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2006.9.27 08:25/ Jun

保守って、なんだかわかる?:安倍首相の「保守」

 このところ新聞等でよく目にする言葉に「保守」がある。なにやら現政権が掲げる政治姿勢は「開かれた保守主義」なのだそうだ。
 それにしては、安倍首相の「保守」はイマイチピントこない。うーん、どうしたものか、と思っていたら、本日の朝日新聞に京都大学 佐伯啓思先生の解説が掲載されていていて、腑に落ちた。
 以下、長くなるが引用する。
 —
 欧州の保守主義は、本来、フランス革命へ反動として生まれた。それは、進歩の思想を疑う。物事を理性的に設計し、伝統を壊して、社会を計画的に革新するという発想に疑いの目を向ける。
 むしろ歴史的に形成され、伝統として守られてきたものの中にこそ、知恵があるという考え方だ。緩やかな階級的社会秩序や、オーソドックスなものの権威を大切にする。家族やコミュニティ、そして国家を重視する。
 一方、米国の保守主義の核にあるのは、独立した強い個人だ。個人が自力で人生を切り開く。それは能力主義、市場競争主義につながっていく。欧州の保守と違って、理性や技術の力を信じる。絶えざる革新、創造的破壊、進歩主義をよしとする。
 欧州の保守から見れば、これは個人主義的な自由主義であり、保守主義とは別ということになる。
(中略)
 ところが安倍氏は米国流の保守主義に近い小泉改革路線を基本的には継承しようとしている。自由な市場競争の促進であり、個人の自己利益の重視だ。これでは、公的な精神の発揮を重んじ、私的な利益追求を抑制する本来の保守主義からは、かなり離れてしまう。
 しかし、安倍氏は一方で愛国心の大切さなども強調している。歴史伝統の重要性も訴え、米国流保守と欧州流保守がごちゃまぜになっている。場合によっては、国のために命をなげうつ覚悟も必要とさえいう。
(筆者一部編)
 —
 この主張をふまえて考えると、僕がなかなかわからなかった部分は、明らかだ。要するに、僕は安倍氏のいう保守を「米国流保守」、いわゆる新保守主義と考えていた。だから、なぜ「愛国心」の問題がでてきたり、「美しい国」の発想がでてくるのか、わからなかった。
さらにいうならば、それら欧州風保守の概念が、米国流保守主義の「市場原理による改革」とどう接続するのかが、わからなかった。
 教育政策に至っても、この「ねじれ」は見事に体現されているように思う。肝いりの「チャータースクール」の話と、愛国心、教育基本法改正の問題が、どうも僕には接続できていない。
 うーん、これはちょっと勉強しなくてはならないね。昔読んだ、社会思想史の本でももう一度「ひもとく」か?
 
 
 
 とまぁ、そんな話を朝食の際にしたら、カミサンに「ガン見」された。
 ・・・・・・つーか、その前に、引越ですよね。ハイ、引越ね。
 やります、一生懸命やりますとも。
 僕が「ひもとく」のは、段ボールですよね。
 
 
 
 ・・・トホホ。

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