2015.12.25 06:18/ Jun
NAKAHARA-LAB.NETブログは、12/26から1/6までお休みです。
あわてない、あわてない。一休み、一休み。みなさま、よいお年を!
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「理論にあてはまる実践」が「よい実践」なのか?
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これは「実践と理論」の関係を考えるうえで、「重要な岐路にたつ問い」であると僕は思います。
とかく「理論家」は、「特定の理論で現象を完全に説明しうる実践」を「よき実践」と考えがちです。なぜなら、それは「セオリーどおり」であり、理論家としては「スカッと爽快!」気持ちがよいからです(笑)。
しかし、たまたま物事がそのように「よい方向」に進めば、いいのですが、この志向が行きすぎると、どんな実践現場でも、どんなリアリティが生じていても、「セオリーどおり」に物事の解釈や、戦略立案を行ってしまいがちです。
現実をあまり見ようとせずに、セオリーを100%現場に適応しようとするのです。
もちろん、それで物事が好転すればいいのですが、現実は、そうは甘くはありません。
現場とは常に移ろいやすいもので、しかも、「理論の枠組みをはみだしたリアリティ」「理論では想定できない暗黒面?」が生じているものです(笑)。
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現在、一緒に本を書いているヤフー株式会社の本間さんは、組織開発の実践とリアルを語る授業において、このことの問題を指摘しました。本間さんが憂慮したのは、実務家は、理論と実践の関係をいかに考えるのか、ということです。
そのうえで、本間さんは、
「我々は、よいOD選手権をしているわけじゃない!」
とおっしゃいました。
おそらく、このとき本間さんがおっしゃりたかったことは、
「ODの現場は、理論が想定していないようなリアリティが生じる。理論が想定しているように、理論通りにキチンとやることでポイントを稼ぐようなODは、OD選手権のようなものである」
ということではないかと推察します。
まことに示唆にとむ言葉です。
本間さんに言葉に着想をえて、ここでは、言葉を替えて申し上げますと、現場を直視せずに、理論をそのまま想定通りに人材開発を進めようとすると、
「よい人材開発の選手権に参加してしまうこと」
になってしまうということでしょう。
現場を直視せずに、すなわち理論が想定しているように物事をすすめてポイントを稼ぐような実践をしてしまうということになってしまうということです。
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とはいえ、それでは理論は必要はないのでしょうか。ここがややこしいところなのですが、僕は、やはり「理論」は必要だと思います。
現場が移ろいやすく、しかも常に変化するようなものであるからこそ、最初のとっかかりで何からはじめたらわからないときに「ヒント」になるもの、何をどうしてよいかわからないときに「ヒント」にできる理論が必要なのではないでしょうか。
これはだいぶ僕の主観が入りますが、僕の研究領域において、理論は、現場で起こりうることの30%程度は、そこそこ想定して構築されていると思います(30の部分は全くの主観です)。
これは、もっと平たく申し上げれば、
理論を知っていれば、「派手ゴケ」することはない
ということになります。30%は説明しうるように理論が構築されているのですから、
理論を知っていれば、「アチャパーと目を覆いたくなるような大失敗」をする可能性はかなり低くなる
ものと思われます。
しかし、理論は「完全に現場を予測」できないし、ましてや「目をみはるようなものすごい実践」をつくることはできません。
30%より先の70%は、現場のリアリティをつぶさに観察し、いかに創意工夫をなすか、いかに人を巻き込むか、というところにかかってきます。
理論を知っていれば、先人の経験と苦労の「上」からーすなわち、先人の「肩」の上にたって、物事を勧めることができます。先人の「肩の上」にたって、残りの70%をじっくり構想できるのです。
だからこそ、理論は万能ではないけれども、必要だということになります。
ちなみに、先ほど「我々は、OD選手権をしているわけじゃない!」とおっしゃった本間さんも、おそらく、これに同意見?類するご意見だと思われます。
いくつかの大学院に通い、理論に精通している彼だからこそ、先ほどの言葉が出るのだと思うのです。
理論に並々ならぬ関心をもつ彼だからこそ、理論には何が出来て何ができないかをしっていらっしゃるのではないかと思います(こんど聞いておきますね・・・笑)
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今日は理論と実践の関係について書きました。これは現場や領域によっても違うので、一概にはいえません。
賢明なわたしたちは、理論を「不必要」とみなす反知性主義に陥ることなく、一方で理論を「万能」とみなす「理論選手権」にも陥らず、理論とよい関係を保ちたいものです。
あなたにとって「理論」とは何ですか?
今日は金曜、よい週末を!
そして人生はつづく
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