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2014.12.4 08:55/ Jun

駆け出しマネジャーに必要なのは「リーダーシップ」じゃない!?

 マネジャーになったばかりの人に、まず必要なのは「リーダーシップ」じゃない。「それ以前のこと」が、たくさんあるはずだ。
 数年前から、そんな仮説をもって、某社の御協力を得ながら(K課長、感謝です!)、「実務担当者からマネジャーになっていく過程」の研究を、関根さん(研究室OB)、浜屋さん(研究室M1)と、はじめています。拙著「駆け出しマネジャーの成長論」を「上書き保存」?する研究です(小生、どM?)。

 本格的な分析は、まだまだこれからですが、昨日、基礎となるデータの構造を目にしました(お疲れさまです!)。
  ▼
 一般に、多くの「マネジャー本」では、マネジャーになったら「リーダーシップ」が必要だとして、「ビジョン創出」やら、「ネットワーク構築」などを行うべし、とします。
 確かに、そうしたものの重要性は熟知しつつも、マネジャーになったばかりの人には「それ以前に大切なこと」があるな、と僕は思っているのです。
 それを実証データで検証したいというのが、この研究プロジェクトです。
 それでは、「リーダーシップ」以前に必要なものとは何か?
 僕が注目しているのは、マネジャーの行う「現場粘着情報の収集行動」です。
 あまりの「地味さ」に、
 は?
 と「ハニワ顔」になって、満員電車の中で脱糞しそうになった方がいるかもしれませんが、気をつけてくださいね(笑)、社会の目は厳しいものです。
 この話、まことに地道で、地味な話なのですが、「まずは、自分の足と目で現場粘着情報をすくい取る」というのが僕の仮説です。
  ▼
 ここで「現場粘着情報」とは、「現場にぴったりと張り付いている情報で、現場にいかなければわからない情報」のことですね。
 一般に「マネジャーになること」とは「現場から遠くなること」を意味します。昨今は、プレイングマネジャーという言葉もすっかり定着しましたので、必ずしも、綺麗さっぱり分けられるわけではないのですが、それでも、一般的には、マネジャーは「現場を離れ」、現場にこびりついているような情報からは、実務担当者よりは遠くなります。
 しかし、ここで大切なのは、マネジャーが血気盛んに、「ものの本」を読んで、リーダーシップを行使しようとしても、突然行うことは難しいということです。
 だって、課の目標やビジョンを掲げようにも、そうしたビジョンや目標のもとに資源を動員しようと思っても、「判断の素材になるような現場の一次情報」がなければ、「適切な状況判断」ができないでしょう?
 自らの足をつかって、一度は現場を歩く
 部下に同行して、現場を感じる
 場合によっては、部下から学ぶ
 ワンワードでいうと、
 マネジャーは「フィールドワーカー」になる必要があるのです。
 それが言い過ぎならば、自分の職場の現場粘着情報を「フィールドワーカーマインド」をもって探究する姿勢が必要なのかもしれません。
 とかく、自らからは遠くなってしまった「現場粘着情報」をいかに収集するか? 生の声や、現場の感覚をいかにすくい上げるか、そうした行動が必要になります。
 
「適切な判断」のためには「正しい一次情報」が必要です。
「正しい一次情報」がないのにもかかわらず、ビジョンを構築しようとしても、そこでつくられる抽象的概念には「歪み」がでてきます。だって現場を踏まえてないんだもん(笑)。
「正しい一次情報」が得られていないにもかかわらず、ネットワークをつくろうにも、組織的・政治的荒波をくぐり抜けることはできません。だって、現場の利害を見てないんだもん(笑)。
 というわけで、「正しく現場の情報をすくいとること」は、リーダーシップ以前の課題だというのが僕の結論ですが、いかがでしょうか?
 ▼
 こうしたことを考えていると、ちょっと論理はぶっ飛びまくって「股が避けそう」なのですが(?)、僕は、「大学」のことをついつい考えてしまいます。
 一般には「大学で学んでいることなんて役に立たない」とか、言われますが、本当にそうかいな、と思ってしまうのです。
 そら、あなたが「学ぼうとしていなかったから」じゃないの? 「学べない場所?」にいたからじゃないの? と思ってしまうのです。
 これは僕の持論であり、僕の研究領域にだけいえることかもしれませんが、「社会で求められている能力」と「大学での研究を通して学べること」は、それほど差はない、と思ってしまうのです。
 だってそうでしょう。
 僕は社会科学系の出自なので、あくまで、そこだけの話になりますが、研究の初期には、たいてい「一次情報の取得のトレーニング」が含まれているはずです。
 どのように一次情報をゲットするのか?
 定量的情報をいかに処理するのか?
 曇りのない定性的情報をいかに取得するのか?
 大学では、一般に「研究という活動」を通して、こうした「情報収集行動」を学生に教えています。知的探究には「研究方法論」が必要です。そして、研究方法論を学ぶ機会は、たいていの場合、用意されているはずです。
 もちろん、大学で教えられていることは、シャバ?よりも「抽象度が高い」かもしれません。しかし、そこで行われていることの「本質」はたいした変わりはないのです。
 大学でめざされているのは(僕の研究領域では)、
 いかに「生の声」をすくい上げ、「抽象的原理」をつくりあげるか?(地に足のついた概念をつくるか)
 です。
 そしてシャバで求められていることは(この場合はマネジャー)、
 いかに「現場」の情報をつくりあげ、「ビジョン・目標」を掲げるか?
 ですね。
 本質的に行っていることは似ているなと思いませんか? そら、同じかって言われたら、全く同じじゃないよ。でも、本質的にやっていることは似ていると思いませんか?
 このように僕の目からみれば、「大学において研究を通して教えられていること」と「社会で必要になること」は、そんなに隔たりがあるわけではないように感じてしまいます。ついつい、そんなことを悶悶と考えてしまいます。
(ここ数年「コンセプトを創ること」を社会人の方々に教える機会があるのですが、ここについても、同様のことを感じます。なぜ、高等教育を出られた社会人の方々に、概念生成という、本来、大学で学ばれていてしかるべき知的生産の基礎技術を教える必要があるのか? 自爆的ですが、大学教員として「無力感」を感じます)
 ▼
 本研究は「縦断研究」ですので、本格的な分析は、まだまだこれからです。我が仮説は、今のところ(2つの分析)において支持される傾向がありますが、最後にどうなるかはわかりません。
 でも、「どっかの国」から「輸入」されたリーダーシップ概念ではなく、「今」の日本企業で、役に立つ、地に足のついたリーダーシップ概念の片鱗でも提案できたとしたら、嬉しいことです。「知的生産物の輸入」ではなく「知的生産物の創造」にこだわりたいのです。
 そして人生は続く
ーーー
追伸.
 先だって地方課題解決プロジェクトの反省会がありました。HRアワードの賞状をかかげて、皆で記念撮影です。嬉しいことですね。事務局の皆様、お疲れさまでした。来年も引き続きどうぞよろしく御願いいたします。
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