪の場合には、早期離職や、メンタル面での不調につながることもあります。
   
 もちろん、いわゆる「配属リスク」は、今に始まったことではなく、昔からあったことです。が、どうやら、これは印象論ですが、ここ数年、同様の事案を問題視するケースが、どうも増えているような気がします。
  
 皆さんの会社は、いかがでしょうか?
  
 ちょっと前のことになりますが、ある金融機関の支店長さんにお逢いしたときに、彼のもらした、こんなひと言が忘れられません。
  
 最近の新入社員は「生き急いで」いますからねぇ。
 それに比べて会社の方は「のんびり」してるもんです
  
  ▼
  
 今日は新入社員の離職や適応不全について書きました。
  
 今の若い世代は、若い頃から、「自分はどのように働きたいのか?」「どんな専門性高めたいのか?」「どんなキャリアを歩みたいのか?」を常に問われるキャリア教育の先例をあびています(キャリア教育が悪いわけではありません。むしろ、仕事のことやお金のことを、もっと早くから考えてもらう機会をもってほしい、というのが僕の意見です)。
 かつ、伝統的大企業といわれる企業が、不祥事などで脆くも崩れている様子をも目にしています。
 
 そうなれば、当然、
  
 組織に頼らず、自分を磨きたい
   
 という社員が増えていくことは、容易に予想されます。それは全く悪いことではない。
 そして、その傾向は、さらに強まることはあっても、弱まることはないでしょう。 

 この問題の解決は、おそらくは「泥臭いもの」しか残されていません。
 職種別採用というケースもないわけではないですが、そこに踏み切るには、会社の中のジョブローテーションの仕組みを根本から見直す必要がでてきます。
  
 まずやりうることは、
 
 新入社員の考える「成長の時間軸」を丁寧に聞き取ること
 会社の考えている「成長の時間軸」をしっかりと説明すること
「成長の時間軸」に「ズレ」があった場合には、しっかりと対話の機会をもち、意味づけを行うこと
 長期的視野にたって、本人の成長ややりたいことをトレースして、希望に近づける努力をしていくこと

 などでしょうか。
  
 皆様は、いかが思われますか?
  
 そして人生はつづく
  
  ーーー
  
新刊「実践!フィードバック」が10月19日に刊行です。すぐに使える「会話例」と「フレーズ」でフィードバックの実践方法を学ぶことができます。イラストなど図版などを駆使して、よりわかりやすく書かれています。はじめてリーダーになる方、管理職になる方はもちろん、前著「フィードバック入門」をお読みの方で、「フィードバックの復習をしたい方」におすすめの内容です。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
 ーーー
  
【注目!:研究室のLINEはじめました!】   
 中原研究室のLINEを運用しています。すでに約3300名方々にご登録いただいております。LINEでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記のボタンからご登録をお願いいたします!QRコードでも登録できます! LINEをご利用の方は、ぜひご活用くださいませ!
     
友だち追加
  

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2024.11.15 15:01/ Jun

【無料カンファレンス・オンライン・参加者募集】AIが「答え」を教えてくれて、デジタルが「当たり前」の時代に、学生に何を教えればいいんだろう?:「AIと教育」の最前線+次期学習教育課程の論点

2024.11.9 09:03/ Jun

なぜ監督は選手に「暴力」をふるうのか?やめられない、止まらない10の理由!?:なぜスポーツの現場から「暴力」がなくならないのか!?

2024.10.31 08:30/ Jun

早いうちに社会にDiveせよ!:学生を「学問の入口」に立たせるためにはどうするか?

2024.10.23 18:07/ Jun

【御礼】拙著「人材開発・組織開発コンサルティング」が日本の人事部「HRアワード2024」書籍部門 優秀賞を受賞しました!(感謝!)

本当の自分の姿は「静止画」ではなく「動画」じゃなきゃわからない!?

2024.10.14 19:54/ Jun

本当の自分の姿は「静止画」ではなく「動画」じゃなきゃわからない!?