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2013.1.7 09:18/ Jun

マネジャーは、どの程度の時間をマネジメント業務にかけているのか? : イチゴケーキのイチゴは誰が食べるのか?

 よくあるマネジメントの教科書では、「マネジャーになるとは生まれ変わりである」と書かれています。曰く「今までは”ソロプレーヤ”として”個人の業績”を追うことが求められいましたが、今から、生まれ変わらなくてはいけない。ソロプレーヤーとしての自分に別れを告げ、生まれかわり、これからはマネジャーとして、他人を使っていかなくてはならない」というわけです。
 確かにマネジャーの業務は「他人を使って仕事をなすこと」ですので、そのことに「間違いはない」のですが、「マネジャーになること」が「ソロプレーヤーからの生まれ変わり」だというメタファ自体には、「現代の職場の実態」はかけ離れているような気がします。つまり、「マネジャー」と「プレーヤー」は「0」と「1」の世界のように、別れているわけではないということです。
 そして、もしこれが仮に「是」だとするなら、生々しい職場の現実、仕事の現実から、マネジメント論を再構築しなおさなければならないのではないでしょうか。「根性論」や「わたしのマネジャー論」を相対化しつつ、現代の職場、組織の現実にあったマネジャー論が必要であるような気がします。
 まだまだ分析の途上なので、確固たることは言えないのですが、僕が、日本生産性本部さんと行った調査では、「マネジャーの全業務時間において、マネジャーたちが、どの程度の割合をマネジメント業務にかけているか」をミクロに調べています。
 また同時に「マネジャーたちが、どの程度の時間を、いわゆるプレイングマネジャーとして、自分の個人業績を追い求めるために用いているか」を子細に調べています。
 たとえば「マネジャーたちが、全業務時間のうち、どの程度、マネジメント業務に時間をかけられているか」というと、下記の表にようになります。
management_time.png
「90%以上がマネジメント業務」という人、すなわち、「古典的なマネジャーの教科書が理想とするようなマネジャー」は、全体の2割程度しかいません。日本企業につとめるマネジャー536名のうち、約半数以上は、マネジャーの割合の方が、少ないか同程度で、自分の仕事を抱えつつ、個人として業績をだしながら、マネジャー業務を行っていることがわかります。
 中には、そのことに悩みをお持ちの方も少なくありません。43.5%の方々は、「プレイヤーとしての成果をあげなければならない自分」と「マネジャーとしての自分」に葛藤を憶えています(肯定的回答を示しています)。
 これは想像の域を出ませんが、よく起こりがちな葛藤は、おそらく、こういうことでしょう。「自分の成果」と「チームの成果」が重なってしまう場合に、こういうケースが生まれが知です。
 つまり、「プレーヤーとして自分の個人業績を追い求めること」は、究極でいえば、「一番おいしいところを、自分のものにすること」です。つまり「イチゴケーキのイチゴは、自分で食べてしまうこと」です。
 一方で、チームを率い、マネジメントを行っていくためには、「一番おいしいところを他人のものとして成果をあげさせ、動かすこと」です。つまり、「イチゴケーキのイチゴは、他人に食べさせなくてはなりません」。
 実際は、この関係は「トレードオフ」ではない場合も多いのかもしれませんが、それがトレードオフだと認識された場合、そこには激しい心理的葛藤が起こるはずです。
 前にもブログで書きましたが、僕は「マネジャーになるとは、生まれ変わりである」であるというよりも、「異なったメタファ」が必要になってきているような気がします。
 むしろ、「マネジャーになるとは、トランジションである」といったようことも言い得るのかもしれません。そして、この「トランジション」には一定の「痛み」が伴う場合があります。そこをどう支援していけるのか、乗り越えていけるのかが、おそらく重要な議論のポイントになるのでしょう。
 分析は、まだまだ途上です。
 しかし、いずれにしても、「新年の抱負」に書きましたとおり、今年は、「今、アクチュアルにおこっている現実や課題」を「地に足のついた生々しいデータ」から、解きほぐしていきたいと考えています。「理想のマネジャーとは・・・・あるべし」といった理想論」や、「マネジャーなんて根性で何とかなる」といったような「根性論」を相対化しつつ、「今を生きる、現場の方々にしっくりとくる議論」を模索していきたいと考えています。
 そして人生は続く

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