2017.8.30 07:09/ Jun
※8月31日のブログは「おやすみ」させていただきます! ひとやすみ、ひとやすみ! 明日、またお逢いしましょう!
「希望の残業学」本格始動!
「働いて、笑おう」をめざして
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このたび、中原は、パーソル総合研究所さんとの共同研究プロジェクトとして、「希望の残業学」プロジェクトをはじめることになりました。
これまで15年にわたって蓄積してきた「人材開発研究の知見」を生かしながら、「長時間労働の是正」、さらにはその先の「働きがい」につながる探究を行っていきたいと考えています。僕としては、3つめの「社会課題×人材開発研究」のプロジェクトです。
「希望の残業学」プロジェクトは、
1.長時間労働に関する数万人規模の定量調査
2.定性的なヒアリング
などを重ねながら、
1.長時間労働の背後にある様々な要因をさぐると同時に
2.それらの「根本的な解決」に資する具体的な「打ち手」を開発する
プロジェクトです。
希望の残業学プロジェクト
https://rc.persol-group.co.jp/zangyo/
希望の残業学プロジェクトは、下記のような特徴をもっています。
第一の特徴ーそれは、直感・経験・度胸(KKD)、成功事例の並行輸入に頼ってきた、従来の長時間労働是正に関する議論に終止符をうつということです。
希望の残業学プロジェクトでは、定量・定性的な調査データに基づいて長時間労働問題を「科学」していくことをめざします。
上司・従業員への大規模なアンケート調査を中心に、各種の定性調査・ヒアリングを含め、長時間労働の根本原因を多方向から分析していきます。また「強制策」がもっている長時間労働の是正効果、その奏功のメカニズムについても、探究を続けます。
現在、「働き方改革」の「錦の御旗」のもと、「長時間労働を生み出してしまう現場マネジメントの機能不全」や「不適切な仕事の量」といったそうした「根本的な原因」を放置して、「時間数のみを強制策によって削減する」という「改革」が、今、日本全国で進行しています。
そうした「強制策」は、短期的には必要なことであり、また、効果をあげるものの、その効果は次第に減少していきますし、強烈な「やらされ感」を生み出していきます。
わたしたちは、「強制策のもつ効果」を測定しつつ、「長時間労働を生み出してしまう現場マネジメントの機能不全」という職場の根本原因に切り込んでいきたいと思っています。
根本原因の探求ーそれが「希望の残業学」です。
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第二の特徴は、「長時間労働の是正=労働時間を減らすこと」だけを目的としないということです。
むしろ、長時間労働を減らした「その先の未来」を分析の視角に入れていきます。長時間労働の是正の「その先にある」」働き手への影響(健康・やりがい・意欲・働き方など)、企業経営へのインパクトなども包括的に明らかにしていきます。
「やらされ感」の漂う「強制策」だけではなく、「長時間労働を是正したあとに広がる、その先の未来」ー働くことにやりがいを感じられること、健康であることなどを分析の視野にいれることで、「希望の残業学」のうちの「希望」を描き出したいと考えています。
第三の特徴は「現実の変革をめざすこと」です。
わたしたちは、企業の残業対策の有効性を検討したうえで、職場における組織・上司・個人のインフォーマルな要素と残業の関係を明らかにしながら、その理解をもとに、実際に「打ち手」を開発し、実証実験につなげていきます。
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プロジェクトはすでに数ヶ月前から開始されており、10月の実査開始をめざして、活動を本格化させています。プロジェクトメンバーは、パーソル総合研究所の青山茜さん、小林祐児さん、田井千晶さん、中原です。
このプロジェクトの成果は、光文社新書より新書として発売が予定されています。樋口健さん、井上佐保子さんらのご協力を得ながら、成果を世に問うていきたいと思っています。
また中原研究室では、今年から横浜市教育委員会様と、「子どもと向き合う時間づくりプロジェクト:教員の働き方改革プロジェクト」をはじめています。
「希望の残業学プロジェクト」と「子どもと向き合う時間づくりプロジェクト:教員の働き方改革プロジェクト」の知見を重ね合わせることで、教員の働き方、ビジネスパーソンの働き方の違いを見つめることができるでしょう。
「子どもと向き合う時間づくりプロジェクト」は、横浜市教育委員会・教職員育成課から立田順一さん、柳澤尚利さん、外山英理さん、根本勝弘さん、松原雅俊さん、東大側は辻和洋さん、町支大介さん、飯村春薫さん、中原で実行しています。
いずれも、どうぞお楽しみに!
下記は、「希望の残業学プロジェクト」に対する中原の「思い」です。
朝っぱらから、暑苦しい思いですが、どうぞご笑覧くださいませ!
そして人生はつづく
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【プロジェクトに対する中原の思い】
「働き方改革」というワードが世間を賑わしています。長時間労働に代表される、戦後、連綿と続いてきた日本人の「働き方」を見直さなければならない。今日も、口角泡を飛ばした議論が、メディアを賑わせています。
これからの多様性あふれる社会に思いを馳せるとき、わたしたちは、こうした「働き方改革の必要性」を全面的に支持します。また繰り返される「違法な残業」は、ただちに一掃されるべきだと考えます。
しかし、一方で、「働き方改革」という合い言葉のもと、現場で働く人々の現状をあまり顧みない、性急な人事施策が矢継ぎ早に実施されていることにも危惧をもっています。「現場の状況を顧みない施策」が、現場にさらなる「やらされムード」を生み出しかねないことを心配しているのです。
「やらされムード」の根源は「根本的な原因の放置」です。
たとえば「長時間労働を生み出してしまう現場マネジメントの機能不全」や「不適切な仕事の量」ーそうした「根本的な原因」を放置して、時間数のみを削減するという「改革」が今、日本全国で進行しています。
このままでは「現場への無茶ぶり」や「管理職への労働強化」が発生してしまうのではないだろうか。皆様のお近くでは、「働き方改革」に対する「絶望」に近い「やらされムード」が現場から漂ってきてはいないでしょうか。
これに加えて、多くの「働き方改革」の議論では、長時間労働を是正したあとに広がる「将来の成果や希望」に対しての目配りが欠けていることも、見逃すことはできません。
長時間労働を見直しつつ、どのように仕事の付加価値を高めていくのか。業績を変えずに維持するためにはどうするか。ワークモティベーションや、仕事にかける希望をどのように高めていけるのか。健康状態は向上するのか。わたしたちは、このような長時間労働削減の「その先にある未来」に目配りしていくことが重要だと考えています。
「希望の残業学」プロジェクトは、このような問題意識に基づき「働き方改革の3層分析モデル」を掲げ、大規模調査を実施し、問題に切り込みます。人事の世界にはびこっている「KKD(勘と経験と度胸)」ではなく、科学的なアプローチで、「働き方改革」の未来を描き出したいと思っています。
「働き方改革の3層分析モデル」の第一層では、「長時間労働を抑制する施策」の効果性と副作用について明らかにします。この分析を通して、施策の効果の優劣を示すだけでなく、どのような組織マネジメントを行えばその効果が高まるかがわかってくるでしょう。
第二層は、長時間労働を生じさせている根本的な原因やマネジメントの機能不全を徹底的に分析します。根本的な原因の解明は、この問題にとって決定的に重要です。
第三層では、長時間労働を是正した先に広がる「その先の希望」について解明をしていきます。
いくつかの国際比較調査によると、日本は、世界でもっとも、ビジネスパーソンが「働くことに熱意を持てない国」であるとのことです。働くことに希望を感じるためには、どのようなマネジメントが必要なのか。私たちは「その先」を考えます。
「希望の残業学」プロジェクトが、仕事の現場に広がる「やらされ感」を「希望」に変える一助になることを願います。そして「働き方改革」の「その先」を描くことを願っています。
中原 淳
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