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2013.10.31 08:25/ Jun

若い人が多い職場はどこか!?:「職場の年齢構成」と「人にまつわる課題」の話

 仕事柄、さまざまな職場にお邪魔させていただきますが、その際にはいろんなことを観察します。
 何歳くらいの人が、どのように働いているのか。
 机はどのように配置されているのか。
 掲示物には何がはられているのか。
 観察ポイントは枚挙に暇がないのですが、その中でも最も気になることのひとに「職場で働く方々の年齢構成」があります。年齢構成は組織によって多様です。そして、この「多様さ」には、いつも驚かされます。
 アタリマエだのクラッカー?かもしれませんが、組織によって、若い人がバリバリ働く職場もあれば、シニアの人がぐいぐいひっぱる職場もある。
 そして、この「年齢構成」によって、さまざまな「人にまつわる課題」が出現してきます。
 年齢構成は、シニア型、ピラミッド型、ふたこぶ型、若手型の4つくらいに、おおよそ別れるのですが、皆さんの職場は、どのような年齢構成でしょうか。
  ▼
 統計データを調べる時間がないので、個人の印象論で述べますが(笑)、シニア型は、歴史の長い組織、重厚長大系の企業などに多いかたちのように思います。シニア型とは、組織メンバーが年配者でしめられている組織です。
 こういう組織では、人件費の高騰やら、役職経験者の処遇やら、加齢に応じたモティベーションやパフォーマンスの低下、フリーライドの増加、技術継承などの問題、若手の離職などの問題が生じている場合が多いですね。
 最もバランスのよい?ピラミッド型は、あまり目にすることはありません。ポストバブルの時期でも、安定的に雇用を行っていた組織が、このかたちになる可能性がありますが、一般には、これを裏返したかたちになることが少なくありません。
 ちょうど現在ミドルエイジにさしかかっている方々は、ポストバブルの雇用抑制時期に採用になった方々だと思われます。
 よって、多くの組織では、本来ピラミッドの頂点にあるはずの人が、最も少ない事態が出現します。それが「ふたこぶ」型です。
「ふたこぶ型」の組織では、若年層の育成の問題、ミドルの方々のマネジメント力不足、年配者から若年層への技術継承などが問題になることが多い印象があります。
 ミドルの方々が若かった頃には、人数が少なく、しかも人材育成施策も整っていなかった。
 少し上の世代の人数が多いので、リーダーシップをにぎる経験は、なかなか得られず、また自分より下の世代は、雇用抑制によって、なかなか入社してこなかったので、メンターをつとめた経験もない。
 よって、マネジメントの基礎になるような経験を積むことがなかなかできなかった方々が、マネジャーの年齢にさしかかっています。マネジャーの年齢になるということは、若年層を育成する責任も、当然、この世代にかかってきます。
 すなわち、ミドルの方々のマネジメント経験の不足と若年層の育成は、切り離して考えることはできません。それは、実は、連動した問題であると考えられません。
 このように年齢構成に応じて、さまざまな「人にまつわる課題」も多様に出現します。皆さんの組織ではいかがでしょうか。
  ▼
 最後に、若手型の組織として、最も印象深いのは、皆さん、どこだと思われますか? つまり、若い人がものすごく多い職場、ということです。
 これは県や地域特性などの影響を受けますので(県によって年齢構成が異なります)、一概には言えないのですが、僕が住む首都圏ということになりますと、印象深い職場が、3つあります。
 若い人が圧倒的に多い職場、その代表は、教員(初等教育)・看護師・ベンチャー企業です。
 たとえば、小学校などにお邪魔するとしますね。そうすると、学校によってですが、教員の3分の1 / 2分の1は、経験5年未満の先生でしめられている学校もあります。
 こうした職場では、経験ある教員が圧倒的に足りていないので、若年層の育成問題が前景化しています。昨今の学校の課題というのは、保護者対応に代表されるように組織としての対応を求められる場合が多くなっています。こうした問題で若年層が適切な処置を行っていくことは、なかなか難しい課題です。
 看護師さんも大量採用の印象がありますね。病院によって一概にはいえませんが、首都圏の比較的大規模な病院ということになりますと、お会いする方、どのかたも、看護師さんたちが若い。そういう印象があります。
 ベンチャー企業は、そのまんまですね。まだ組織がそれほど大きくはないので、多くの仕事は機能分化していません。30歳に至らなくても、役職者になっている方々と、そしてまだまだ若い20代の方々が、働いている、印象があります。
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 今日は年齢構成と人事課題について、僕の印象を述べました。人事課題の発現は、年齢構成だけによって決まるわけではないので、今日のお話は、あてはまる組織もあれば、そうでない組織もあると思います。また、雇用統計を見ながらお話をしていないので、あくまで印象論だということをご承知置き下さい。
 ただし、一方で、年齢構成というものは「将来、どうなるかを予測できる可能性の高い情報ソース」であることも、また事実です。だって、「誰しも、1年に1歳、年をとるのですから」。それに応じて、中長期の視点で策を練る、ということも、また必要なことなのかもしれません。
 今のままの人員構成でいった場合、近い将来、5年後、10年後に、どのようなことがおこるかは、ある程度は、予測できることなのかもしれません。
 えっ、あんたの所属している大学はどうなんだって?
 あのー、それは、予測可能だと思いますけれども
 ・・・ただし、ここでは決して言いますまい(笑)。
 そして人生は続く。

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