2013.11.20 10:04/ Jun
最近は、あまり経験することが少なくなりましたが、10年弱くらい前は、授業などでグループでの議論をうながすと、それに参加しない学生がでてくることが、ごく希にありました。
「どうしても議論しなくてはならないですか? 一人でやった方が早いかもしれません 僕はひとりで考えてもいいですか?」
まー、わかる、言いたいことは(笑)。たいがい、こういう意見をもっているのは、いかにも優秀そうに見える、尖った学生で、頭に少し寝癖がついてて、だいたい、前の席の横の方に座ってますかね(笑)。
今となっては、なかなか気骨のある学生だな、と思うところもないわけではないですが、授業を運営していく観点からすると、なかなか困った事態です。家で、いくらでも、ひとりで考えるのはいいんだけどね、授業ではね。
何とかしなくてはなりません。
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こういう場合、いくつか対応策があります。
もっとも単純なのは授業のシラバスに、”この授業ではグループでの議論があること”が明示されていれば、それを持ち出して、
「おら、こういう方針で授業運営しているんだよね、書いてあるよね、授業の冒頭で確認したよね」
と説明するやり方です。
シラバスを書くこと、授業の一番最初に学生と「シラバスをにぎること」は、こうした観点からも、大切なことです。僕はどんな授業でも、一番最初のオリエンでは、シラバスリーディングを行って、必ず学生に問いかけます。
「今読んできたように、経営学習論という授業をやるけど、ここにいらっしゃる方は僕と、同じ船にのれますか? もし難しいなら、この授業をとるのはやめるという選択をとっても、ぜんぜんいいですよ。気分を害しませんから、遠慮なくいってください。皆さん、ほんとうに、いいですか?」
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先ほどの気骨のある学生は、まだモジモジしています。ここまできたら「抵抗」すらしないものの、「あと一歩背中を押してあげなければ」、活動に「ノレ」ません。そういう場合は、「シラバス作戦」に加え、「あのねー、将来にとって大切なんだよ」という意味づけで迫ります。
「君は、”一人でできるから集団はいらない”と思っているかもしれないけどさ、話しあいで意見を出せるってのは、君の将来にとっても、大切な練習だよ。授業は練習だと思いなよ。
一般企業に就職したら、たぶん仕事の9割は、共同作業だよ。仕事にもよるけど、多くの場合、ひとりで仕事ができるわけじゃない。そこには話し合いとか、必ず入ってくる。
研究者になったら、ひとりで研究できるかっていうと、そうでもない。分野にもよるけど、今の研究の多くは共同研究だし、研究者は、思考を深めるために、たくさん、研究者同士で議論するよ」
一般企業はいうまでもないことですが、研究者の場合でも、話し合いは大切だ、ということを述べます。「研究者すら孤独ではいられないということ」を明らかにしたのは、Dunberなどの近年の科学フィールド研究の知見ですね。
こういう場合、こうした意味づけで、100%学習者の満足が得られるわけじゃないのですが、僕は、こんな感じで対処してきました。これがベストだとは思いませんが、まー、何とかかんとか。
興味深いのは、こうしたかたちで、最初に抵抗を示した学生ほど、あとあと、ノリノリになる場合もあるということです。もちろん、すべてではありませんが。
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今日の話は、グループワークと「人はひとりじゃいられない」という話でした。ちょっと前は、たまに「グループワーク」に加われない方も多かったけれど、最近は、こうしたこともめっきりなくなりました。
それだけ、学生が慣れてきているのかな、とも思いますし、それはそれで、ほんのちょっぴり寂しいことでも?あります。「ほんとの困ったちゃん」は「マジなんとかしてくれ、困ったちゃん」なのですが、グループに加われないような「ちょっぴり困ったちゃん」は、それはそれで「かわいらしい」ものなのです。
「あまのじゃく」だね、全く(笑)。
そして人生は続く。
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