2017.9.25 06:39/ Jun
自分たった一人じゃ、自分がいるって分からない
誰かを認める、誰かを好きになる、誰かを嫌いになる
誰かと一緒にいて楽しい、誰かと一緒にいたら鬱陶しい
誰かと手を繋ぐ、誰かとハグをする、誰かとすれ違う
それが「生きる」
(君の膵臓を食べたい)
ちょっと前に見た映画の中に、こんな類いの台詞があって、なるほど、と思いました(ICレコーダを回していたわけではないので、確実ではありません)。
ネタバレになるので、あまり申し上げませんが、この台詞は「生きるとは何か」という、ある男子高校生の発した「問い」に対して、主人公の女子高校生が反応したものです。高校生だった頃は、「100万年くらい前の遠すぎる過去」ですが、面白く見ることができました。
女子高生が言いたかったことは、要するに、
生きるとは「他者とかかわること」である
ということです。
そして、冒頭の台詞にあるように、その「かかわり」には「両面」がある。
「嫌い」になったり「好き」になったり、「楽しかったり」「鬱陶しい」思いをしたり、「ハグ」をしたり、「すれ違ったり」・・・。
要するに、人間と「かかわること」は、「諸刃の剣」です。そこには「ポジティブなもの」もあり、かつ「ネガティブなもの」もある。そして、この「諸刃の剣」に翻弄されながら、他者とかかわり、「生」を実感するのかもしれません。
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武井麻子(2006)「ひと相手の仕事はなぜ疲れるのか」読了しました。
本書は、「感情と労働」に関する研究や、筆者の小論をまとめた書籍ということになるのでしょうか。高度な内容だとは思いますが、一般向けに書かれているので、非常に親しみをもって読むことができます。おすすめの一冊です。
冒頭の女子高生の言葉とは異なり、本書で語られているのは「感情と職業」についてですが、両者には、かすかな共通点もあるのかな、と思って読み進めました。「いつもの妄想」なので、下記は読み飛ばしていただいても結構です(笑)両者のあいだに「ゆるやかなつながり」を「感じながら」、僕は、この本を読んでいました。
僕が、この本で、もっとも印象的だったのは「共感疲労」ということばです。
ここで「共感疲労」とは、
苦しんでいる他者に対して「共感すること」自体が、
誰かをケアする人々にとって「大きなストレス」を引き起こしてしまう
というものです。
現在は、とりわけ、介護福祉士、看護師、医師、弁護士、教師など、さまざまな「対人相互作用を旨とする職」に忍び寄るストレスだといえるのかもしれません。
苦しんでいる人を前に「共感」することは、その仕事にとって「大切」なことです。
しかし
苦しんでいる人に「共感」することは、ネガティブなものをも生み出します。
自分としては、よかれとおもって「共感」しているし、そこには「やりがい」も感じる。
しかし、気づかぬうちにストレスは忍び寄る。「精神のすり減り」「うっとうしさ」・・・最悪の場合には「破壊的な衝動」がつきまとってしまいます。
ひるがってみると、一般に世の中では「共感」は、圧倒的な「ポジティブなもの」として描かれます。
あの人は、共感力が高い
というのは、ポジティブな意味になります。
逆に、
「あの人は、誰にも共感できない」
というのは、かなりの問題を抱えている状態と認識されるはずです。
しかし、圧倒的にポジティブに語られやすい「共感」にも、ネガティブなものが付随してきます。
他者とのかかわりを必然とする職業において、「共感」とは「諸刃の剣」です。
しかし、その職業を全うするからには、「諸刃の剣」をもって、生きていかなければならない、ということになるのかな、と思います。
「他者とのかかわり」とは、このようにすさまじいものです。
そして「かかわること」は「鬱陶しいこと」も免れ得ません。
いっぽうで、「生」を実感できるのも、また、この「かかわり」の中からでしかない、という皮肉を、わたしたちは抱きしめなければならないのかもしれません。
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週のはじまりは、ややシリアスな話題?になりました。
皆さんは、他者とのかかわりに、何を感じていますか?
生を実感していますか?
共感疲労していませんか?
もしほんのすこし後者が大きくなってきたのだとしたら、週のはじめ、「大きな深呼吸」からはじめたいものですね。
そして人生はつづく
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