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2017.2.1 06:30/ Jun

「過去の研究知見」をまるっと知りたいときには何をしたらよいのか?

 ちょっと前のことになりますが、大学院ゼミで「よいレビュー論文とはどのような論文か?」ということが議論になりました。
  
 レビュー論文とは「ある研究領域の、過去の先行研究を集め、その研究知見をまとめた論文」のことをいいます。
  
 要するに、ワンワードでいえば「まとめ論文」
 過去の膨大な研究知見を「まとめて」くれるのですから、ありがたくて、ありがたくて、涙がでます。
  
 例えば、グーグルスカラーなどで「知りたい研究領域(概念) + review」と検索すれば、様々な論文がヒットすると思うのです。
  
グーグルスカラー
https://scholar.google.co.jp/
  
 例えば、組織文化(organizational culture review)と検索してみてください。すると、さまざまな論文がヒットするでしょう。これらのなかに、レビュー論文(まとめ論文)があります。
  
 他にもいろいろやってみるといいかもよ。
  
 ▼
  
ところで、「よいレビュー論文とは何か?」ですが、僕は、いつも下記の3点で説明しています。
  
 1.高い網羅性
 2.鮮やかな整理軸
 3.未来への提言
  
 1「高い網羅性」とは、「レビュー論文が、どの程度、より多くの先行研究の知見を網羅しているのか?」ということです。
  
 レビュー論文なのに、知見の網羅性が低いものは、レビューとはいいません。それは「著者の行き当たりばったり」で書かれたものです。
 レビュー論文というからには、数百くらいの論文はレビューして、その知見がまとめられている必要があります。
  
 2「鮮やかな整理軸」とは、1で集めるに集めた知見を、パコーン、カキーン(!?)と整理する「整理軸」がもうけられているかどうかということです。
  
 集めるに集めた論文を、ただ、まな板のうえに集めたレビュー論文を、わたしたちはレビュー論文とはいいません。雑多な知見を、鮮やかに「整理する独自の軸」をレビュー論文はもっているものです。
  
 3「未来への提言」とは、「レビュー論文において、その研究領域の、将来の課題や取り組まなければならない問題が述べられているかどうか」です。
  
 過去をふりかえり、研究知見をまとめて、それで終わるのではレビュー論文とは言えません。
  
 レビュー論文とは「過去を振り返り、未来を模索する」ものです。
 この意味で、レビュー論文とは「リフレクション」に他なりません。
  
  ▼
  
 今日はレビュー論文について書きました。
  
 研究に取り組むうえで、レビュー論文は、非常に多くの示唆を与えてくれる論文です。多くの場合、研究者は、新たな研究をはじめる場合、レビュー論文をさがし、その研究領域の「全体像」をつかもうとします。過去の先人達が、何に苦闘し、今現在で何が明らかになっていて、何が課題かが一目瞭然だからです。
 
 新たな知的航海に出たいものです。 
 「よきレビュー論文=素晴らしい地図」にしつつ
 
 そして人生はつづく

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