2016.3.29 06:33/ Jun
エグゼクティブ経営層は「毒性感情」を内に抱えてモヤモヤしている!?
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先だって、関根さん(ラーンウェル代表・中原研OB)、舘野さん(立教大学)、斎藤さん(中原研M2)らが中心になって、ここ最近のコーチングに関する実証研究(英語論文)をよむ研究会が、東大で3か月にわたって開催されました。
先だっての研究会は、その研究会の最終会。
こちらの研究会には、20名程度の、志ある実務家・研究者の方々にご参加いただきました。皆様、本当にお疲れ様でした。心より感謝をいたします。
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先だっての研究会では、様々な論文を読みましたが、個人的に興味深い概念だなと思ったのは、冒頭に申し上げた「経営層が抱える毒性感情(emotional toxic)」です(笑)(市ノ瀬さんによるご報告、感謝!)。
ここで毒性感情とは、
エグゼテクティブが立場上抱えてしまいがちな仕事上の負のストレス、心理的葛藤
とお考えいただいてもOKかと思います。
経営層は、アクションオリエンティッドな存在であり、多忙です。
しかし、徹底的に「行為!行為!行為!」な前のめりピーポーであるからこそ、多忙であるからこそ、本来は、内省を通じて、倫理や道徳観に支えられたリーダーシップを涵養することが重要になります。
また、経営層は孤独であり、人に弱みを見せられる存在ではありません。
会社の中で、トップである自分が
「うーん、ぼく、今期の戦略に自信ないんだよね」
「あのさ、うちの会社、今の状況、イマイチじゃね」
と言ってしまったが最後。周囲からの「袋だたきアワー」は目に見えています(泣)。
経営陣は、会社組織のなかで、決して「弱み」を見せたり、自分をさらけ出したりはできないものです。
かくして、経営陣は、先ほどの毒性感情(Emotional Toxic)を抱えることになります。
かくして、経営陣には、内省を促し、かつ、こうした毒性感情を中和するような「深い対人的な対話(Deep interpersonal communication)が重要になります。
モヤモヤしている心、仕事上抱えてしまった心理的葛藤をそのままにしておいては、意志決定を誤ったりしてしまう可能性が高くなるからです。
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僕は仕事上、経営層の方、次世代経営層にもお会いすることが少なくありません。以前、志があり、かつ将来有望な次世代経営層の方にお逢いしたときに、こんな一言を伺ったことがあります。
ポジションがあがるとですね
不安が「べき乗」にあがりますよ。
思うに、この方のかかえておられる「べき乗にあがりゆく不安」は「毒性感情」のひとつとしても解釈が可能です。
そして、この「毒性感情」はいくつかの次元が重なり合ってでてくるのだと思います。
容易に想像できるのは、成果へのプレッシャーや責任感の重さ。
そして、将来のキャリア上の不安。
人は組織のなかで、上昇移動を繰り返してきますと、将来、ここからあがっていける「階段の数」も、1段、ないしは2段、とかなり限られてきます。
執行役員まであがってしまえば、あとは役員、副社長、社長くらいしか、ポストがないでしょう。そして、そこには、多くの有象無象・海千山千の競争相手がいます。事業統括部長、執行役員クラスとなると、そうした「毒性感情」は、とてつもないものがあるでしょう。
しかも、このクラスになると、日々の仕事もかなりモヤモヤしてくるものが増えてきます。
自分のところまであがってくる案件は、白黒はっきりつかない、相当グレーなものばかりです。だからこそ、トップの意志決定が必要になるからです。
白黒はっきりつくものは「課長レベル」で処理されているので、ここにあがってくるものは、「限りなくブラックに近いグレー」でしょうか。あるいは、「限りなく大炎上に近い炎上」かな(笑)。あるいは、「限りなくつづく謝罪モード」かな。
かくして、エグゼクティブ経営陣は「毒性感情」に見舞われます。
モヤモヤモヤ。
はやく、誰か話をきいてあげて、スッキリさせてあげなきゃね。
あんまりモヤモヤしていると、シンドクなっちゃうよ。
モヤモヤモヤ。
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今日はエグゼクティブ経営陣の抱えやすい毒性感情について書きました。
毒性感情の処理については、さまざまな手法があるかとは思いますが、もっとも基本になるのは、
エグゼクティブ経営陣だからこそ「孤独」にしない
ということに尽きるのだと思います。
まぁ、トップともあろう人ならば、自ら「孤独」には陥らないように、自分で自分の人的ネットワークを整備することが求められるのかもしれませんね。
専門家を頼むで有れば、欧米の場合、日本よりも彼らに対するコーチングサービスが発達しています。
欧米の専門のコーチングファームには、エグゼクティブコーチングの資質があるコーチが存在しており、ある文献によりますと、60名中45名が博士号を取得しているといいます(Judge and Cowell 1997)(水野さんによる報告、感謝!)。
まぁ、専門家を頼まなくても、身近に相談にのってくれる他者がひとりでもいてくれれば、事態は変わるのかもしれませんね。
日本も、次第に、経営陣の人材流動性が高まりつつあります。
いずれにしても、経営層の「毒性感情」をともに支える人的ネットワークが、今後の人材開発の世界にはさらに求められるようになるんだろうな、と思います。
そして人生はつづく
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