2017.7.10 05:20/ Jun
「似ている・・・自分の業界の惨状に、あまりに似ている」
「自分の業界は、無自覚な自殺をしているのではないか?」
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本書「誰がアパレルを殺すのか?」(杉原淳一・染原睦美著)を読んだ読者の方のうち、少なくない方がもつ感想としては、上記のようなものがありうるのかな、と思います。
書名「誰がアパレルを殺すのか?」のうち「アパレル」の部分を、「自分の仕事領域、業界」に読み換えて、「誰が、自分の業界を殺すのか?」をふと考えてしまう方は、少なくないのではないかと推察します。
そのくらい、本書で描かれている問題は「典型的なもの」であり、かつ「根が深いもの」です。日本のここ、あそこに、それは存在している。
それをワンセンテンスで述べれば、
「過去の成功体験が成功を阻害する」
というものなのかな、と思います。
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アパレルの戦後は「成功体験の歴史」でした。
高度経済成長の時代に訪れたDCブランドブーム。
DCブランドに群がる自由を謳歌する若者たち。
当時の状況をワンワードでいえば「大量生産」です。
製品をつくれば、つくるほど、売れるという「大量生産モデル」が市場を支配し、縫製業者、卸売り・OEMメーカー、百貨店・ショッピングセンターという「風上」から「風下」にいたるまで複雑に商品が卸されるサプライチェーンが生まれました。その当時の商売のやり方を評して、ユニクロの柳井会長は「散弾銃商法」とおっしゃっているそうです。「散弾銃」をぶっ放せば、売れる、ということでしょう。
しかし、「弾銃商法」は長くは続きませんでした。
このサプライチェーンは一時は「堅牢」なものでしたが、最大の弱点を抱えていました。それは「風上の情報」と「風下の情報」のやりとりが「分断」されやすいこと。
そして、いくつものプレイヤーが複雑に連携してサプライチェーンを構成しているために、生産性を高める努力が行いにくいことです。かくして、アパレルは商品は大量につくるが、大量の廃棄、在庫を抱える、という帰結に陥りはじめます。
実際、当時確立された商慣行、役割分業、サプライチェーンは次第に「硬直化」し、時代にあわなくなってきはじめます。しかし、このサプライチェーンを一気通貫で管理できる存在はないがゆえに、サプライチェーンは硬直化したまま、安定的に「散弾銃商法」を繰り返すことになります。
「構造」の内部にいる心ある人々は、右肩下がりで下がっていく業績におののきながらも、この変化に立ち尽くているのかもしれません。
否、著者らが描き出すように、構造の「内部」の中で、目の前の競争相手と熾烈な戦いを行い、真面目に粛々と仕事をしておられるのかな、と思います。しかし、この様相を筆者らは「無自覚な自殺」と解釈しておりました。
そう「誰がアパレルを殺すのか?」に対する答えは、「誰でもない」が答えです。
それは「無自覚な自殺」である、というのが筆者らの答えかと思います。
僕はアパレルは、全くの門外漢ですが、窮地に瀕しています。
本書で紹介されている数字の妥当性は僕には判断できませんが、下記の通りです。
1991年15.3兆円あった国内市場規模は10.5兆円へ
(市場は3分の2にシュリンク)
市場に出回る国内共有給料は22億点から2013年40億点あまりへ
(つまり売れていないのに商品数は増える)
1991年を100とした場合の購入単価指数は60程度
(単価が半分ちかくに下がっている)
今後、アパレルはいかにこの事態を乗り切るのか。
その答えは、本書の後半部で論じられております。
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今日は、週のしょっぱなからセンセーショナルなタイトルの書籍を取り上げさせていただきました。
僕はアパレルには、まったくの門外漢で、ここに描かれている内容が業界の真因をとらえているかは、僕には判断はつきません。ただし、この本を「アパレルの本」として読まないということが許されるのならば、非常に興味深い論点を本書は提示してくれているように感じます。
すなわち本書を読みながらも、
「自分の業界において、無自覚な自殺を行っていないか?」
という問いについて妄想力を駆使するという暴挙が許されるのなら、ここで論じられている論点の多くは、他の業界にもあてはまることは少なくない、という印象を持ちます。
あなたの業界は、「無自覚な自殺」をしていませんか?
今週も思いをはせて、頑張りましょう!
そして人生はつづく
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