2017.2.20 07:01/ Jun
僕は仕事柄、大学では、大学院生に対して教えますし、さまざまな教育施設などでは、いわゆる社会人やビジネスパーソンに、教えることもあります。
どちらも熱心に学んでくれる方が多く、大変うれしいことですが、この両者の「教え方」には「違い」をつけるようにしています。どちらがよいとか、悪いとかの問題ではありません。
「長期にわたって教えることのできる大学院生」と、「短期間に教えなければならないビジネスパーソン」は「違う存在」だと考えています。
両者の特性に応じて、それぞれの効果をだすためには、「教え方」を工夫しなくてはならないと思うのです。
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たとえていうのであれば、大学院生は「沁みいる教え方」ができるのに対して、後者のビジネスパーソンは「揺さぶる教え方」をするようにします。
「沁みいるような教え方」は、じっくりと考える問いを投げかけつづける教え方です。
大学院生の場合は「答え」を急ぐ必要はありません。ですので、じっくりと問われ続けることで、本人のなかで答えが生まれ、徐々に認識がひろがっていくように学んでもらうことができます。
学ぶことに長い時間がかけられる大学院生は「自分のなかで答えが染みいっていく時間?」があるので、じっくりと問いかけます。これが「染みいる教え方」です。
対して、「揺さぶる教え方」というのは、同じように「問いかけ」は行うのだけれども、それは「揺さぶるため」に行う教え方です。
ビジネスパーソンの場合は、長い時間はかけられないので、最初に、これまでの常識や自明の考え方を、早期に「ゆさぶる」ような、「鋭い問い」をなげかけます。それによって「亀裂」ができれば、しめたものです。そのうえで、ただちに考えてもらいます。
ビジネスパーソンには、時間がありません。自ら考えてもらったあとは、答えをひとつの考え方として提示しなくてはなりません。これが「揺さぶる教え方」です。
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「学び」にとって、時間は「重要な制約」です。その長短によって、教え方が変わってきます。
そして、その長短は、学ぶ人の所属する社会的属性、社会集団、社会文化的なコンテキストに依存しています。
大切なことは、「同じ大人?」といっても、「十把一絡げ」にしないことかもしれません。
僕は、本当に痛切に思うのですが、教え方や学び方を研究する研究は、これまで「学ぶ人の社会的属性 / 学ぶ人の所属する社会集団」と「それゆえに生じる制約」に無頓着であることの方がおおかったと思います。
例えば、「ニューヨーク・マンハッタンでハイエンドな社会階層に実践される教え方や学び方」と、「ラストベルトとよばれる地域の貧困地域で実践される教え方や学び方」と、「アジアの日本で識字率が99%を超える場所での教え方や学び方」が、なぜ「併置」されたり、安易に、片方を他方に「適用」したりすることができるのでしょうか。
20代後半以降、僕が、自らの研究を、大きく方向転換をする理由になったのは、実は、そういうことでした。これは、また別の話にでも(笑)。
相手のもっている可処分時間や状況におうじて、臨機応変に「教え方」が工夫できたとしたら、こんなに幸せなことはないのかな、と思います。
そして人生はつづく
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