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2014.9.26 09:52/ Jun

与えられる「ポジション」、創り出す「立ち位置」:駆け出しマネジャーの挑戦課題

 先だって、ある企業で現場マネジャーの方にヒアリングをさせていただきました(S社のSさん、Sさん、Tさん、ヒアリングにお答えいただいたTさん、ありがとうございます!)。
 駆け出しのマネジャーがどのような困難にぶちあたり、それをどのように乗り越えるのか。ここ数年取り組んでいる課題の探求であり、かつ、同社のマネジャー候補者研修のコンテンツづくりに活かすためのヒアリングです。毎回のヒアリングはとても勉強になります。
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 その際、あるマネジャーの方から伺った話が、非常に印象に残っています。
 曰く、
「課長のポジションは与えられるけど、立ち位置は自分でつくらなければならない」
 ここでマネジャーの方が「ポジション」とおっしゃっているのは「組織から与えられた課長という公式の肩書き」です。
 一方「立ち位置」とは、「職場のメンバーによって課長と認められ、その機能を十全にはたし、部下が動くこと」です。つまり、ここで、あるマネジャーの方は、「ポジションと立ち位置が重ならない=肩書きがあっても、部下がそれを認め、かつ、動いてくれるとは限らない」と述べています。
 一般には、組織から「課長という公式の肩書き」が与えられば、メンバーは、その人を「課長として認め」、その人は「課長としての機能を果たし、部下が動くこと」が期待されます。
 しかし、企業によって様々なので一概には言えませんが、20代後半ー30代前半でマネジャーへの抜擢が増えているこの企業では、時に、部下との年齢逆転が起こります。
 そうした企業においては、若いメンバーが課長に抜擢されると、急速に職場に同様がはしり、それまでうまくいっていた関係が、ともすれば「ぎくしゃく感、ハンパなくなる」状況が生まれます。
 
 そうした場合、若い課長は、ポジションという権力を時にいかしながら、職場全体における自分の「立ち位置(役割)」を自ら「つくらなければ」なりません。自分が職場にいる「意味」、どのような「関係」で、どのような「役割」を果たすのか、ということを、自ら「創ること」が求められるのです。
 この状況を如実に表現しているのが、
「課長のポジションは与えられるけど、立ち位置は自分でつくらなければならない」
 という先ほどの言葉です。
 この方は、マネジャー就任後6ヶ月は、ひたすら職場内のメンバーとの信頼関係を蓄積するために費やしたといいます。
 立ち位置をつくるには、それなりの時間がかかるということなのでしょう。誠に大変なことです。
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 マネジャー研究を細々と続けてもう3年以上が立ちました。
 現在、日本生産性本部さん(木下耕二さん、塚田涼子さん、古田憲充さん、桶川 啓二さん、野沢清さんらのチーム)との共同プロジェクトで、また新しい試み(駆け出しマネジャーがマネジャーになる前に受講するプログラムの開発:名づけてワクチンプログラム!)をはじめようとしています。
 また、Y社との共同研究もはじまっています(Y社のK課長、はじめ同社人事部の方々、には心より感謝いたします。研究室の浜屋さん、OBの関根さんと共同で、このプロジェクトを推進します)。
 こちらの研究では、同社のマネジャーの方々がどのような行動をとり、どのような成果を生み出しているのか、について、マネジャー就任前ー就任後の縦断研究を実施させて頂くことになりました。心より感謝いたします。ありがとうございました。
 マネジャー研究は僕にとっては「自分事」でもあります。地に足のついた知見を生み出していきたいと願っています。
 そして人生は続く

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