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2013.12.9 08:51/ Jun

「経験バラバラ放置病」を防止するために!?

「学生時代には、NPOで活動をしていました。あとは、学生団体のリーダーをやっていました。あと、社会人とともに朝活してました」
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 ちょっと前のことになりますが、あるところで、「ハイパーアクティブな学部生」の方に、お会いしたことがあります。
 そのパワーは、誠にすごいもので、学生のうちから、多種多様な活動をなさっていることが、非常に印象的でした。
 学部1年ー2年生の頃の僕自身は、「ハイパーダメポな学生」!?でしたので、「あらためて、すごいなー」と思うとともに、その活動の詳細をうかがっていました。
 それぞれの活動は非常に興味深いもので、それを可能にした若さが羨ましく思いました。いいなぁ。
 しかし、同時に、ひとつだけ感じたことがあり、アドバイスも、させていただきました。
 活動そのものについては、僕にアドバイスできることは、ほとんどありません。が、それを「他者に伝えるとき」には、どのように伝えればよいか、ということについて、思ったことがありました。オッサンの独り言ですが、もしかすると、少しだけ役に立てるのかな、と。
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 僕自身が、学生さんの話を伺っていて思ったこと。
 それは
 「経験が、バラバラの状態になっていること」
  そして
 「経験が、”現象”のまま放置されていること」
 でした。
 学生さんは、非常に多種多様な活動をなさり、多くの経験をしていました。しかし、それは、そのときまでは「バラバラ」の状態になっていました。
 ひと言でいえば
「あれもしたし、これもしたし、それもした」
 という状態になっているということですね。僕には、それが少し残念に思えました。相互の経験が、等価のまま、併置されている状況でしょうか。せっかく、いろいろやっているのだから、そのままバラバラにしておくのって、もったいないよね、と思いました。
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 もうひとつは、多種多様な経験が「現象のまま」放置されていることでした。
 つまり、
「あんなこともあった、こんなこともあった、そんなこともあった」
 の状態になっているということです。
 もし可能であるならば、少し時間をとって、「あんなこと」「こんなこと」「そんなこと」という「現象」を、いったん上から見つめ直し、「意味」を考えてみるとよいなと感じました。
 願わくば、「あんなこと」や「そんなこと」を「現象レベル」のまま放置せず、「意味レベル」に昇華させるということです。
 いろいろやったことは、よくわかるし、僕は、本当にすごいと思う。
 でも、だから、どうだったんだろう?(So what?)
 何をわかったのか、わからなかったのか。
 何ができたのか、何ができなかったのか。
 何を得て、何を得られなかったか。
 自分にとってはどんな意味があったのか、なかったのか。
 それらを考えなおして、語りなおしてみると、さらに他人には伝わるし、興味深いことがわかるような気がしました。
 それは「自分のしてきた別々の経験を、つなぎあわせて、ストーリーにすること」に似ていることなのかもしれません。
  ▼
 ハイパーアクティブな学生さんは、世の中では、上げられたり、下げられたり、するようですね。こうした学生を「意識の高い学生」と十把一絡げに括り、批判する動きもあるようです。まぁ、わかるといえば、わかる。
 でも、僕自身は、そうした「既存の議論」に興味がありません。というよりも、、、、他人が、どんな生活をおくろうが、僕には1ミリも興味がありません。
 ただし、ひとりの教員として、一人のアクティブな学生を目の前にして話を伺ったときに思うことはあります。
 僕の脳裏に浮かんだことは、「何もせず、のめり込まず」とか「何事もほどほどに」という価値観で、貴重な学生時代を漫然と過ごすのなら、多少「痛く」ても、活動していた方がいいんじゃない、ということくらいです。
 もしかすると、そのハイパーアクティブさが、いつか通用しなくなるときもくるかもしれないし(組織社会化のときのリアリティショックは、きっと、通常の学生より大きいことが予想されます)、いつか、振り返ったときに、自分自身で反省するときもくるかもしれません。
 でも、それでいいんだと思います。今は、そのアクティブさが「資源」でしょう。
「いつか通用しなくなること」を恐れて、「何もしない」よりは、「何かして、あとから振り返る」の方が、少なくとも僕は好感をもてます。
 嗚呼、僕自身も、今から考えてみれば、たくさんの「お痛」を繰り返してきました。ていうか、40近くなっても、いまだに「痛い」で(笑)。「痛いオッサン」か、、、本当に痛いな。
 しかし、同時に、感じたことは、多種多様な経験は、そのまま放置しておいたり、バラバラの状況で放置しておくには、もったいないなということです。
 少し整理しておけば、もう少しはっきり自分の為してきたことを「他者に伝えること」ができるよ、と思いました。
 そして人生は続く

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