NAKAHARA-LAB.net

2017.1.24 06:57/ Jun

「働き方改革時代」に求められる「デジタルファシリテーション」!?

 せんだって、ある企業のみなさま500名の方々に、講演会を開催させていただきました。
  
 その企業の方々の志ある方々と僕とで、この数年間まとめさせていただいた共同研究の知見を、現場の方々に対してお話させていただく講演会で、約2時間にわたって、500名の方々に講演をさせていただきました。
  
 お忙しいなか、お話を聞いて下さった方々に心より感謝いたしますとともに、このような共同研究の機会をいただいた共同研究者のみなさま、ともに研究や執筆をおこなわせていただいた同社のみなさまにも、謝意を述べたいと思います。
  
 最新の研究知見が、どの程度、皆さんに響いたかは、わからないのですが、無事終えることができました。本当にありがとうございました。
  
  ▼
  
 ところで、今回の講演会で、個人的に非常に印象深かったのは、この500名の方々が、どの場所で、僕の講演を聴いてくださっていたのか、ということです。
  
 実は「全国の地域22拠点」からインターネットのテレビ会議をつかって、この講演の模様を受講いただいておりました。
   
 僕は、ネット中継には、これまでにも3拠点・・・多くて5拠点くらいはありましたが、今回、22拠点は、はじめてでした。このたび「個人記録」を更新させていただくことになりました(笑)
(※ちなみに、この試みは同社の皆さんにとっても、はじめての経験とのことでした)
  
 僕は、東京会場の80名の方々に、質問を投げかけながら、講義を行います。その模様を、残り21拠点の方々も、耳にしておられます。
  
 今回、それぞれの地域で、どのように聞こえていたのかは、いささか心許ないのですが、こうした「デジタルメディアをつかった地域分散型研修」が、今後も増えていくだろうな、と思いました。
   
  ▼
  
 せんだってのブログで、「働き方改革」の文脈で、今後の人材開発は「高濃度な学び」が求められるようになるだろう、と予想(=マイ妄想)を書きました。
  
「働き方改革」の「一丁目一番地」に上げられているもののひとつに「長時間労働の是正」があり、これからは、企業内で「生産性を高める工夫」と同時に、「限られた資源」である「時間をめぐる戦い」がはじまる。
  
 人材開発とて、その影響は必ずうける。「人材開発のための時間圧縮」と「効果を高めるための工夫」がおこり、これまでよりも「短い時間」で「高濃度の学び」を提供しなければならなくなるであろう、という内容でした。
  
「働き方改革」時代の人材開発に求められるもの?:「高濃度の学び」をいかに実現するのか!?
http://www.nakahara-lab.net/blog/archive/7234
   
 今回の講演会では残念ながら「双方向のやりとり」は不可能でしたが(地域からはメールやテキストでしか情報を発信できない状況でした)、おそらく、これからの人材開発では、
  
1.「デジタルメディアをつかった地域分散型研修」がさらに一般化する

2.「デジタルメディアをつかった地域分散型研修」が、よりインタラクティブになる。
  
3.講師には、空間を超えても人々を対話させることのできる「デジタルファシリテーション術」が求められる
  
4.事務局には、安定的に接続を行い、地域間をむすぶための堅牢なロジスティクスが求められる
   
 と思われます。

 あるいは、

5.単なる情報発信はデジタルメディアを通じて中央から行われ、地域では、それぞれの地域で、ファシリテータがディスカッションをファシリテーションする

 というシナリオもありえるかなと思います。先ほどの中央の講師が全拠点を制御するファシリテーションを「集権型デジタルファシリテーション」とするなら、各地域によって行われるファシリテーションは「分散型デジタルファシリテーション」と呼べるかもしれません。
   
 いずれにしても、これらが実現した場合、生まれるのは
  
「本当に人が集まってなすべき研修の内容とは何か?」
  
 という「問い」であると思われます。
  
 「一方向的な講義」なら、「中央」から地域に向けて、デジタルメディアを駆使して、伝えられる。ファシリテーションも100点満点とはいわずとも、デジタルファシリテーションを駆使すれば、そこそこのレベルなら実現できるかもしれない。
  
 ならば、
  
 本当に、人が、集まってまでしなくてはならないことは何か?
 
 ということが問われることになるのだと思います。
  
  ▼
  
 デジタルメディアは、さらにさらに進化していくでしょう。
 働き方改革のムーヴメントも、しばらくは続くものと思われます。
  
 そして「人材開発のかたち」は、それらの環境変化にあわせて、どのように変化していくのか?
   
 ひとつの解は、
  
 本質的に「価値の高い学び=高濃度の学び」だけが、対面場面に残る
  
 というものです。
  
 もちろん、そこには「講師のセレクションの目が厳しくなる」などの変化も付随することと思われます。
  
 そして人生はつづく
  
  ーーー
  
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