2017.3.29 05:49/ Jun
研究室OBの関根雅泰さんらが中心になって「リーダーシップの光と闇」研究会(!?)という謎の研究会が、昨日、東大で開催されました。
昨日は、
リーダーシップの「ダークサイド」がもたらす効果
について英語文献を選定し、みなで購読を行いました。
どの文献も興味深かったのですが、上司のパワハラ指導に関する文献が、個人的にはヒットしたもののひとつでした(Liu, D. Et al 2012, The dark side of leadership:宇都出さんご報告)。
その要旨を端的に申し上げるのならば、
1.パワハラは「伝染」する
=トップのパワハラは、ミドルマネジャーに再生産される
2.ミドルマネジャに再生産されたパワハラ指導は、職場メンバーの創造性を刈り取る
=部下は新しいものを生み出そうとしなくなる
というものです。
結果を聞けば、そうだよなと思うことですが、なかなかリゴラス(厳密)にこのことを実証なさっていたのは、興味深いことでした。
1「パワハラ指導は伝染する」の部分は、いわゆる「社会的学習理論」が引用されていました。要するに、トップのやっている行動を、ミドルマネジャーが「観察」して「学習」してしまい、そのまま再生産してしまう、ということですね。
あっ、こんな風にマヂギレしていいんだ!
じゃあ、オラも部下にマヂギレしちゃおっかな!
オラオラオラオラ
ってことです。
2「ミドルマネジャーのパワハラ指導は、職場の創造性を刈り取る」については、本論文中で詳細なメカニズムは検討されておらず、僕個人としては、そこが気になるところですが、ほかの文献でわかっていることを総合すると、
1.職場の貢献意欲がさがるから、職場の創造性もさがる
=ぺんぺん草もはえないようなクソ職場のために、創造性を発揮したいと考える人はいない
2.上司のパワハラ指導におびえ、創造性の発揮につきもののリスクをとらなくなる
=北斗の拳的なオラオラ上司の前では「怖い」ので、目立つことはしない
という感じになるのかなと思います。
このあたりは実証が必要な部分ですね。
これと対局にある研究として、「インクルーシブなリーダーシップ」と創造性に関する研究も注目できるものだと思います(荒木先生・産能大ご報告)。
インクルーシブなリーダーシップとここでいうのは「他者からのインプットを受け入れ感謝するようなリーダーの行動=関係性のリーダーシップ」です(Carmeli et al 2010)。
1.開放性=アイデアやメンバーに開放的であること
2.有用性=すぐに対応をしてくれること
3.近づきやすさ=近づきやすいこと
などがその構成要素になります。
分析の結果によると、
1.インクルーシブなリーダーシップは、心理的安全を促進する
2.心理的安全は従業員の創造的仕事への従事を加速する
3.心理的安全は、インクルーシブなリーダーシップと創造性を媒介する
といったことがわかりました。
やっぱり、職場レベルの創造性はオラオラリーダーシップでは生まれないんですよ。
興味深いことですね。
▼
今日は職場レベルの創造性がいかにして生まれるのかというお話をさせていただきました。
こういう話をすると、すぐにアップルのジョブスは創造的だったけど、あれをどう説明するんだ、という話がでてきそうです。
でもね、あれは
ジョブズ個人が創造的だった
わけであって
職場メンバーが創造的であった
かどうかはわかりませんよ。
ジョブスの言われたことを、ひーひーやっていたのかもしれない。
真偽のほどは藪の中です。
あと、ああいう会社は全体を考えると0.1%も存在していないわけで、5%水準で有意差を見いだす統計的仮説検定では、そもそも、その存在を説明できない?というのもあるのかな、と思います。
ともかく、学び多い場でした。
今回、文献の選定は、中原がいったん選び、そこに研究室の田中聡さんが選定を行ってくださいました。様々な研究会を企画してくださる関根雅泰さん、舘野泰一さん、田中聡さんには心より感謝をいたします。ありがとうございます。
この研究会には、学外からもご参加いただき、みなで議論する時間を得ました。ご参加いただいたみなさまもありがとうございます。
またお会いしましょう!
そして人生はつづく
※関根さんが今回もブログ記事を書いてくださっています(感謝)
リーダーシップの光と闇(3)
http://learn-well.com/blogsekine/2017/03/post_490.html
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