NAKAHARA-LAB.net

2013.3.6 06:42/ Jun

「何かに挑戦している大人」と「何をやってもつまらなそうな大人」 : 「素朴概念」と「組織の枠」をはずして考える

「何かに挑戦している大人」「働きがいをもって仕事をする大人」は、組織の大小にかかわらず、探せばどこにでもいる
 逆にいうと、
「やらされ感漂いながら疲れ果てて仕事をしている大人」「何をやってもつまらなそうな大人」は、組織の大小にかかわらず、探せばどこにでもいる
  ・
  ・
  ・
 文章にしてしまうと「アタリマエのコンコンチキ」のように思えることかもしれませんね。いやー、まことに失敬。でも、ここ数年、学部生の方々と話していると、必ずしも、そうは思っていない方がいるよな、と思うことがあります。
 場合によっては、
 大きな企業=組織の歯車として働く
 ベンチャー企業=夢をもって挑戦して働く
 ないしは
 大きな企業=言われた仕事をやる
 ベンチャー企業=自分のやりたいように働く
 みたいな「イメージ」をもっておられる場合が少なくありません。
 別に他人が組織にどういうイメージをもとうが、それは「人の勝手」なので、僕としてはどうでもいいです(社会人面してアドバイスする気はありません)。採用や就職は専門外、全くの門外漢ですし、上記の命題を検証できる手持ちのデータはありません。
 ただし、この十年以上、本当に様々なビジネスパーソンとお会いしてきた経験からすると、この認識とはちょっと違う現実があるような気がするのです。
 ひと言でいうと、人の働き方や仕事に対するモティベーションを考えるときに「組織の規模」や「組織の枠」に囚われすぎると、判断を誤ってしまうことも少なくないな、と思うのです。
 別に大きな企業を擁護する気は「さらさらない」のですが、「そういうのは組織の規模じゃない」ような気もします。「何かに挑戦している大人」や「何をやってもつまらなそうな大人」は、組織の規模にかかわらず、どこにでもいるよ、と。
 大企業にいても「新技術の開発、新たなマーケティング戦略、新たな商品開発に、夢をもって取り組んでいる人」もいる。部署間をつないだり、社外の様々な企業と連携して、イノベーションをおこそうとやっきになっている人もいる。
 もちろん、一方で、働きがいを失っている人もいる。いやいややりたくない仕事に取り組む人もいる。
 他方、ベンチャー企業だからといって、「自分のやりたいように働ける」場合が必ずしも多いわけじゃない。ひたすら金策に走り回ることに疲れ果てることもある。人数が少ないので、すべての業務を自分で引き受け、全く自宅に帰ることがままならない人もいる。
 もちろん、夢をもって、自分の事業を大きくすることに取り組む人もいる。新技術を片手に、世界を相手に仕事をしている人もいる。仕事を通じての成長に生き甲斐を感じている人もる。
 どっちが多いか、と言われると、正直、わかりません。
 一方で、「もし、どちらかが多いのだする」と、そのことで、自分の進路を選択しちゃうのですか? とも聴きたくなります。 
 おおよそ「人」に関することなんだから、意識やモティベーションは、時期に応じて日々かわり、アップダウンを繰り返すでしょう。意識やモティベーションが、ずっと「高い人」は、ある意味で危ない気もしますし、ずっと「低い」のも危ない気もします(笑)。
  ▼
 やや話が「脱線」しました。
 要するに、こういうことです。
「組織の規模が、人の働き方やモティベーションを決定する」
 と考えることは、ある種の「ステレオタイプ」のようにも思います。それは、いわゆる「素朴概念」・・・仮に名付けるのなら「素朴労働観」「素朴組織観」「素朴モティベーション観」といってもよいかもしれません。
 こうした「固定的な認識」に依拠かぎり、そこで「思考停止」できますので、「他に何も考えることがなくってて楽」なんだけど、どうも「現実」はそうなっていないんじゃないだろうか。
「組織の規模」や「組織の枠」でものを考えることをやめてみると、いろいろ見えてくるものがあるんじゃないかな、と思います。
 「組織に縛られたくない」とよく人はいいます。もしそうであるのなら、自分が働き方を考えるときに、自らが「組織の枠」に囚われていないかを、チェックしてみてもいいのではないでしょうか。「組織に縛られたくない」人が、「組織の枠」を通して物事を見つめているのだとしたら、それは論理矛盾です。
「何かに挑戦している大人」
「働きがいをもって仕事をする大人」
「やらされ感漂いながら疲れ果てて仕事をしている大人」
「何をやってもつまらなそうな大人」
 誠に、世の中には、いろんな人がいます。
 学生にも多種多様な人がいて、大学時代をいろいろに過ごすように、ビジネスパーソンといっても、多種多様。働き方に対する意識やモティベーションも多種多様。
 島倉千代子の「人生いろいろ」、今度、カラオケで歌ってごらん(笑)。
 もしアドバイスするのだとしたら「組織の規模」「組織という枠」で判断する前に、いろいろな人に、あってみて、話をしてみると、いいんじゃないかなぁ。
 そして、そのうえで「自分はどうなりたいか」を考えて見れば、また違ったパースペクティブが広がるのかもね。
 本当に情けないほど陳腐なアドバイスでごめんなさい。でもね、本当にそうとしかいいようがないので、しょうがないんですけれども(笑) なんか、こういうの、しゃべるの、オッサン臭いね。もうやめるね。
 そして明日に、人生は続く

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2024.11.15 15:01/ Jun

【無料カンファレンス・オンライン・参加者募集】AIが「答え」を教えてくれて、デジタルが「当たり前」の時代に、学生に何を教えればいいんだろう?:「AIと教育」の最前線+次期学習教育課程の論点

2024.11.9 09:03/ Jun

なぜ監督は選手に「暴力」をふるうのか?やめられない、止まらない10の理由!?:なぜスポーツの現場から「暴力」がなくならないのか!?

2024.10.31 08:30/ Jun

早いうちに社会にDiveせよ!:学生を「学問の入口」に立たせるためにはどうするか?

2024.10.23 18:07/ Jun

【御礼】拙著「人材開発・組織開発コンサルティング」が日本の人事部「HRアワード2024」書籍部門 優秀賞を受賞しました!(感謝!)

本当の自分の姿は「静止画」ではなく「動画」じゃなきゃわからない!?

2024.10.14 19:54/ Jun

本当の自分の姿は「静止画」ではなく「動画」じゃなきゃわからない!?