2017.8.29 06:26/ Jun
昨今では「役に立たないだの、なんだの」と勝手に蔑まれている人文社会科学系の研究ですが(ほっとけ!笑)、僕が、大学で学び、かつ、今でも相当に「役に立っているな」と思われることのひとつに、「不合理のなかの合理をさぐる思考法」というものがございます。
「不合理のなかの合理をさぐる思考法」とは、「一見、不合理だと思われる他人の考え方」に対して、ただちに「不合理だ!」と断罪しないことからはじまる思考法です。
自分が「不合理だと見えること」に対して、ただちに不合理だとは判断せず、むしろ「即時の判断」を中止してしまう。
むしろ、そうではなく、
「なぜ、この人は、一見、不合理だと思えることを、合理的であると意味づけるにいたったのか。そのひとの判断を基礎づけている「意味づけ」には、彼 / 彼女にとって、どのような合理性が存在するのか」
を考えます。
要するに、「不合理のなかの合理をさぐる思考法」とは、「誰から見ても不合理」であることを、他人が自分の枠のなかで「合理的」だと考え、意味づけてしまうプロセスを追跡する思考法ということですね。
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この思考法ができるようになると、実際、いいことがあります。
まず第一に「すぐに人が嫌いになること」はなくなります(笑)。
よほどの「困ったちゃん」や「生理的にアウトやわー」という場合は別かもしれませんが(泣)、どんなに不合理なことをいってくる人に対してでも、まずは、一度は、相手のいうことを「傾聴」してみよう、という姿勢が生まれます。まずはね・・・。
もちろん「姿勢」は長く続かないかもしれませんが(笑)、たかが姿勢、されど姿勢です。
目の前の不合理に対して、ただちに感情を高ぶらせ、すぐに相手を「断罪」してしまえば、「そこで試合は終了!」です。
「不合理のなかの合理をさぐる思考法」は、そうした「即時試合終了」を防止することができます。
そして、第二に、他者に対して「別の見方」を提案し、「落としどころ」を提案することができるようになります。
今、あなたは「不合理なもの」を合理的に意味づけていますが、「別の見方」もあるんではないでしょうか。
わたしの場合、この問題を「別の見方」からしか、考えざるをえないんです。そのわたしの「立場」や「ものの見方」を、まずは、ご理解いただけますでしょうか?
必ずしも、わたしの「立場」や「ものの見方」に立たなくてもいいです。それでも、そうしたものが「ある」ということだけはご理解をいただけますでしょうか?
そうですね・・・こうしたコミュニケーションのことを、人は「対話(ダイアローグ)」とよびます。
ダイアローグとは、決して、「みんな仲良くチーパッパのコミュニケーション」ではありません。
また、ダイアローグは「みんなが円になって行うチェックインからはじまるコミュニケーション」でもありません。
ダイアローグとは、相手の「不合理の合理」を知ることからはじまる、「違いがわかるコミュニケーション」です。
それは人文社会科学の発展の歴史に根ざしているものであり、人事界隈で突然ポッと出てきた「はやりのコミュニケーションスタイル」ではありません。
僕は、人文社会科学の研究から、そんなことを学びました。
ま、いつも実践できているかは別の話ですけれども(笑)
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嗚呼、僕が学生だったのは、もう20年以上前のことになります。
構築主義、解釈主義、ポスト構造主義・・・僕が学部、大学院を過ごした頃は、そうした考え方がようやく出てきて、書籍や論文にも、ちらほら紹介される頃でした。
それぞれの主義主張には、専門家の方がいらっしゃると思うので、解説は、それぞれお任せします。
ただ、学部時代の僕には、それらの考え方が、同じようなことを、僕に語りかけているような気がしてなりませんでした。
それは、こんなことです。
ひとは、君が思っているほど、囚われにハマルことなく「自由」にものを考えられるわけぢゃーない。
人は、自分が所属する社会・集団の影響を受けて、それぞれの「ものの見方」を発達させている。そして、その「ものの見方」からみた場合、人が見ているものは、たしかに「真実」に見えるものなのだ。しかし、人は、その「ものの見方」の特殊性にはふつうは気づかない。
だからこそ、「他者を理解」するためには、人が、どのように物事を見つめているか、意味づけているかを考えなくてはならない。
圧倒的に、あなたと他人は「違う」。
しかし、その「違い」を前にあきらめてしまえば、そこで試合終了だ(スラムダンクの安西先生もそう言っていたはずだ!笑)。
同じ地点にたとえ到達できなかったとしても、何かを生み出すことを信じて、違いからはじまるコミュニケーションを続けることが、他者と生きることなのだ。 他者と生きることとは、お互いの違いを抱き続けることを覚悟することなのだ、と。
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学問って、いいこと言っていると思わない?(笑)
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今日は「不合理のなかの合理をさぐる思考法」について書きました。もちろん、これは僕の専売特許では1ミリもなく、おそらく社会科学をやれば、すぐに出てくる思考法かと思います。
古くは、16世紀に、あの大哲学者のパスカルだって、こんなことをおっしゃっております。16世紀にね・・・。
人を効果的にたしなめ、その人が誤っていることを教えるには、その人がどの方向から「ものごとを見ているか」をしっかりと見極めなければならない。
というのも、その人がみている方向からは、ものごとはたしかに「真」に見えるからだ。そして、(人を教えるためには)それが「真」であることを、いったんは認めてやる必要がある。
しかし、同時に、「別の方向」から見てみると「誤っている」という事実を、自ら発見させてやらなければならない。
(パスカル「パンセ」断章9)
嗚呼、今日も学問は問いかけます。
あなたの見ている「他者の不合理」は、本当に「不合理オブ不合理」ですか?
それとも
あなたは、「誰から見ても不合理」のなかに、「相手にとっての合理性」を認めることができますか?
そして人生はつづく
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