NAKAHARA-LAB.net

2017.9.1 06:32/ Jun

新規事業をつくるヒントは「超継続」にあり!?:勝つまで、やめない!やめないから、勝つ!(笑)

 事業をつくることは「超継続」なのです!
    
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 ここ半年ほど、研究室D2の田中聡さんが中心になって、中原との共著で「事業をつくる人の大研究」という書籍を編んでいらっしゃいます。
  
 「事業をつくる人の大研究」は、
  
 1.事業をつくる人とは、どういう人なのか?
 2.事業をつくる人は、新規事業をおこすとき、どんな経験をするのか?
 3.新規事業をおこす人を、わたしたちは、どのように支援・評価すればいいのか?
   
 を考察する本で、クロスメディアパブリッシングさんからの出版になります。
 この本に関しましては、かつて、このブログでもご紹介させていただいたことがございます。「既存事業村と新規事業村の死の谷モデル」? 覚えていらっしゃいますでしょうか(そんなひと、いませんね!・・・まったく問題ないです)
  
「お金の無駄遣い」と罵られ、家族からも反対され、それでも新規事業をつくる人の大研究!:「既存事業村と新規事業村の死の谷モデル」
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/7808
   
  ▼
  
 この本の巻末には、イノベーションをおこし続けている会社として、サイバーエージェントさん(抜擢人事で多様な事業を興し続けている)、東レグループさん(炭素繊維など、非常にイノベィティブな素材を開発し続けている)をご紹介させていただき、人事・人材開発担当者の方から、お話を伺う機会を得ました。
    
 サイバーさんからおこしいただいたのは曽山哲人さん、東レグループからは手計仁志さんです。まことにありがとうございました。
   
 鼎談は、こちらのお二人と中原とクロスメディアパブリッシングの小早川社長が参加し、田中さんのファシリテーションのもと行われました。
   
 お二方から伺ったお話は、「事業をつくる人」をつくる上で、非常に示唆にとむお話でした。鼎談は、さまざまな話題についてあーでもない、こーでもない、と盛り上がりましたが、その中の話題のひとつが、こちらの「超継続」でした。
   
 事業をつくることは「超継続」なのです!
    
 単なる「継続」じゃないんです。
 並の「継続」ぢゃーない。
 とてつもない長い時間をかけた「継続」、それが「超継続」です!
   
  ▼
   
 このお言葉は、東レさんが世界トップシェアを誇っている「炭素繊維」が、事業として芽が出るまでのことを、手計さんが表現しておっしゃった言葉です。
   
 東レさんが世界トップシェアを誇る、鉄より軽く、鉄より強い炭素繊維は、航空機はもとより、今後は、自動車にも用いられる可能性があると言われている素材です。
  
 しかし、その研究開発が行われていたのは、いつかと申しますと、今からなんと50年以上も前。1961年に研究開発を開始、1971年に商業生産がはじまったのだといいます。
  
 しかし、そこから炭素繊維が芽が出るまでは、とてつもない長い道のりが必要でした。どのように用いるのか、ということの開拓も必要でしたし、品質の改良も必要でした。
  
 炭素繊維は、最初は、釣り用具やゴルフクラブから利用がはじまりました。そして、決定打になったのは2006年のボーイング社の飛行機への採用だったといいます。
  
 1960年代、70年代、炭素繊維を研究開発・商業生産していた競合会社は、あまりに芽が出ないために、開発を打ち切ってしまったところもありました。
 なかなか芽がでず、赤字を垂れ流す事業をほおっておくわけにはいかず、生産を辞めてしまうところもありました。それはそれで「合理的」な判断だったのでしょう。
  
 しかし、東レさんは、商業生産がはじまって30年間以上にわたり、あきらめませんでした。芽がなかなかでなくても、経営陣は、それをやめることを決断しなかった。
  
 これが「超継続」です。
  
 勝つまで、やめない(笑)
 やめないから、勝つ!
  
 いかがでしょうか?
 この「胆力」がすごい(笑)
   
 事業をつくることとは、「肝がすわっていない」と難しい。事業開発とは「腰をすえて取り組まない」と不可能である、ということでしょうか。
    
  ▼ 
  
 世の中は、「なるべく手早く効率よく成果をだすこと」が求められる社会になっています。すぐに成果を出すことができないものは、ただちに切り捨てられ、あきらめることがよしとされる傾向があります。
  
 昨今では、「手早く成果をだすこと」からもっとも無縁であった、大学の研究の世界にも「成果指標」やら「KPI」という概念が持ち込まれてきました。
 どこかがおかしい、と感じながらも、「大学の風景」がめまぐるしく変わってきています。
  
 もちろん、継続してよいことばかりではありません。世の中には、英断を行い、道半ばで、とめなければならないこともある。それは事実です。またB2Bで素材メーカーの東レさんの研究開発サイクルが他の業種より長くなることは、ビジネスパーソンならば、すぐに把握できます。
     
 しかし、昨今の「成果を求める風潮」のなかで、本来、「超継続」が必要なものに胆力が失われているのだとしたら、見直す必要があるのかもしれません。そのことを僕は東レさんの事例から学ばせていただきました。
  
 あなたの周囲に、本来ならば「超継続」しなくてはならないものはありませんか?
 腰をすえて取り組まなければならないものに、あまりにも性急に成果を求めていませんか?
  
  ▼
   
「事業をつくる人の大研究」は、秋・冬頃の出版をめざしています。
  
 現在、編集・構成をご担当いただいているクロスメディアパブリッシングの戸床奈津美さん、伊賀倫子さんらが作業を進めていらっしゃることと思います(お疲れさまです!)。
  
 みなさまに、曽山さん、手計さんらから伺った、すてきな対談を見ていただける日がくることを楽しみにしています。
  
 そして人生はつづく
  
 
 
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僕の新刊「マンガでやさしくわかる部下の育て方」が発売されました。発売後ただちに重版出来です。ありがとうございます。本書は、はじめてチームリーダーのなった方が、4つの部下育成のスキルをマンガで学ぶことのできる書籍です。どうぞご笑覧くださいませ!
    

  
 ーーー
   
新刊「仕事人生のリセットボタンー転機のレッスン」が発売されました。長期化する仕事人生を振り返り、転機を乗り越えるためのヒントにあふれる本です。元アスリート・為末大さんの紆余曲折名人生の遍歴を、中原と為末さんで振り返ることで、その機微とレッスンを学びます。どうぞご笑覧くださいませ!
   

  
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