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2016.9.6 06:30/ Jun

はじめてのことを自ら愉しむ「僕のワークショップ流儀」!?

 僕の研究は「人材開発」
  
 お仕事柄、たくさんのワークショップをさせていいただきます。
  
 人材開発の研究は、調査などで「ものごとを明らかにすること」だけでは終わらないことがほとんどです。
  
 調査で「わかったこと」を現場の人々にフィードバックさせていただき、未来をつくるお手伝いをする。多くの共同研究では、多くは、そこまでが求められます。
  
 だから僕の日常は、ワークショップだらけです。
 毎日パワポをつくってる(笑)。
  
 調査だらけで、ワークショップだらけ(笑)
 忙しいけど、幸せなことです。
  
  ▼
  
 せんだって、あるワークショップをさせていただいたとき、参加者の方方から、こんな感想をいただきました。
  
「先生のワークショップでは、ふだんは、考えないことを考えることができて、愉しかったですよ」
  
「今日は、スパイシーな結果を突きつけられたけど、面白かったです」
  
 手前味噌になりますが、僕の行うワークショップなどの感想としてもっとも多いのは「愉しかった」や「面白かった」です。まことにありがたいことですね。
  
 まぁ、「愉しければいいのか?」というつっこみはあるかもしれないですよね。でも、僕の場合は、この「楽しさ」が「エンターテインメント」ではないのです。
 むしろ、扱っている内容は「シリアス」だったりする。
  
 僕がめざしているのは、むしろ
  
 「シリアス」のB面にある「たのしさ」
  
 です。
  
 ところで、「たのしさ」を求めようとするとき、自分としては、参加者の方が、そういう感想をもっていただけるように、最大限努力しているつもりでは、「実はありません」。
  
 むしろ、もはや「自然体」になっていて、自分では意識できない行為が、そういう雰囲気をつくりだしているようにも思えてきます。
    
 先日、ある人材開発担当者の方から、こんな問いをいただきました。
   
「先生のイベントって、出てる方から、愉しいって、よく言われますよね。先生は、どうやって、そういう雰囲気をつくっているんですか?」
  
 鋭い!
 でもね・・・・わかんない(笑)
 だって、自分のコトだから・・・(笑)
  
 嗚呼、これでは話が3秒で終わってしまいそうなので、ちょっと、あるワークショップをネタにして、自分を観察してみることにしました。
  
 俺は、どうやって、この場で行為しているんだろう?
  
 変なリサーチクエスチョンです。
 だって自分なのに(笑)。
 自分のコトが一番わからない(笑)
  
 すると、いくつか面白いことがわかってきました。
 いろいろあるんだけど、今日は時間がないので、3つだけご紹介します。
  
 ▼
  
 まず第一に真っ先に気がついたのは、
  
 僕自身は自分のやるワークショップのなかに、必ず「はじめてのこと」を盛り込んでいる
  
 ということです。
  
 同じことは二度とやらない。そういえば、教員になってもう15年くらい立ちますが、1度も僕は同じ授業をしたことはありません。
  
 どんなに小さくてもよいので「はじめてのこと=プチ挑戦」を盛り込む。僕は性格的に「挑戦」というと、がぜん、「燃えるタイプ」です。
  
 要するに、そうやって
  
 自分自身を愉しくしていること
  
 がわかりました。
  
  ▼
  
 第二に、自分はワークショップのなかで、なるべく「命令形」を使わない話法を用いていることがわかりました。
  
 ワークショップに参加して頂いた方が、「自分から動いて頂くような感覚」をもっていただくため、極力、命令形の話法は用いない。これは、おそらく、無意識のうちにです。
  
 たとえば、
  
 ・・・・を・・・・してください
  
 というのではなく、極力
  
 ・・・・を・・・・していただけるとお楽しみいただけるのかな、なんて思います
  
 とお話しているのです。
 これは、自分でもびっくりしました。
  
 もちろん、ここで「伝統的な教授学的批判話法?」に慣れ親しんだ方からは、
  
 中原のへなちょこりんな話法でつくられた「自分で動く」は、いわば、中原によってつくられたものであり、「強制された”自分で動く”だから、けしからん」というかもしれない。
  
 でも、自信をもっていいますが、それで、いいんです。
 それが、何か?
  
 もしそれが窮屈になって自分で動き出したくなったら、それで本望。きちんと「送り出せた証拠」ではないでしょうか。
 自分でできるなら、ワークショップなんてこなくていい。自分の現場で、自由に実践なさいなさいな。
 僕はそう思ってやっています。
  
(ちなみに、伝統的な教授学批判話法は、自発的に動く、そうでないか、に重きを置きすぎだと僕は思います。学習者の目がキラキラして自発的に動くことがよしで、そうでないのはバツ。そういうパラダイムに僕は価値を感じません。もう飽きた。そんなこといってると、何にもできないよ)
  
  ▼
  
 第三に、「予想外が起こっても、びびらない」ということです。
  
 これを考えるために、抽象的な2つの図形(黒い四角と赤いかたち)を書いてみました。
 まず、ワークショップをする側には、たいていの場合、「落としどころ=黒い枠=想定の行為」が存在します。
  
想定の範囲内?
  
 しかし、ワークショップをしていると、中央の図のように「赤の範囲=学習者の想定外の行為をふくむ動き」がはみだしてきて、場合によっては、右の図にあるように「はみ出しまくり」の状況になってしまうこともあります。
  
 しかし、問われるのは、まさにそのときです。
  
 まさに、そのとき、はみ出しちゃった「赤」さんに
  
 ・・・・勝手に外にでないでください
 ・・・・はやめてください
 ・・・・はしないでください
  
 というのか
  
 それとも、ここで「想定外のこと」にひるまず、
  
 こりゃ、面白いですね。
 じゃあ、こうしたらいいんじゃないですか?
  
 と言えるかどうかは運命の分かれ道であるような気がします。
  
 ややどM的かもしれませんが、どの程度ハプニングを許容し、どの程度、ひるまず、前向きに対処できるか。
  
 これが非常に大きいように思います。
  
  ▼
  
 今日はワークショップを実施しているときに、自分が心がけていることを書きました。いわば、僕の「ワークショップ流儀」のようなものですが、いかがでしたでしょうか?
  
 皆さんは、どんなワークショップ流儀、どんなファシリテーション流儀をもっていますか?
  
 良い悪いではなく、そういう流儀を集めてみるとおもしろいかもしれませんね。多くの場合、意識にはのぼってないかもしれないけれど。
  
 そして人生はつづく

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