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2013.6.13 06:42/ Jun

60年代の西海岸・アカデミックムーブメントを妄想しつつ、眠りに落ちる

 皆さんは、寝る前に、なんか本を読んで寝ますか?
 早寝早起きの小生は、最近は、もう10時になったら寝床に入ってしまいます。そして、読み始めることが多いのが、カルロス・カスタネダの一連の著作です。最近、新訳がだされて、これを夜な夜な読むのが日課になっております。
    
 この著作、かつて1960年代-70年代には、「一大ブーム」になった作品です。
 お話は、UCLAで文化人類学をおさめたカルロス・カスタネダが、ヤキ・インディアンの呪術師ドン・ファンのところに弟子入りするところからはじまります。カスタネダは、ドン・ファンから世界に関する哲学的見方を授けてもらったり、呪術を使った意識変容を経験します。その生き生きとしたルポルタージュの様子は、社会学者・見田宗介がコミューン論の立場から著した「気流の鳴る音」、ドゥルーズ・ガタリの『千のプラトー』​などにも引用されていますので、ご存知の方は多いでしょう。
 僕の場合、興味関心は、「呪術」にはありません。。。さすがに。
 というよりも、ドン・ファンが提示する「もうひとつの世界の見方」というものが – その妄想チックな壮大さが – ちょうど、寝床にはいって、ウトウトしかけた小生にとってはちょうどよいのです。
 知者とは、学ぶという辛苦に真に従ってきたもののことなのだ
 つまり、焦りもせず、ためらいもせず
 できるかぎり深く力と知の秘密を探るもののことなのさ
 
 あー、ドン・ファン。学ぶってのは、辛苦に従うことなのかい。そうね、そんな見方もあるのね、インディアン的にはそうなんだね、まー、いいや・・・むにゃむにゃ、はい、おやすみ。
 という感じで、おそらく数ページ読んでは「おやすみのびた君」を繰り返している毎日です。これを「読書」と呼ぶかどうかは知りません。
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 今日は、僕の寝る前の「読書?」のこと – 誰にとっても一銭の得にもならないこと – を書きましたが、しかし、最近、思っていることは、おそらく、この時代の思想的思潮を – 60年代の西海岸で生まれた思想 – 、僕は、どこかで、ひそかに影響を受けているのだろうな、ということです。それが何かはわからないですし、それを言い当てるだけの、わたしに哲学的素養もないのですが、最近、そんなことをよく思います。自分が生まれる前のことなので、想像でしかないのですが。
 考えてみれば、学部時代からもっともよく読んでいたのは、見田宗介先生の一連の著作でした。見田先生は、カスタネダの著作を下敷きに著した「気流の鳴る音」を、その後の仕事の「モティーフ」になさっていたことは、同書の後書きに書かれているとおりです。
 恥ずかしながら、最近知ったのですが、カルロス・カスタネダの指導教員の一人には、エスノメソドロジーのハロルド・ガーフィンケルがいるそうです。学部時代にお世話になった指導教員の先生は、一時期、このガーフィンケルの著作、それに影響を受けた認知研究の論文を、ゼミの購読文献になさっていました(せりか、から出ていたガーフィンケルの本、絶版になっていたんですね)。
 言うまでもなく、1980年代 – 1990年代の学習・認知研究をリードしていたのは、西海岸の一連の研究者の研究です。何かありそうです。
 また「ウェブ・ソーシャル・アメリカ」という、テクノロジーと思想との関連を追った、これまた非常に興味深い本がありますが、この時代のヒッピーカルチャーが、現代のインターネットテクノロジーに与えた影響は少なくないといいます。インターネットは、「ヒッピー」ならぬ「ヒッキー時代?(大学に入って、すべての目標を失い、シオシオのパーの前期2年間を過ごしてしまった・・・後悔しとります)」の大学生の小生が、もっともハマったものでした。
  
 ▼
 そんなことをボーっと考えながら、昨日も、眠りに落ちました。
 いささかも思考は前に進んでいる気はしませんが、60年代・70年代という時代、とくに、その時代の西海岸では、どんな思想がおこっていたのかを、一度時間があるときにでも、探究してみたいな、と感じています。そんな時がくるといいなぁ。。。むにゃむにゃ
 そして人生は続く

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