2012.12.11 10:08/ Jun
僕の場合、仕事柄といいましょうか、研究の性格上といいましょうか、実務担当者・マネジャーをとわず、いわゆるビジネスパーソンなどを対象に、研修やセミナーなどで、お話しする機会が、たまにあります。
あまりに多忙で、かつ、教育研究・学内業務を最優先しなければならないことから、ご依頼のほとんどはお断りせざるをえない状況が続いていますが(大変申し訳なく思っております)、でも、大学教員としては、おそらく、一般のビジネスパーソンの方にお話しする機会は、少なくない方だと思います。
この10年、そのような生活をしてきて、その中で、様々な失敗を繰り返し、学んだことはたくさんあります。
拙い講演やプレゼンテーションをお聞き頂き、ご迷惑をおかけしたかもしれない方には、まことに申し訳ない限りなのですが、その中で、僕も確実に学んできました。以下は、その経験から学んだことを少しだけ紹介したいと思います。
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大人を対象にした研修やセミナーなどでお話しする際、大切なポイントは数々ありますが、特に、特に、特に、「クソ忙しいビジネスパーソン」が学習者である場合、必ず、留意しておきたい、必ず話しておかなければならないことがあるのですが、それは、皆さん、何だと思いますか?
もしかすると「留意する」とか、「話す」とかいうレベルでは、不足しているのかもしれません。
むしろ「しつこいと思われない程度に、折に触れて、何度も何度も、繰り返し述べなければならないこと」、そういうプロセスを通して「学習者とにぎっておかなければならないこと」が3つあるのです。
さて、それはなんでしょうか? ぜひ、皆さんも考えてみていただけますでしょうか?
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僕の経験に関する限り、それは「位置づけ」「構造」「到達点」の3つだと思います。
研修やセミナーには、短いものも、長いものもありますが、僕は、折に触れて、この3つを何度も何度も繰り返して述べます。時にはパワーポイントを繰り返したり、口頭だけで述べたり。あの手この手を使って、これら3つのことを学習者の意識にのぼるようにします。
「えーい、おのれ、くどいわい」と言われない程度にね(笑)。
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第一に「位置づけ」とは、要するに、「この研修が、なぜ存在するのか?」ということを、「学習者のコンテキスト」にあわせて、きちんと最初に「意味づけておくこと」です。
たとえば、マネジャーを対象者とした研修をする場合には、「昨今、マネジャーがおかれている状況・課題、マネジャーの興味関心をおさえたうえで、それをのべ、それとこれから「学習する内容」の関連を述べておくこと」です。
こういっちゃうとね、そんなもん、アタリマエダのクラッカー(!?)のように聞こえますが、この「位置づけ」が行えていないプレゼンテーションというものが、いかに多いか! 位置づけのはっきりしない情報提示は、すべて忘れ去られる運命にあります。そのあとに、どんな情報提示を行っても、「なぜ、この話を聞く必要があるのか」がさっぱりわからないので、なかなか耳に入ってこないのです。
おそらく、皆さんの研修・セミナーをレビューしてみると、そのことに気づかされるはずです。
逆にいうと、「位置づけを行えない」ということは、どういうことでしょうか。それは「学習者を知らないこと」か、ないしは、「学習内容がふさわしくないこと」になります。
先ほどの例で申し上げますと、「マネジャーがおかれている状況・課題、マネジャーの興味関心」がわかっていなければ、位置づけは行うことができません。つまり、大切なことは「学習者を知ること」になります。
また「学習内容」が「学習者の状況」に関連していなければ、同じように「位置づけ」は行えません。学習者と無縁なコンテンツ提示を行おうとすれば、位置づけができないのです。
このように考えますと、要するに「位置づけ」とは「学習者のこれまで / 今」と「これからの学習内容」に意味的連関をつくりあげる行為なのです。
皆さんのプレゼンテーションは、きちんと「位置づけられて」いますか?
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第二に「構造」というのは、学習内容をきちんと組織化・構造化しておくということです。
多くの研修やセミナーでは、講師の方は、パワーポイントをお使いになる場合が多いと思うのですが、パワーポイントでも、キーノートでも、この種のツールが、もっとも苦手なことは、「情報提示が線形に行われることであり、提示内容の関係がわかりにくくなること」です。
たとえば、今仮に、情報Aという大カテゴリの下に、サブカテゴリである情報B、情報Cがあるとします。また情報Bのサブカテゴリーには情報D、情報Eが存在し、情報Cのサブカテゴリーには、情報F、情報G、情報Hがあるとします。
注意深く考えますと、上記の関係図を描くことができない人はいないはずです。要するに、Aの下にBとCの二つがある。Bの下にはDとEの2つがあり、Cの下にはF・G・Hの3つが存在する。たった、それだけ、はい、それまでよ、です。
上記の文言では、大カテゴリー、サブカテゴリーという言葉を敢えて今は使っていますので、たぶん、この関係を間違う人はあまりいません。
しかし、これをもし、何もしらない、初見の学習者に、パワーポイントなどで線形に情報提示し、講師がすらすらと話すだけだとしたら、学習者は、皆さんが、今あたまの中に描いた図と同じ図を、書くことができるでしょうか。
おそらくそれぞれの情報の関連性はあまり意識できず、提示された情報の中で興味深いところをひろうだけになってしまうはずです。また、BとCのサブカテゴリー下にある情報の関連がわからなくなってしまうはずです。
過去数十年にわたる学習研究の知見として、もはや原則といえるものの中に、「学習内容の構造化は、「学習の質」や「学習内容の現場への適応」に大きく影響を与えることが知られています。
さて、皆さんの「教えるための資料」は、構造化されていますか?
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最後に「到達点」というものは、言うまでもないことです。
つまり、研修やセミナーを経験した後で、結局、学習者には「どのような状況になって欲しいのか」を明示しておくということです。
研修やセミナーでは、多様で、異種混交の情報提示が行われます。そのような中で、到達点については、ともすれば忘れ去られがちなものなのです。うそー、というかもしれませんが、これが意外に見失われます。「あれ、結局、なんのためにここにいるんだっけ?」ということになりがちです。
作業の合間、折に触れて、どのような状況になっていることが、目指されるべきことなのかを明示しておくことが大切ではないか、と僕は思います。
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以上、今日は、人前で教える前に留意しておきたいポイントを、敢えて3つにしぼりお話ししました。
「位置づけが明確でないプレゼンテーション」
「構造がわからないプレゼンテーション」
「到達点が不明瞭なプレゼンテーション」
というものは、なかなか人に「伝わらない」ものです。
また、この3つが不明瞭であると、急に、「ビジネスパーソン」は「そわそわ」しはじめます。「お○っこ、したいのかな?」みたいな感じで(笑)。でも、それは違います。彼らが欲しているのはトイレではなく、位置づけ、構造、到達点です。
自戒をこめて、こうしたプレゼンテーション(情報提示)を行わないようにしたいものですね。
もちろん、これら3つは「絶対いつも必要なのか、コラ!」というと、そういうわけではありません。
このうち、いくつかを不明瞭にしてしまうティーチングテクニック、ファシリテーションテクニックというのも存在しますが、それは、教える方が、また別のプロフェッショナリティが必要になります。
また、この3つをおよみになった方は、もしかすると、「堅苦しさ」をお感じになることもあるかもしれませんね。
でも、特にこの3つ「以外」の点は、自由に、フレキシブルに、してもいいのです。あくまで、これらは、学習者とコントラクト(契約)しておきたい、ミニマムなポイントとお考え下さい。
というわけで、今日は敢えて3つに絞りお話しをしました。もちろん、ポイントは他にもあるでしょう。ぜひ、皆さんも考えてみていただけますと面白いのではないかな、と思います。
そして人生は続く。
追伸.
一応、小生、大学では「教育課程・教育方法部門」の准教授(なんちゃってですが)ですので、この種の原則、過去30年の研究知見のうち、メタ分析をへた、いわゆる原理・原則は腐るほど、あげることができそうです。
でも、そんなに多く述べても、それこそ、伝わりませんよね。「情報を絞る」ということも、大切なポイントかもしれません。
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