2017.3.16 06:50/ Jun
先だって、ある研究会で、こんな話題で議論が盛り上がりました。
「日本人が創造性が低い」というのは本当か?
という話題です。
巷の議論では、たとえば、スティーブ・ジョブズなどが引き合いにだされ、
やれ、日本では、iPhoneが生まれない
だから日本人は創造性が低い
とかいう議論が繰り広げられることが多いのですが、本当のところは、どうなんだろう、ということで、かなり議論が盛り上がりました。
異領域のさまざまな研究者から、数々の意見が出されましたが、僕としては、下記のようなお話をさせていただきました。
私見を開陳すると・・・
「日本人は創造性が低い」
のではなくて、
「創造性」といわれたときの「敷居が高い」
のではないかという妄想的?仮説です。
今日はこのお話をいたしましょう。
▼
まず、まっさきに思うのは「日本人が創造性がない」というときに、わたしたちは2つの存在を無視しています。
まず、iPhoneなどの「海外の創造物」には言及するものの、「日本で生まれた創造物」に対する言及を、人は、意識的ないしは、無意識的に排除する、というバイアスが存在する、ということです。
もうひとつは、スティーブ・ジョブズなど一部の海外の創造的個人には注目しますが、日本の創造的個人に対しては、あまり言及をしない、ということです。
しかし、すぐに考えてみるとわかるとおり、ウォークマンしかり、新幹線しかり、ハイブリッドカーしかり・・・日本にも様々な「創造物」があり、創造的個人がいるのですが、創造性をかたるとき、人はこうしたものの存在を意識的、無意識的に排除する傾向があります。
日本人は、日本の「創造的個人」や「創造物」の価値を意識的か無意識的にか、低くみている
ということです。
この背景にあるのは、こうした論陣をはる側が、「日本は創造性が低い」という言説を強化することをめざして、最初からデータが選択している可能性があるということです。
多くの場合、こうした論陣をはる人は、「創造性ビジネス」やら「イノベーションビジネス」(創造性やイノベーションなどを生み出すワークショップや機会の創出などを行うビジネス)で飯をくっている人であることが多いので、「日本人の創造性が高くては」困るのかなとも思います。
要するに、「日本人は創造的である」ということを認めたくないメンタリティ=日本人の創造性に対する敷居の高さ」がそこには存在しているような気がします。あるいは、
この国には、「創造性」をポジティブに評価する風土が低い
とも言えるのかもしれません。
▼
次に「創造性への敷居の高さ」を物語るものとして、多くの人々が「創造性」といわれたとき、かえす反応を想起しないわけにはいきません。
一般の多くの人々が創造性に関してかえす反応は、
「創造性ですか? いえいえ、わたくしなんか、恐れ多い」
「わたしなんか、無理ですよ・・・いえいえ、わたくしなんかが恐れ多い」
というものです。
一般には、創造性とは、とてつもなくすごいことをしなければならないことのように捉えられているような気がします。
でも、よく考えてみると、創造性は、別にものすごいものを生み出さなくても、必ずしもよいのです。ほんの少しの工夫でも、わたしは創造性ととらえる見方を指示します。
しかし、一般には、
創造性があるとは、とてつもないものを生み出さなくては、口にだすことさえ憚られるようなもの
と思われている節があります。
保育園や幼稚園の砂場で遊んでいる幼児の発揮する創造性だって、創造性なのにね。
創造性への敷居が高いのです。
▼
最後に、「でてきた創造性を叩く雰囲気」です。日本には、生まれた創造性に対する敷居が高く、かつ、それを組織のなかで内部決定していく場合には、「せっかく生まれ出た創造性」を叩いてつぶす風潮、ないしは、それを「生まれ出た創造性を素直に認めない風潮」があるように思います。
中原研D1の田中聡さんは、そのことを
「ブラッシュアップ」という名の「そぎおとし」
とおっしゃっていました。まさに慧眼です。
要するに、この国に足りていないのは
どんなに「小さな創造性」であっても、ちゃんと認める雰囲気
創造性は、みんなのものであり、身近なものなんだよと思う気持ち
生まれ出てきた創造性をブラッシュアップという名目でそぎ落とさないこと
が重要なのかと思います。
これらをまとめると、創造性に対する敷居が高すぎる、ということになりますが、いかがでしょうか。
▼
今日は創造性のお話をいたしました。
この国は、人の能力や創造性こそが、これから原資になっていかなくてはならないと僕は思います。願わくば、クリエィティビティを発揮しながら生きていける環境を増やしていきたいものです。
そして人生はつづく
ーーー
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