2017.6.5 06:06/ Jun
「(ひとびとは)何かをするときに、そもそも、自分たちがどのようにやっているか、ということに関心がない。彼らは、ただ、それをやることだけに関心がある」
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サーサス&ガーフィンケル(1995)「日常性の解剖」の中に、こんな一節があります。
よく知られているように、サーサスやガーフィンケルらは、こうした問題意識の上に、
人々が、日常生活において、物事を達成しようとするやり方のプロセス(エスノメソッド:人々の方法)
を定性的な手法で明らかにしようとしました。
先日故あって、学部時代に読んだこの本をほぼ20年ぶりくらいに手に取りました。当時のことが懐かしく思い出されました。
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さて、サーサスらの研究はさておき、先ほどの提言は、私たちの多くの職業に言えることなのかな、とも思います。
わたしたちは、「何かをするとき」に、「自分たちがどのようにやっているか」にあまり注意資源を払うことなく、「やることだけ」に集中していると思うのです。
多くの場合、
「あなたは、あなたの仕事をどのようにやっていますか?」
と素朴に問われれば、
「えっ??」
と口ごもる方の方が多いのではないかと推察します。
たとえば、僕が、第三者に
「中原さんは、自分の仕事をどのようにやっていますか? 教えてください!」
と問われれば、おそらく最初は「目がテン」になってしまうでしょう。
「えっ、おれの仕事?」という風に、絶句して何も答えられなくなることが予想されます。その上でも、その質問にどうしても答えられない社会的状況が存在するならば、しぶしぶ、時間をかけて、考えるのではないでしょうか。
「日常生活で自分がやっている行動のうち、何が重要なのか?」
「重要な手続きを、どの順番でやっているか」
「その順番は、どうしてそのようになっているのか?」
について考え込み、悩みに悩んでしまうと思うのです。
「うーん、悪いんだけど、そこに、いてもらってもいいから、見ていてくれない?」
「仕事は見て、盗め」
「仕事は、背中を見て、マネするものだよ」
と思わず口にしたくなる衝動を抑えきれなくなりながら(笑)
これが、
「(ひとびとは)何かをするときに、そもそも、自分たちがどのようにやっているかということに関心がない。彼らは、ただ、それをやることだけに関心がある」
ということなのかな、と思うのです。
ワンセンテンスで申し上げますと、
人は、自分の仕事のやり方を知らない
のです。
これを敷衍して、「新人育成のこと」を考えましょう。
一般に「新人育成とはうまくいかない」ものですが(泣)、その理由というのは、中堅・先輩のメンバーに「仕事を教えるスキルが不足していること」や「仕事を教えるモティべーションがない」という「だけ」でなく、そもそも「自分の仕事のやり方を、実は、知らない」ということがあるのではないか、と思います。
困った彼らは、そして、先ほどの僕がそうであったように「そこに、いてもらってもいいから、見ていてくれない?」と口にしたくなる衝動を抑えきれなくなる。
これが「放置プレイ」が横行する理由のひとつなのかな、と思いますが、いかがでしょうか?
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週明け初日は、「人は、自分の仕事のやり方を知らない」という話題をさせていただきました。
「自分の仕事のやり方を知る」ためには、第三者に外的に観察してもらうか、はたまた、時間をかけて、「自分の仕事の経験の棚卸し」を行うこと必要になるのかな、と思います。一般の会社では、前者の機会にはなかなか恵まれないでしょうから、おそらく、後者がとりうる処方箋のひとつなのでしょう。
しかし「自分の仕事の経験の棚卸し」というのは、そこそこ時間はかかるものの、「棚卸しをする側の成長」にもつながるのかな、とも思います。人は、こうした活動を「リフレクション」と名付けるのかもしれません。
そして人生はつづく
今週も一週間、頑張りましょう!
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追伸1.
新刊「フィードバック入門」の内容を数時間のワークショップにさせていただくことになりました。2017年8月8日(火曜日)、小生が登壇し「フィードバックの仕方を学ぶ」体験ワークショップを開催させていただきます。耳の痛いことを通知し、立て直す技術。当日は、映像ありーの、実習ありーのの場になると思います。下記は「フィードバック」の特設サイトです。もしご興味がありましたら、ぜひお越しくださいませ!
フィードバック入門特設サイト
http://www.php.co.jp/seminar/feedback/
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追伸2.
この2月、中原研OGの浜屋祐子さんの修士論文が書籍「育児は仕事の役に立つ」として刊行の機会をいただきました。「ワンオペ育児」から「チーム育児」への転換を扱った本です。こちらの書籍について、下記のように、ハフィントンポストさんで特集をいただいております。白河桃子さん、心より感謝いたします。対談、楽しかったです。
これからの職場は、人手不足がさらに進行しつつ、さらに「ワケありピーポー」が増えていきます。いかに仕事を任せ、いかにフォローするかが決定的に重要だと僕は思います。
「育児は仕事の役に立つ」は本当か?
http://www.huffingtonpost.jp/2017/06/02/team-ikuji_n_16918956.html?platform=hootsuite
ワンオペ育児からチーム育児へ。長時間労働を見直す本当の意味 東大・中原淳さんと考える
http://www.huffingtonpost.jp/2017/06/02/one-operation_n_16926342.html?utm_hp_ref=japan-lifestyle
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追伸3.
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「尊敬できる上司」という幻想 東大の先生に仕事の愚痴を聞いてもらったら…
http://wotopi.jp/archives/56515
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