NAKAHARA-LAB.net

2016.4.13 05:48/ Jun

アルバイト・パート人材の採用は「選んでいるつもり」で、逆に「選ばれている」!?

 去年から、中原研究室はテンプホールディングス株式会社さんと「アルバイト・パート人材の採用・育成」に関する共同研究を開始しています。
 このプロジェクトは、「未曾有の人手不足時代」に突入した現在、いかにアルバイト・パートの人材を新たに確保して、育成していくかを、実証的に研究するものです。
 共同研究は2つのフェイズにわかれています。
 第一の調査フェイズでは、小売・運輸・外食などの大手7社、従業員規模50万人を超える企業へのご参画をいただき、
 1)求職者を対象にした調査
 2)各企業の離職者に対する調査
 3)各店舗の職場・マネジメントの実態を明らかにする調査
 などを通して、現在のアルバイト・パート人材の働く職場がどのようになっているかを「見える化」することをめざします。「見える化」できないものは「打ち手」を選びようがありません。ですので、最も重要なのは、このフェイズです。
  ▼
 第二フェイズは、打ち手の「開発フェイズ」です。
「見える化」できたはよいのだけれども、で、アンタ、どうするの?(笑)
 という実務のニーズに答えるために、こちらのツールでは、研修や各種の情報環境など、ツールを開発し、実証実験を行っていく予定です。
 こちらのプロジェクトをともに推進しているのは、テンプグループの皆様、グループリーダーをつとめるテンプHD(HITO総研)の渋谷和久さん、テンプスタッフラーニングの岩崎真也さん、テンプHDの稲田勇一さん、北本裕史さん、HITO総研の小林祐児さん、井上史実子さん、そして、田中聡さんと中原が研究室から参画しています。
 現在、分析職人の小林さんのご尽力で、第一の調査フェイズを終えました(お疲れ様です)。
 こちらの研究に参画しているのは、小売・運輸・外食などの大手7社、従業員規模はすべてあわせますと50万人を超えます(五三角、まことにありがとうございます)。
 現在、研究メンバーが調査でわかったことを、各社にフィードバックさせていただいますが、都合のつくところには僕も参画して、議論をさせていただいております。
  ▼
 今回、研究をはじめて得られたファインディングス(発見事実)は、いくつもありますが、興味深いもののひとつに「面接のプロセスに関する知見」があります。
 
 これは、会社によってもこれは数字が異なりますが(詳細は秋頃でてくる書籍・レポート・イベントなどでご覧下さい)、
 1.人はアルバイトを選ぶ際に、その「職場」を下見している
 2.面接にくる人の中には、複数の会社に同時に履歴書をだしている人も少なくない
 3.面接での対応や職場の様子からネガティブな印象をもった場合、
   面接で合格しても辞退する人が少なくない
 というファインディングスは、個人的に非常に興味深いことでした。
 20年前になって恐縮なのですけれども、僕自身のアルバイトの経験からすると、これらは全く逆で
 1.アルバイト先を下見したことはない
 2.履歴書は1社に出して面接で受ける
 3.面接で合格したら、当然働くものだと思っていた
 ものだと思っていたからです。
 えっ、僕だけ??。
 
 人手不足という背景もさらに後押ししているせいもあるんでしょうけれど、現在、アルバイト・パート人材の採用とは「選んでいるつもり」が、逆に「選ばれている」という状況が生まれている気がいたします。
 しかし、面談をする側は、「かつての感覚」が、まだ残っています。
 自分は「選ぶ方」であり、よもや「選ばれている」とは思っていない。
 
 そして求職者が働き口を選ぶときのポイントは、「選んでいると思っている店長等の対応」であり、「そうした店長が創り出す職場の現状」なのです。
 「職場学習論」の著者としては、やっぱりそうだよね、という感じです。
 ほら、職場でしょ(笑)。
 このあたり、非常に興味深いことですね。
 ▼
 アルバイト・パート人材の採用・育成研究は、今年度中に、一区切りがつくものと思われます。
 研究成果をまとめる段では、ダイヤモンド社の藤田さん、ライターの井上佐保子さんにも参画頂いており、今年の秋頃に、ダイヤモンド社さんから「アルバイト・パートの人材育成」という書籍を出版させて頂く予定です。どうぞお楽しみに!
 人手不足時代を背景に、アルバイト・パート人材の人材育成を、
「よりよいかたち」にするお手伝いができればと思っております。
 そして人生はつづく
 
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