2017.3.30 07:02/ Jun
リーダーシップとは「矛盾」である
しかし、
リーダーの「矛盾に満ちた行動」こそが、成果を生み出す
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昨日に引き続き、せんだって開催された研究会で読んだ文献のなかに、リーダーの「Paradoxical leader behavior(リーダーのパラドキシカル行動)」という概念がでてきていて、興味をそそりました(Zhang 2016 in Academy of Management Journal)。
パラドキシカルとは一般的な意味は「逆説的」ということになります。が、ここで「パラドキシカル行動」とは、
リーダーが、一見相反してしまうような行動を、同時にとっていること
をいっています。
つまり、一見、相反してしまい、矛盾しがちな行動をとることで、リーダーは成果を創出しようとする
のです。
たとえば、
部下とは一定の距離を保ちつつ、一方、親密さをつくりだす
部下を1人ずつ観察しながら、一方、職場全体も見る
部下の長期的なキャリアを意識しながら、短期的に成果をださせる
成果をだすためには、こうした一見矛盾してしまうような行動を、リーダーは、とらなくてはなりません。
一見すれば矛盾? ていうか「無理ゲー」?
実際、論文中では、ピープルマネジメント(部下のマネジメント)において、リーダーのとる、こうした矛盾行動は、部下の仕事の熟達度、適応的行動、プロアクティブ行動に対して、ポジティブな影響をもたらすことが指摘されていました。
うーん、一見相反するようなものを抱えて生きる。
陽でも陰でもなく、陰でも陽でもない。
興味深い現象ですね。
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ただし、個人的には、このリーダーの矛盾行動の実現には「困難さ」も伴うなと思います。
第一に、リーダーの矛盾行動は、リーダー内部には、ストレスとして意識されることもあるでしょう。論理的にはどうしても矛盾してしまうような行動をとるわけですから、そこには内的一貫性が崩れてしまう可能性があります。
下手をすれば、感情労働的なバーンアウトを経験してしまう可能性もあるでしょう。
最大の課題は、
リーダーとは、かくあるべし
リーダーとは、ちょめちょめでなければならない
部下には、ほげほげで接しなければならない
という強い「一面的な規範的意識」をもったリーダーから、「酸いも甘いもわかってまっせ的なリーダー=矛盾行動を引き受けるリーダー」への移行には、強い価値観の転換が経験される必要があるということです。
人材開発の研究者としては、このあたりが興味深いところです。
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今日はリーダーの矛盾行動について書きました。
このように、リーダーとは、常に矛盾したものを抱えながら、生きています。
リーダーシップとは「矛盾」である
そして人生はつづく
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