2016.8.18 07:02/ Jun
理事を仰せつかっているNPO法人カタリバの理事会が、先だって、都内某所で開催されました。
NPO法人カタリバ
http://www.katariba.net/
今回の理事会は、のちのち、カタリバにとって「大きな転機」になる理事会になったのかな、と思っています。
これまで今村久美さんのリーダーシップのもと、いわばCFOとしてカタリバの組織、財務、人事、総務を支えてこられた岡本拓也さんが8月をもって常務理事を退任なさり、新たな道を歩まれることになりました。
岡本さんの後任には、東北事業を率いてこられた鶴賀康久さんが事務局長に就任し、今村久美さん、今村亮さんら、多くのディレクター陣とともに、カタリバを率いて行くことになりました。
岡本さんの退任に関しましては、心の底から、お疲れ様とお言葉をおかけしたいです。また、ご卒業、おめでとうございます。
また、鶴賀さんの就任に関しましても、心より御祝いをさせていただきたいと思います。ご就任おめでとうございます。
ぜひ、鶴賀さんらしい、素晴らしいリーダーシップを発揮なさってください。
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僕が、カタリバの理事を仰せつかって、もう5年くらいかな、と思うのですが、現在のカタリバは、当時のカタリバとはおよそ似てもにつかぬ組織に成長しました。
僕が就任したころのカタリバは、様々な組織体制、社内ルール、人事体制が、まだ整備途中でした。またカタリバ事業という従来の事業をいかに再興し、同時に新規事業をいかに構築していくかが、組織的課題であったと記憶しています。もちろん、事業規模、スタッフ規模も今の何分の一でした。
そうした中で、財務の知識を駆使して、「2足のわらじ」をはきながら、CFOとしてカタリバの組織体制を整備していき、財務体制、人事体制を整備していくことの指揮をおとりになっていたのが岡本さんだったと思います。
一般には、NPOとか、NPOが行うサービスと言うことになると、一般には、組織、人事、財務とは無縁の世界のように思われるのかもしれませんね。
それは「みんな善意でやってるんだから、何とかなるんじゃないの?」と。
いいえ、規模にもよりますが、カタリバの場合、それは100%、違います。
良質のサービスを安定的に提供していくためには、そこに堅牢な組織、人事、財務基盤がどうしても必要になるのです。
そして良質のサービスには相応のコストがかかります。いかにコストを圧縮していくのか。しかし、同時に社会に必要なものには積極的に投資を行っていくのか。
しかも、NPOには、思いをもった人々がそこに集まっています。お金やポジションだけでは、簡単に、人は動きません。
NPOの経営とは「戦い」です。
岡本さんが歩まれたこれらの整備プロセスは、平坦であったというわけではなく、まことに起伏とコンフリクトにとみ、喜怒哀楽にとむものであったことは想像に難くありません。
組織、人事、財務のルールをつくりあげていくということは、そこに相応のコンフリクトが生じることを覚悟しないわけにはいきません。
それを「2足のわらじ」というポジションからなさるのは、本当に大変なことではなかったと思われます。本当にお疲れ様でした。
僕自身も、15人以下の小さな研究部門ですが、部門長として組織、財務、人事、総務を担当しています。やりがいの背後にある、言い表しようのない葛藤と孤独が、敢えてそうせずとも、目に浮かんでしまうのです。
岡本さんが苦労なさりつくられた仕組みは、おそらくは1年ー2年という短期スパンでは動き続けるものと思われます。これらが鶴賀さんに引き継がれ、ぜひ、今後、よりよく発展させていただきたいと考えています。
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カタリバは、今、「大きな転機」にあると思います。
カタリバは、従来のカタリバ事業を、様々な外部の企業を含め再興しながら、同時に行政とタッグを組み、様々な拠点を全国に展開する組織に発展しつつあります。
この事業規模拡大に際しましては、理事会で再三にわたって、僕は同じ事を指摘させて頂きました。
カタリバのルーツを大事にすること
そして
カタリバが何をめざす組織であるのか
の対話を必ずメンバーが続けていくこと
たまに来て偉そうなことをいう、なんちゃって「理事」ですが、それが、いわば社外取締役として、社外から客観的に助言できるせめてものフィードバックであった、と信じています。
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幸い、今村久美さんや岡本さんら、中心的なメンバーの方々は、これらのフィードバックを受け止めて下さり、
カタリバが今後数年で何をめざすのか?
という組織レベルのミッション、ビジョンに関しては、かなり明確なものができあがってきました。
これらに関しては、引き続き、メンバーとの対話を続けていって頂きたいと考えています。
しかし、今後のカタリバの課題は、組織のビジョン確定をうけて、事業ごと、セグメントごとに、事業レベル、セグメントレベルのミッション、ビジョンを明確にしていくことだと思います。
カタリバの組織としてのミッションに「同期」しつつ、
各事業部間には「明確な違い」を明らかにしていくこと
そして
社会には、カタリバならではの「付加価値」を提供すること
この3点をすべて両立するビジョン、ミッションをさらに再定義していっていただきたいと感じます。
これが事業部ごと、セグメントごとに徹底的に対話頂きたいことです。
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せんだっての理事会で僕は、ある事業部の方々に、
「今の事業をやりつづけ、3年後に、事業に区切りがつきます。そして、あなたが、その事業についての、本を書くとします。その本のタイトルをあなたはどうつけますか?」
とお話をしました。
タイトルを何と付けるか?
そこには、どんな挿絵や写真が入るのか?
どんな目次構成なのか?
何がこの本のうりなのか?
何を社会に訴えかける本なのか?
本を書くのだとしたら、これらすべてにオリジナリティやビジョンが求められます。
僕がみなさんに明確にしていただきたいのは、そういうことです。
厳しい言い方だったかもしれませんが、そうしなければ、
「事業の中で行った行動を羅列したリスト」を、3年後に、提出することになりますよ・・・
と申し上げました。
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これはマネジメントの世界では、ドゥアブル発想(Doalble)、デリバラブル発想(Deliverable)という2つの思考法としてよく問題にされます。
Doalble(ドゥアブル)、Deliverable(デリバラブル)という言葉は、こういういみです。
ワンワードで述べてしまえば、
Doable(ドゥアブル)とは「今、あなたがやっていること」(行動項目)
一方、
Deliverable(デリバラブル)とは「あなたがやっていることで、誰かに何らかの価値提供を行えたか」ということ」(提供価値)
ということになります。
これら「2つの視座」は、似ているようで全く異なります。
「Doable(ドゥアブル)視点」では「今やっていること」をひたすらリスト化すればいいのに対して、「Deliverable(デリバラブル)視点」では、それが「誰の何の役にたっているか、どんなお届け物をしているか」を考えなくてはなりません。
たとえば、やや自虐的になりますが、大学教員の場合、「Doable(ドゥアブル)視点」で、やっていることを列挙し居ていくと、まことに数多い行動項目をあげる職種のひとつであるということです。
「授業をやっています」
「論文書いてます」
「書類書いてます」
「調査やっています」
「委員会にでています」
「審議会にでています」
・
・
・
これらが「ドゥアブル視点」、すなわち「行動項目」です。
しかし、一方、デリバラブル視点にたつと・・・「おれは、すごいデリバラブル人材だもんねー」と自信を持てる人も数多くいるでしょうけれど、口籠もってしまう人も少なくないことが予想されます。
いろいろやっている、それぞれの雑事が、いったい、「誰の何の役にたっているのか」、それらが「誰に付加価値をお届けしているのか」ということになると、まことに心許ないものがあるのは、僕だけ?でしょうか。
たしかに論文は書いた・・・でも、誰が、これ読むんだろう?
たしかに書類は書いた・・・でも、これで誰が喜ぶんだろう?
たしかに委員会には出た・・・しかし、これで何が変わるんだろう?
・
・
・
あべし(泣)
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このように、ドゥアブルとデリバラブルという言葉は、自分の仕事のあり方に、時に「深い内省」をもたらしてくれる概念のひとつです。
「四六時中、デリバラブル視点にたっている」と、ちょっとブルーになってしまうところもあるのですが、時には、折りに触れて、人は「デリバラブル視点」で、自分の仕事や周囲を見直すことも、大切なことかもしれません。
なぜなら、人は、日常の雑事にまみれているあいだに、ほおっておけば、おのずから「ドゥアブル視点」に陥っていくからです。
わたしは、こんなにやっている
わたしは、こんなに働いている
わたしは、こんなに動いている
日常の雑事にまみれている間に、ついつい、こうした行動項目をあげつらい、披露したくなるものです。
「わたしはこんなにやっている」。「こんなにやっているのに」「こんなに働いているのに」
しかし、そこで見落とされるのは、
それで誰に付加価値をお届けしているのか?
であり
それで何が変わるのか?
ということです。そして、そのために、どのような工夫をしてきたか?ということです。
人生はまことに短い。
その一瞬一瞬で、誰に何をもたらしてきたのか、がデリバラブル発想です。
▼
理事会は年に数回の時間です。
ぜひ、その際には、ふだんは考えない視点から、ものを考えるきっかけにしていただきたいと考えております。
私たちは何者なのか?
私たちは、どうありたいのか?
私たちは、何をめざしているのか?
私たちは、誰に、どんな価値をお届けしているのか?
そうした青臭くて、面倒くさい対話から、カタリバのメンバーは「逃げない」で欲しいと思います。
語ることを他人に提供する側が、語ることから逃げるな。
これが、僕がぜひ、みなさんにお願いしたいことです。
もうひとつ問題になっている経営課題の「拠点化」も、おそらくは、その対話の中に、答えがあるのではないでしょうか。
「複数拠点化」問題は、実は、単純に事業を増やしました、というだけではなく、「カタリバのルーツに深く絡み合った問題」であると思っています。だからこそ、理事会では「そちらの方向に本当にいくのか、どうかをきっちり決めて下さい」と再三にわたって指摘させていただきました。
そのことを岡本さんは、最後の挨拶のなかで、ふたたび触れておられました。そのことが、カタリバのルーツやアイデンティティ、そしてカタリバらしい仕事の仕方に再定義を迫る「本質的課題」であることを、何名の方が、あの瞬間、認識なさっていたでしょうか。岡本さんの最後のご挨拶は、きっと多くのメンバーに伝わっていたのではないか、と願っています。
コンボは、今村久美さんのリーダーシップのもとに、鶴賀さん、今村亮さんらが、ぜひ、こうした対話を組織全体に起こして頂きたいと思っております。
理事がいうのはなんですが、理事のひとりとしても、大人のひとりとしても、カタリバを応援しています。
心ゆくまで暴れなさいな!
そして人生はつづく
追伸.
カタリバは、月々1000円からなっていただける個人サポーターを募集しております。すでに数千人を超える方々から、応募をいただいております。カタリバは、「ナナメの関係」「対話」をキーワードに、安定的で良質な学習空間、学習サービス、キャリア教育を提供しています。そんなカタリバの活動を応援いただけますよう、よろしくお願いいたします。
カタリバ、個人サポータを募集させていただいております!
https://www.katariba.or.jp/sprit/?gclid=COLikN2yyc4CFQqZvAodxvIKxA
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