2016.1.28 06:07/ Jun
エリザベス・キューブラーロスという研究者がいます。1960年代、末期患者、数百人にインタビューを試み、
人が死にゆくプロセスとはどのようなものなのか?
を明らかにしようとした研究者です。
僕は医療には門外漢ですが、ターミナルケアなどに携わる方にとっては、彼女のかいた著書「死の瞬間」は、よく知られているのだそうです。
(朝っぱらから、こんな話題ですみません)
聞くところによると、死を追い続けたキューブラーロスは、後年、スピリチュアルなどの領域にも進出したそうで、評価は分かれる人なのだそうですが、いずれにしても、「死の瞬間」は素晴らしい本だと思います。
最近、ある研究の下準備をしている際に、ふと、再読するきっかけを得ました。よい本は何度読んでも、新たな発見があり、味わい深いものです。
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キューブラロスが、著書「死の瞬間」において、数百人のインタビューをして明らかにしたのは、下記のような「死の受容のプロセス」でした。
人が、自らの死を受け入れることには「5つの段階」があり、それは下記のようなプロセスをたどるのだそうです。
1.否認・孤立
自分が死を迎えるということが、何かの間違いだと思う段階。「これは他の人のカルテを読み間違ったのではないか」と思ったりすることです。
2.怒り
なぜ死を迎えるのが自分なのか、と憤りをみせる段階。「なぜ死にいくのは他ならぬ自分なのか」ということに怒りを覚える段階です。
3.とりひき
何かにすがろうとする段階。何とか死なずにすむように、様々な物事に働きかける段階
4.抑鬱
行為することを失い、ふさぎこむ段階
5.受容
死ぬことを受け入れる段階。
キューブラロスによれば、このように死とは「特定の瞬間」「絶命の瞬間」ではありません。むしろ、それは「プロセス」です。人は死にゆくとき、「否認・孤立」「怒り」「とりひき」「抑鬱」「受容」という5つのプロセスをへるのだといいます。死とは「Death:特定の瞬間」ではなく、「Dying(死に行くプロセス)」なのです。
キューブラーロスに関しては、後年の方向転換に加えて、この「段階説の妥当性」をめぐっても、様々な批判があるそうです。たとえば、「段階説というが、実際の死の受容のプロセスは、こんな風に線形的ではない」といった批判です。
しかし、多くの段階説とよばれるものは、いつもそこに例外が生じ、反例が出されることが宿命です。段階説を見たら、「例外だってある」「そんな線形的ではない」と批判しておけば、まず「当たる」のではないでしょうか!?。ですので、僕自身は、門外漢ながら、そういう批判にピンときません。キューブラロスの評価は、そこじゃないんじゃない、と思うのです。
今回この本を再読するにあたり、前回とは異なるかたちで、僕の興味を引いたのは、この問いでした。
なぜ末期患者は、キューブラロスに、死を語ったのか?
です。残り少ない末期患者が、リサーチという体力も気力も消耗するような、かつ自分にとってはほとんどメリットを感じないものを受け入れ、死にゆく自分のありようを語ったのか、ということがもっとも印象深いことでした。
そして、キューブラロスの業績とは、
残り時間の少ない末期患者から、多くの声をひきだし、死とは「死を受容していく長いプロセス」であって「特定の瞬間」ではないことを明らかにしたことではないかと考えました。
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「なぜ末期患者は、キューブラロスに、死を語ったのか?」
この問いに対して、キューブラロスは、こんな言葉を残しています。
「患者達はあとに何かを残して死にたがっている。ささやかな贈り物をおくって、不死を幻想できるようなものを残して死にたいのだ」
この「何かを残して死にたい」という境地は、今の僕にはまだピンときません。しかし、おそらくは、患者達は、残り少ない自分の時間のうち、いくばくかを、「後世に対するメッセージ」を「残すこと」にあてました。自分の肉体や精神は朽ち果てたとしても、メッセージやアイデアは、活字になり、多くの人に読まれるようになるだろう。「死にゆく人々」が、そこに「不死の幻想」を感じるとき、このインタビューが可能になった、ということが、もっとも印象的なことでした。
あなたは「死んでいった人々」からの「不死のメッセージ」をどのように読みましたか?
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「何かを残して死にたい」
僕はさすがにまだこの境地には至っていません。しかし、このセンテンスの前半部「何かを残したい」ならば、最近、よく感じるようになってきました。
もっと若い頃は「自分に何ができるだろうか」ということを考えていたのですが、最近は「自分に何が残せるだろうか」を考えます。
残念ながら、僕には「あまり残せるもの」はなさそうなのですが(笑)、自らが「死を受容する5つの段階」に至るまでには、何かを残せるよう、精進したいものです。
そして人生はつづく
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