2015.9.4 06:24/ Jun
「採用」と「育成」の関係というのは、本当は「深くつながっているべきものであるはず」なのに、ともすれば、「断絶」していることの方が多いものです。
「どういう人を採用していくか(採用)」ということと「その人にどのように育ってもらうか?(育成)」は、本来、「組織の目標達成のためには、どのような人材が必要なのか?」という「究極のゴール」のもとに、本来、一貫しているはずでしょう(専門用語では内的整合性が高いといいます)。
でも、現状、多くの組織では、これら2つの機能は、様々な経緯や機能上の制約から、それぞれに別々に動くことが多く、連携するのはなかなか難しいのが現状です。
しかし、今日のブログ記事は、その「断絶」を嘆いたり、「統合せい」と吠えたいわけでは「1ミリ」もありません。
むしろ「少し別の角度」から問いをズラし、「採用」と「育成」の関係を考えてみたいということです。
別の角度と申しますのは、この問いです。
すなわち、
「個人の資質が数あるなかで、採用後に育成をあてても、なかなか変化しにくい資質とは何か?」
ということです。
逆にいいますと、
「個人の資質が数あるなかで、採用後にはなかなか変わらないから、だからこそ、採用段階でしっかりと、その資質があるかないかを見極めなければならないのは何か?」
という問いです。
これら一連の問いに対して、あなたの組織では、どのように答えますでしょうか?
▼
先だって、都内某所某機会で、横浜国立大学の服部泰宏先生にご出講いただき、採用研究の最前線を伺う機会がございました(服部先生には心より感謝いたします。ありがとうございました!)。
服部先生は、講義のなかでBradfordらのタイポロジーを引用し、「個人の資質の中で比較的変わりやすいもの」と、「変わりにくいもの」に関して、下記のBradfordらの分類をご紹介しておられました。
■変わりやすいもの
・リスク志向性
・知識や技術
・教育の水準
・仕事経験
・自己に対する認識
・コミュニケーション
・第一印象
・顧客志向
・コーチング能力
・目標設定
・エンパワーメント
■変わることはかわるが、変わりにくいもの
・判断能力
・戦略的スキル
・ストレスマネジメント
・適応力
・傾聴
・チームプレー
・交渉スキル
・チームビルディング
・変革のリーダーシップ
・コンフリクトマネジメント
■変わりにくいもの
・知能
・創造性
・概念的能力
・部下の鼓舞
・エネルギー
・情熱
・野心
・粘り強さ
なるほど、こうした分類には、さまざまな異論はありえましょうが、このように整理していくと、非常にいろいろ考えさせられるものがあります。
ちなみにこれをざっと見て、まず僕が思ったのは、多くの企業が「採用の際に求める資質」である「コミュニケーション能力」というものは、「変わりやすいんだ」ということ。じゃあ、採用で見ている理由って何なんだろう、ということです。
もうひとつは、「創造性」や「概念的能力」という、いわば教育機関、とりわけ高等教育機関で担わなければならないような領域は、やはり企業に入る前なんだよな、ということです。大学は、自信をもって(最近、自信を失っているように見えるのは僕だけですか?)、「抽象的な概念」を取り扱った方がいいと僕は思います。
皆さんはいかが思われますか?
これにゆるく関連して、先だって、某社の人事を統括なさっているHさんに、先日お話を伺った際には、Hさんの組織では、「変わりにくいもの」は「ものごとを徹底する力」である、と考えておられました(貴重なお話をありがとうございます!)。だから採用の際には「これを見る」そうです。
そういえば、先だってお逢いした某社の営業役員の方は、
「やらなきゃならないこと、ついつい、先延ばししちゃう傾向」
だけは、いくら口を酸っぱくしても変わらないよ、とおっしゃっていました。含蓄のある言葉です(感謝です)。
今、ある講座を受講してくださっている女性のHさんは、
「採用後に何とかできるんで、うちでは、採用時には、コミュニケーション能力は見ません」
とおっしゃられていました(貴重な情報を感謝です!)。
皆さんの組織では、いかがでしょうか?
▼
さて、今日は「採用」と「育成」のことについて書きました。
「何が変わりやすくて(育成しやすくて)」、「何が育成しにくいか」ということの要素は、諸説もろもろ様々なあり、統一的な見解がいまだあるというわけではないように思います。
しかしもっとも重要なことは、このように少し別の角度からの問いを投げかけ、組織としては人事としては、この問題をどのように考えるのかを話し合うことではないかと思います。願わくば「自社にもっともフィットしたタイポロジー(分類)」ができれば、よいのかもしれません。
「採用」と「育成」を連動させよう!
と声高に主張しても、別々の人事プロセスとして動きがちな両者が密接に絡み合うことはなかなかないものです。
しかし、そこは一計。問いをズラして、こうした「そもそもの議論」から初めて見ることも一計かもしれません。
そして人生はつづく
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