2017.7.3 05:49/ Jun
女性活躍が進まないのは「ロールモデルがいないから」は本当か?
せんだって、トーマツイノベーションさん×中原との共同研究「女性の働くを科学する」の知見公開サイトにて、同研究の知見にまつわる記事を公開させていただきました(池内祥隆さん、記事作成・公開、お疲れさまでした!)。
女性活躍が進まないのは「ロールモデルがいないから」は本当か?
https://www.ti.tohmatsu.co.jp/npro/2017/report/detail/article08.html
詳細はぜひ記事をご覧いただきたいのですが、要点は下記の通りかと思います。
1.管理職およびリーダーを対象にした調査で、男女のビジネスパーソンに「働き始めてから現在までロールモデルとなる人がいたかどうか」をたずねたところ、男性の89.7%、女性の85.7%が「いた」と回答
2.男女とも6割程度の人(男性60.8%、女性60.3% 男女の差は統計的有意差なし n.s.)は「ロールモデルだと考えたひとの一部分(良い面)だけをお手本」にしていると回答している。
3.「ロールモデルがいた」という人に「そのロールモデルとなる人は社内外どちらの人か」を聞いたところ、「社内 (社内が多い、社内外半々)」という人が男性73.3%に対し女性76.2%と多いものの(男女差はn.s.)、「社外(社外が多い、社内外半々)」という人が男性42.4%に対し女性43.4%も存在する(男女差はn.s.)。
要するに、何が申し上げたいのかと申しますと、
1.ロールモデルというものは、どうやら多くの人は「いる」ひとの方が多い。しかも、それが「社外」である可能性も少なくない
2.ロールモデルは「完全無欠のお手本」というよりは、自分のあり方や働き方を考えるための「きっかけ」である
ということになるのかな、と思います。
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しかし、こうした調査結果に対して、いわゆる女性活躍推進の現場で語られてきた「ロールモデル論」には、これとはちょっと「異なる趣」をもつものもあるようです。すべてがそうであると申し上げたいわけではありません。また、ここでご紹介するのは「伝統的なロールモデル論」が有する「趣」であり、昨今のものは、こうしたものは少なくなっている印象がございます。
「伝統的なロールモデル論」を箇条書きでまとめますと、
1.まず多くの「ロールモデル論」では、とりわけ女性社員には「ロールモデル」は「いない」ことが前提になっている場合が多く、「いない」から「上昇移動(すなわち昇進など)」をめざさない、という前提が組まれている場合が少なくなかった
2.「ロールモデルの所在」は「社内」であることが前提とされていることが多く、「身近」にそうした人がいないことが「問題の所在」と考えられる傾向があることが多い。「社外」にロールモデルが存在しうることは、想定されることが少ない
3.「当のロールモデル」としては「完全型ロールモデル=そのひとの全人格やすべての経歴が参考になる人」が求められ、社員に暗黙のうち、あるいは明示的に提示される傾向がある
このような結果、社員の中では、最悪の場合何が起こりうるのかと申しますと、
1.自分で探したのではなく、会社の「社内の人」から用意したロールモデルにどこか「距離」を感じる
2.「あの型みたいには、わたしは能力や熱意は持てないよね・・・」と線を引かれる
といったことが起こりうるのかなと思います。もちろん、社員の方々のめざすべきロールモデルとして、素晴らしい未来を提示できる方もいらっしゃるのでしょうけれど、提示の仕方によっては、このようはリスクも生まれる可能性がございます。
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とりわけ、個人的には、特に「完全型のロールモデルを求めて提示してしまう傾向」は、かなりリスキーな香りが漂う気がしています。
先だって、共同研究のある会合で、
女性活躍推進の現場で取り上げる「ロールモデル」という言葉からイメージされるものは何ですか?
という問いを投げかけさせていただいたところ、
ロールモデルという言葉から生まれるのは、下記の「かけ算」なのではないか、という議論がでました。真偽のほどは、脇においておくとして、もしこれが「是」ならなかなか興味深いものです。
1.働き方改革系の制度を使っている人
×
2.育児や介護などのプライベート領域のことも、しっかりとできている人
×
3.仕事で成果をだせてる人
×
4.部下がついてくる人
もし仮に、これが「是」だとして、各項目を「1=あり」、「0=なし」といたしますと、これら4項目をすべて満たせる人は、「2の4乗」、すなわち「16分の1(6.25%)」になってしまいます。
実際には、育児も介護も「頻出の時期」がございますので、この数字よりも、もっともっと少なくなることが予想されます。
ひと言で申し上げると、「そんなひと、なかなか、いないよね」
会社が考えがちのロールモデルは、かくして「なかなか少ないもの」です。
しかし、でも大丈夫かも。
多くの人々は、社内外問わず、自らロールモデルを探索し、自己の未来をつくりあげているのかもしれません
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今日は女性活躍推進にまつわる「ロールモデル論」を皆さんと考えてみました。
このような議論を敢えて差し上げましたが、別に「ロールモデル論」だけをやり玉にあげたかったわけではなく、しっかりと施策をつくり、考えるときには、データにあたりたいものですよね、と申し上げたかったのです。
女性活躍推進にしても、働き方改革にいたしましても、とかく、流行になるような人事系の話題には、さまざまな「神話」がついてまわるような気がいたします。そして、すぐに「ロールモデル」が求められる。
昨今でしたら、「働き方改革」が話題になっておりますので、働き方改革の事例やロールモデルを社員に提示することが検討されます。
すべての取り組みが「そう」とはもうしませんが、中には「働き方改革の事例やロールモデル さえ提示すれば、社員はおのずと、働き方を変えてくれるに違いない」と考える傾向もなきにしもあらずです。
このように人事系の話題には、「それ、本当かよ? という神話」が時折、流行とともにあらわれる傾向があります。そうしたときこそ、地に足のついたデータで、物事を考えていきたいものです。
なお、本研究の知見は、ダイヤモンド社・編集者の藤田悠さん、トーマツイノベーションさんの分析チーム、田村亮さん、木下桃子さん、小暮勝也さん、眞﨑大輔社長、中原らで出版チームを組織し、そこに同社の女性メンバーの皆様にも数多く関わっていただきながら(感謝です!)、ダイヤモンドさんから書籍として刊行することをめざしております。
どうぞお楽しみに!
そして人生はつづく
女性活躍が進まないのは「ロールモデルがいないから」は本当か?
https://www.ti.tohmatsu.co.jp/npro/2017/report/detail/article08.html
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