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2016.4.7 06:14/ Jun

上司は「部下のネガティブ感情」をいかにマネジメントすればいいのか?

 昨日は大学院中原ゼミ、2016年度のスタートでした。
 僕のゼミでは、毎回のごとく大学院生の皆さんに研究の進捗報告を伺うほか、英語の文献(実証研究)を読むことにしています。昨日の英語文献は、伊勢坊綾・ゼミ長によるLittle and Williams(2016)の研究報告でした(お疲れ様です!)。
 Little and Williams(2016)は
 
 リーダーは「部下の感情」をいかにマネジメントするか?
 ということをテーマにした論文です。The leadership quarterly. Vol.27に所収されている論文になりますね。
 
  ▼
 伊勢坊さんの報告を引用しつつ、同論文の要旨をかいつまんで説明させていただくと、リーダーは、自分の部下のネガティブな感情をマネージ(やりくり)するとき、4つの戦略(IEM 戦略:Interpersonal emotion management strategy)があるのだといいます(Williams、2007)。
 部下がしんどそうなときに
 それが下記の4つです。
1.状況変化(Situation modification)戦略
 部下が持っているネガティブな感情の原因そのものを取り除く! すごい!
2.注意再配置(Attention Deployment)
 注意をそらす。原因は何一つかわっていないのだけれども、注意をそこに向けさせないようにする。「屁を香水でごまかす」みたいなもんでしょうか。ちょっと違うね・・・育ちの悪いのがバレる。「既存の痛みを、新たな痛みで忘れさせる?」・・・とにかく注意をそらす。
3.認知変化(Cognitive change)
 部下のネガティブな感情を誘発する「認知」そのものを変化させる。原因は何一つかわっていないのだけれども、部下に「状況の再解釈」を促し、ネガティブな感情を持たないようにするということでしょうか。
4.感情調整(Modulating the emotional response : 自分で管理しなよという)
 「自分で感情くらい管理しなよ」という風に求める
 の4つです。
 論文では、これらリーダーが行っている感情マネジメント戦略と、上司部下の関係性(Leader Member Exchange)、そして、組織市民行動(Organizational Citizenship Behavior)の関係を実証的にさぐっておりました。専門的に興味があられる方は、詳細は論文の方をご覧下さい。
  ▼
 個人的には興味深いなと思ったのは、論文そのものというよりも、この4つの戦略です。
「この4つの戦略は、あるよなー、ある、ある」
 と思ってしまいました。
 皆さんはいかがですか?
 僕の場合、個人的印象深いのは「1.状況変化」と「3.認知変化」です。
 これはマネジメントにだけ当てはまることではないのですが、僕には「決めていること」があります。
 
 僕が、いつも困難にぶつかったときには、
 冷静に考えて、その困難は
 自分の力で「変えられる」ものなのか?
 自分の力では「変えられない」ものなのか?
 
 をまずは考えるという「思考の癖」です。
 ま、あたりまえっちゃ、アタリマエなのですが、僕は、それをいったん「整理」してから悩むことに決めているのです。
 これを上記の4つの感情戦略にひきつけて考えますと、「1.状況変化」とは、「自分の力で変えられるもの」に対して、その原因を思い切って対処するというようなものでしょう。
 しかし、世の中には、自分の力で変えられるものはそう多くはありません。
 そこで採用されるのが「3.認知変化」なのかなと思います。多くの人々がそうであるように「自分では変えられないもの」に出会った時には、僕は、「3.認知変化」をとるような気がします。
 これは「認知行動療法」的な説明になりうるのかもしれませんが、
 ある人が、「ある現象」に相対して、「心理的にネガティブな感情」をもっているとき、その「現象」そのものが、「心理的にシンドイ状況」をもたらしているのではない

 という考え方があります。
 そうではなく、
 ある人が、「ある現象」に相対して、「心理的にネガティブな感情」をもっているとき、その「現象」そのものというよりも、その「現象の解釈」と「それによって構築された意味」そのものが「心理的にシンドイ状況」をもたらしている

 と考えるのです。
 そうであるならば、とるべき戦略は「3.認知変化」ということになるでしょう。
 ただし、この場合、問題はなにひとつ解決していないので、時には「権力の温存」や「問題の隠蔽」につながってしまうリスクもゼロではないのですが・・・。
 神よ
 変えることのできるものについて
 それを変えるだけの勇気を
 われらに与えたまえ
 変えることのできないものについては
 それを受け入れるだけの冷静さを与えたまえ
 そして
 変えることのできるものと
 変えることのできないものとを
 識別する智慧を与えたまえ
 (ラインホルト・ニーバーの祈り・全文訳)
  ▼
 今日は、上司が部下のネガティブな感情に出会ったときに採用する4つの戦略のお話をさせていただきました。
 皆さんはいかがでしょうか?
 オフィスでは、今日も、明日も、明後日も、様々な出来事が起こります。
 あなたが部下の感情、そして自己の感情をマネージしようとするとき、どんな戦略をとっておられますか?
 あなたの上司は、あなたがネガティブな感情をもっているとき、どんな戦略をとってきますか?
 
 そして人生はつづく

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