2016.12.2 06:56/ Jun
寿司屋の修行は、むかしは「めしたき3年、にぎり8年」と言われたのです。
しかし、その育成には「影」があります。
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せんだって、日本でもっとも早くから「寿司専門」の料理専門学校「東京すしアカデミー」を開かれた代表の福江誠さんに、雑誌「人材教育」の取材でお逢いする機会を得ました。
お忙しい中、貴重なお時間をいただいた福江さん、はじめスタッフの方々、学生の方々に、まずはこの場を借りて御礼申し上げます。貴重なお話をありがとうございました。
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福江さんによりますと、現在はグローバルで「寿司ブーム」が起こっています。また、国内では多くの街の寿司屋さんが、後継者が見つけられないなどの理由で廃業を余儀なくされています。要するに、寿司屋には強いニーズがある一方で、その担い手が不足しているのです。
そのような中、2002年から福江さんは、寿司専門の料理専門学校である「東京すしアカデミー」を開校いたします。福江さんからは、その当時の経緯・いきさつふくめ、寿司の今後に関する、様々なお話を伺いました。ありがとうございます。
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福江さんからは様々なお話を伺いましたが、個人的にもっとも興味深かったのは、
かつての寿司屋の育成(徒弟制)は「多産多死型」だったのです
という一言でした。
かつて、日本が高度経済成長であったとき、地方からは大量の高校生が、東京をめざして集団就職で上京してきました。その中には、「東京に出てくること」が目的で、何をやるのかを決めてなかった若者も多かった。
その中には「だったら寿司屋でもやるか」という具合で、曖昧なモティベーションで寿司屋に弟子入りしたといいます。
しかし、寿司屋の方には、彼らを「教えるノウハウ」や「教える風土」はなかった。そこには「技術は見て盗め」を地でいくような徒弟制が跳梁跋扈していました。
「教える」とは名ばかりで、労働力の搾取につながる事例も少なくなかった寿司屋もあったといいます。若者の曖昧なモティベーションと、労働力を必要としていた寿司屋の「共犯関係」がここに成立しました。
また、実際は、教えるはずの年配者の方も「教えられた経験」はなかったので、「明確な言葉で自分の技術を伝える術」をもっていなかったのではないかと考えられます。
年配者はときに「背中を見て育て」「技術は盗め」といいます。しかし、それは「技術をそのようなかたちでしか伝えられない」からそういっているのではなくて、「自分の技術を言葉にすることが、そもそもできなかった」からなのではないか。
年配者の言語技術の不足を覆い隠すための方便として、そのような「背中を見て育て」「技術は盗め」というセンテンスが利用されていなかったか、ということですね。
かくして生まれたのが「多産多死」というメタファにたとえられる現象でした。
大量の若い人が、寿司屋の修行で挫折しました。そして、その失敗の理由は、すべて若者の怠惰という個人の資質に帰属されました。
その中で、本当に職人になれたのはよくて「10人から1人」、最悪のケースでは「100人に1人」ではなかったかという話を伺いました。
でも、それでも、よかったのです。かつての日本では、大量の若者がわんさか、わんさか、都会をめざしてくるような状況があったので、「ダメなら、次がくるから大丈夫だった」のです。
このように徒弟制とは、師匠から弟子に対する技量のパワフルな伝達様式ですが、「残酷な側面」をもっています。
「技術は見て盗め」
「教えない」
「背中をみて育て」
というのは、大量の失敗者を生み出すシステムでもあるのです。
日本の人材開発の言説空間には、ときおり、「徒弟制ロマンス」というものが浮かび上がってきます。徒弟制が「ロマンティシズム」をもって語られ、「やっぱり技術は盗め」だよね、と語られるのです。
そんなときには、ぜひ、徒弟制のもつ「残酷な一面」を思い出して頂きたいのです。
あなたの組織が「10人に1人」や「100人に1人」を育てる場ならば、それにロマンティシズムを感じるのは妥当なことでしょうけれども(笑)。
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今日は東京すしアカデミーさんの福江代表の言葉から、徒弟制について考えてみました。
こちらの記事は、雑誌「人材教育」に掲載される予定です。どうぞお楽しみに!
最後になりますが、福江代表はもちろんのこと、取材を企画して下さっているJMAMの西川さん、ライターの井上さんに心より感謝いたします。
そして人生はつづく
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