2015.8.27 06:04/ Jun
「ひとの複雑な振る舞い」をサイエンスで解明しようとするときを、それはいとも簡単に「サイエンス」を「超えて」しまうものです。
サイエンスのその先に広がる「いまだ闇の世界」を「アート(技芸)」と呼んでも、「クラフト(職人仕事)」と読んでも、どちらでもかまいません。「人間がいかに振る舞うか」という問題は、どうしても「論理」だけでは説明がつかないことがあります。多くは「闇の中」。
思うに、研究者といわれる人は、そのことをよく「自覚」しているのではないかと推察します。
といいましょうか、僕は「科学者」を「科学の制約」を深く「認識」している人であると、定義します。
どんなモデルを構築しえたとしても、複雑な人の振る舞いを、今ある方法で、今把握している要因だけで、説明できるわけではありません。たとえば、その説明率は、かなり「かっこ」をつけて多く見積もっても3割とか4割。その残りの6割から7割くらいは、いまだ「闇の中」。現在のやり方で、現在把握している要因では、説明がつかないことの方が多いのです。
(だから、アートも、クラフトも、非サイエンス的なるものを僕は否定は一切しません。)
だから、時に、僕は「希望」を失いかけます。
日々、どんなに頑張っても、なかなかクリアな全体像がつかめるわけではありません。
研究の世界では、努力しても結果が得られないことの方がほとんどです。
さらに追い打ちをかけるのは「オリジナリティ」の壁です。
研究をすれば、いちおう、それなりの結果がでてきます。しかし、一般に分析をしても出てくるのは、「既知のこと」であったり、「常識」ばかり。「目を見張るようなアイオープナーな結果」など、1000回やって1回でるかでないかです。逆に、そういうものに一生に一度出会えるのは、幸せなかもしれません
言い方は難しいですが、複雑な人の振る舞いに対して、サイエンスが語りうることは「その程度のこと」なのです。
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一方で、僕は「希望」も感じます。
いまだ「闇の中」にある6割には、誰も知らないなんらかの要因やプロセスが存在しているに違いない。それが知りたい。いや、知ることができるに違いない。何かいい方法があれば、そこに接近できるに違いない。僕はそう信じています。
加えて、オリジナリティの壁についてはこう思います。
いつも出てくるのは「常識」ばかりというのは、それが真実なのだから仕方がありません。他人は「面白くない」だの、「常識だの」、いろいろご批評をくださいます。しかし、常識に埋もれながらも、そこには1000回に1回くらいの割合で、「おっ?」と思えるような「非常識」が出てくるに違いない。それが生まれるに違いない。それがいつかわかるに違いない。ご批評をありがたく頂戴しながらも、非常識の可能性にかけるのが科学的態度であると僕は思います。
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これは僕の個人的な信念ですが、
科学者とは、「科学が万能である」と盲信している人ではありません。
むしろ「現在の科学では説明がつかない世界」があることをよく知っている人です。
同時に、科学者とは、それにもかかわらず、「説明がつかない世界」の存在と、そこに広がる「暗闇」に対して「絶望しない人」のことをいいます。
科学者とは「闇の中」に広がるいまだ「非科学的な世界」を一様に否定はしません。しかし、自らはそれを「選択」しない人のことをいいます。
いいかえますと、僕の考える科学者とは
科学と己の限界に、時に打ちひしがれながらも、「希望」を捨てず、「挑戦」する人のことをいいます。
他人の科学者観は把握しておりませんし、僕の関与するべき問題ではありません。
少なくとも僕はそうおもっています。
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今日は人にまつわる領域を「サイエンスすること」についてお話をしました。
おおよそ人に関しては「サイエンスすれば」、常に目を見張るような成果が得られる、と考えるのは「性急」すぎます。
しかし、同時に「人にまつわることにサイエンスなんて意味がない」と諦めることも、また「性急」すぎる気がします。
希望を失いつつも、希望を捨てない
常識にまみれつつも、非常識を探す
負け戦かもしれないけれども、負けない
説明がつかないものを否定せず、自らは選択しない
ひとにまつわるサイエンスのことを考えるとき、いつも「禅問答」のようになってしまいます。
そして人生は続く
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