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2015.5.29 08:42/ Jun

個人の「挑戦」にとって必要なものとは何か?:「腕ポッキリ、背中包丁的環境」の不条理!?

 先だって、玉川大学TAPセンターを授業で訪問させていただき、ほぼ1年ぶり、僕にとっては4度目のアドベンチャー教育を、同センターの難波先生、村井先生、永井先生らのお力添えをえながら経験させていただきました。
 玉川大学TAPセンターは、「アドベンチャー教育の理念と実践法」を研究・実践するセンターです。この場を借りて、まずは御礼申し上げます。
玉川大学TAPセンター
http://tap.tamagawa.ac.jp/
 アドベンチャー教育に関しては、上記の実践事例をご覧頂ければイメージがつきやすいかと思うのですが、ロープ渡りや、集団でのシーソーなどの「アドベンチャー」を通じて、コミュニケーションや集団間の信頼などを考えるきっかけを提供しています。当日、わたしたちもいくつかのアドベンチャー教育を体験させて頂きました。
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 ハイエレメントとよばれるロープコースは、8メートルの高さに渡されたロープの上を歩いたりするコースです。それはそれは高く、男性でも、上にのぼって足がすくんだり、震えてしまう方もいらっしゃいます。
 個人が、そうした「チャレンジ」をするためには、8メートル下で、個人のチャレンジを支える仲間が必要です。ビレイヤーとよばれる役割をもつ人、それを支える人なら、ほぼ5名が、命綱をしっかり保ちながら、個人の挑戦を支えます。そうした人々に「支援されながら」挑戦は可能になります。
  ▼
 こうした関係を説明するために、アドベンチャー教育では、よく3つの心理的ゾーンの話が引用されます。
 詳細は、拙編緒「人事よ、ススメ!」の中でも述べられているので、詳細をお知りになりたい方は、ぜひお読みいただきたいのですが、今、仮に学習者の心理状態を下記の3つにわけるとします。
Doc-2013_04_17 7_25-page-1.png
1.Comfort Zone(快適空間:コンフォートゾーン)
2.Stretch Zone(背伸び空間:ストレッチゾーン)
3.Panic Zone(混乱空間:パニックゾーン)
 の3つです。
 1の「快適空間」とは、文字通り、学習者にとって何のストレスもない空間です。この空間では、学習者は、未知のものに出会うこともありませんし、挑戦もありません。
 裏返して言えば、この空間では「学習」は起こりません。日常のオペレーションやルーティンがそこを支配し、かつ、生活は、昨日のように、かく流れていきます。
 対して2つめの「背伸び空間」というものは、学習者が様々な未知のものに出会い、それへの適応や対処を求められる空間です。
 ここは「ストレッチ」という言葉の示すとおり、学習者には「挑戦」が求められ、かつ、失敗するリスクが生まれます。
 しかし、「挑戦」や「失敗」を裏返して言えば、そこには「学び」があるということです。ですので、この空間は、別名「Growth Zone(成長空間)」「Learning Zone(学習空間)」とよばれています。過剰な失敗を避けるためには、他者の助けを借りることも必要なことかもしれません。この空間の実現には、挑戦と支援の微妙な関係が必要です。
 
 3つめの空間「混乱空間」では、未知のものに出会う頻度、対処の難しさ・複雑さが格段にあがり、学習者はいわばカオスに投げ込まれたもののようです。
 高い不確実性、高い不透明性が眼前には広がっています。そこでは「失敗するリスク」が高すぎて、「恐怖」が支配し、とても、冷静になることはできず、学ぶこともできません。
 さて、上記の概念図は、非常にシンプルな図ですが、この図は、先の「挑戦」と「支援」の関係を如実に物語ります。
 リスクが高すぎては「混乱空間」になってしまい、人は恐怖におののきます。
 とはいえ、低すぎては、つまり「快適」すぎてしまっては、人は日常のルーティンに流されていくだけです。両者ともに、いずれにしても、学ぶことはできません。
 大切なのは、中庸である「成長空間」「背伸び空間」を実現することです。そのためには、挑戦を支える「支援」「心理的安全」をいかに他者の助けを借りて実現するか、ということが問題になります。
 8メートル上空の挑戦は、8メートル下で、それを支えるチームの存在が必要不可欠であるということになります。
 落下してしまったら、腕ポッキリの環境で、人は「挑戦」なんかしません。
 また
 背中に包丁をつきつけられて、てめー、飛び降りなきゃ、ブスリといくぜ、という環境で、人は「挑戦」はしません。
 全力で戦うか、疾走するだけです。
 挑戦とは、要するに、そういうことです。
 ▼
 今日は玉川大学TAPセンターのことを書きつつ、学びとリスク、挑戦と支援について書きました。最後に同センターの先生方、またリスクを恐れず、挑戦してくださった学習者の皆様に、心より感謝をいたします。ありがとうございました。
 そして人生は続く
 
 
 

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