2013.12.4 08:56/ Jun
「大規模に人を集める講演」だから、「双方向のやりとり」はできない
一般に、「大規模」と「双方向」は二律背反の事柄だと思われています。大規模な講演スタイルでは、「講演者ー参加者」「参加者ー参加者」間のやりとりは、なかなか難しいのではないか、と。
僕自身も、今から十年くらい前までは、同じことを思っていました。
しかし、その「思い込み」が崩れるきっかけがおとずれます。それは2004年のフルブライト奨学生としての米国留学でした。
かの地で目にした、いくつかの出来事や経験が、そのきっかけになります。今日は、そのうち、3つを紹介します。
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ひとつめ、それはActive Learningとよばれるスタイルの胎動を目にしたことでした(Active Learningは、伝統的な講義スタイルをアンチテーゼとした双方向重視の学習を形容する、いわゆるアンブレラワードです、細かいことは、また)。
僕がボストンに留学していた頃、客員研究員として籍をもたせてもらったMITでは、Active Learningというスタイルでの実験的授業がはじまっていました。
初等物理の大規模授業を、いかに参加者ー参加者間のコミュニケションを確保しながら、実施するか。
たまたま隣室になった方と仲良くなり、その彼が、Active Learningの実践をなさっていました。同室には、この授業で論文を書いた方がいました。
そうか、大規模なスタイルでも、工夫一つで参加者ー参加者間のやりとりを確保できるのだ。
Active Learningに出会ったのは、たまたま、でしたが、なるほどな、と思いました。
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ふたつめは、大学院での授業でした。
当時、僕は、時々、大学院の授業を受けたりしていましたが、教授が問いを投げかけ、それに対して学生が答える、というような授業スタイルが、とられることが、ままありました。
著名なマイケル・サンデル先生とまではいかないのですが、近くの人と少し意見を交換してみて、とかは、結構たくさんあった気がします。
もちろん、そうした双方向スタイルの授業に耐えるためには、学生は事前にかなりの予習を余儀なくされることは言うまでもありません。当時、同じ部屋をシェアしていた友人(某省庁の官僚です)は、その予習に、夜な夜な取り組んでいました。本当に大変そうでした。
へー、大学院の講義でも、双方向のやりとりがあるんだ。そのために、たくさんの準備をするんだ。当時の僕は、そんなことを考えていました。
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みっつめは、人材開発系のカンファレンスに出たときの経験でした。
経営系よりのカンファレンス、人事系のカンファレンス、当時の僕は、とにかくたくさんの国際会議に参加していましたが、「一方向的」に情報提供されることの方が「希」でした。
日本でよく目にする「全く話がかみ合わないパネルディスカッション」という安易な講演スタイルが組まれることは、あまりなかったですし、とにかく参加していて、油断している暇がない、という印象を持ちました。なぜなら、すぐに参加者に活動が振られるから。
パネルディスカッションの5つのトホホ文法 : 尻切れトンボ、みんな違ってみんないい、オレオレ質疑、過剰プロレス、リンダ困っちゃう!?(僕はパネルディスカッションが嫌いなのです)
http://www.nakahara-lab.net/blog/2012/08/post_1879.html
活動は、単なるクイズであることもありますし、問いかけである場合もあります。講師が「わざと」間違って、参加者は間違いを探す、という場合もありえます。
基調講演をするような、超スターは別として、そこには何らかの工夫がなされていました。
人材開発関係のカンファレンスが、「人」とか「学習」に配慮をしない運営をするというのは、本末転倒、矛盾もいいところなので、当たり前といえば当たり前なのですが、当時は新鮮でした。
僕は、そういうカンファレンスに参加しては、ヘタクソな英語で、「日本の人材開発の現状」を「隣にたまたま座った少し不幸な外国人」に説明していました。
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今日は「大規模」と「双方向」の関係について考えていました。
要するに言いたかったことは、工夫を行いさえすれば「大規模であること」と「双方向であること」は決して矛盾することではなく、参加者のエンゲージメントを高めることができるよ、ということです。
もちろん、それには綿密な「プランニング」が必要になります。この「プランニング」の話については、また別の機会にさせてください。
そして人生は続く
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