NAKAHARA-LAB.net

2017.6.29 05:29/ Jun

「成功した新規事業担当者」を狙い撃ちする「それオレ詐欺」の甚大な被害!?

 先生、「それオレ詐欺」っていう言葉、知ってますか?
   
  ・
  ・
  ・
  
 先だって、新規事業を研究している研究室の田中聡さんが、にこにこしながら、僕に、こんなことを教えてくれました。
  
「それオレ詐欺? ・・・僕、知らない、何、それ?」
   
  ・
  ・
  ・
  
 そういうと、田中さんはこう教えてくれました。
    
「それオレ詐欺は、新規事業とか、事業創造をしている人で、成功した人は、皆さん、一度は経験することなんですよ。今まで新規事業にすごく批判的だった人が、「事業が成功するやいなや」、手の平をかえしてきたり、マウンティングしてくるんです。
  
新規事業に対して、さんざんこき下ろして、批判してきたくせに、それが「成功」しそうになったくらいから、態度を急変させるのです。
  
ひどい場合には、「それは、オレがやったんだ」「それは、おれの部門もいっちょかみしてたんだ」という風に吹聴する。これが、「それオレ詐欺」です」
  
 そういうことか(笑)
 面白いですね(笑)
 新規事業界隈を研究者の目線で深くフィールドワークしている田中さんだからこそ、収拾できた言葉のように感じました。
 素晴らしい!
  
   ▼
  
 それオレ詐欺、それにしても、怖いですね。
 でも、めっちゃ、あるあるな気がいたします。
 先日、申し上げたように、多くの会社で新規事業と既存事業は「対立関係」にあることが多いものです。 
 先日のブログでは、それを「既存事業村と新規事業村の死の谷モデル」としてお話ししました。
  
「お金の無駄遣い」と罵られ、家族からも反対され、それでも新規事業をつくる人の大研究!:新刊「事業をつくる人の大研究」を編んでいます
https://www.nakahara-lab.net/blog/archive/7808
  
 
  
 でも、先日になかった、もうひとつの視点があったんだね。それが田中聡さんが教えてくれた「それオレ詐欺」です。
 既存事業村の勘のいいしたたかな管理者、権力者は、単に「対立」しているんじゃなくて、新規事業村を常に「監視」しているんでしょうね。
  
 低地、沼地にある新規事業村を常に「ドローン」か何かを飛ばして監視しながら、たまにはちょっかいをかける。場合によっては、成功したときのことも考え、「いっちょかみ」くらいはしている姿勢はとる。
  
 そのうえで、
  
 あっ、この新規事業、成功しそうだな!
 あっ、新規事業、成果でたな
  
 と思ったら、「それオレ詐欺」をはたらく。
  
「それは、オレがやったんだ」
「それは、おれの部門もいっちょかみしてたんだ」
  
 と組織内を吹聴して回ると言うことになるのでしょうね。
 たぶん、これ、被害者多いだろうな。
  
 それオレ詐欺、ご注意を!
 くわばらくわばら。
  
  ▼
  
 今日は田中聡さんが教えてくれた「それオレ詐欺」のお話を、田中さんにかわりご紹介させていただきました。
 現在、田中さんとは「事業をつくる人の大研究」という書籍を編んでいます。
 田中聡さんの修士論文、そして、今年電通育英会様のご支援を受けて行った中原研究室の研究の2つのデータをもとに、
    
 1.事業をつくる人とは、どういう人なのか?
 2.事業をつくる人は、新規事業をおこすとき、どんな経験をするのか?
 3.新規事業をおこす人を、わたしたちは、どのように支援・評価すればいいのか?
   
 を考察する本になっています(電通育英会さまには心より御礼申し上げます)。
   
 こちらの書籍はクロスメディア・パブリッシングさんからの出版で、小早川幸一郎社長、伊賀倫子さん、戸床奈津美さんに編集・構成に入っていただき仕事を進めています。毎回の編集会議が、とても楽しみです。
  
 ともかく!
   
 事業を興している皆様、
「それオレ詐欺」にはご注意を!
 新刊「事業をつくる人の大研究」もお楽しみに!
  
 そして人生はつづく

 ーーー

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