2012.11.13 06:31/ Jun
先日、ある業界で、数百名の新人さんたちを教育なさっている方が、研究室にお越しになり、こんなことをおっしゃっていました。
「新人たちがよく口にする言葉で、こちらもどうしていいかわからなくなるのは、”わからないことがわからない”です。何がわからないの、と聞いても、何がわからないのかがわからない」
本当にご苦労様です。数百名の新人を社会化する、というのは、本当に大変なことだと思います。そして、この言葉、同じ境遇におられる方で、「うーん、あるある」と思われた方は多いのではないでしょうか。
個人的には
「わからないことがわからない」
というワンワードが、とても印象的でした。
本当に「新人さんたちにとって、新たに参入した世界は、真っ暗闇。右も左も、何がなんだかわからない」んだろうな、と。だからこそ「質問できない」し、「聞くこともできない」のでだろうな、と。
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この状況に似た状況で、ふと思い出したのは、三宅なほみ先生がかつてなさっていた研究です。中原研D3の舘野さんが、下記に論文紹介をしてくれているので、そちらをご覧いただければと思います。
「わからない人は質問して下さい」という問いは本当に意味があるか?
http://www.tate-lab.net/mt/2009/11/post-143.html
要するに
「わからないことを質問することができるようになるためには、わかる必要がある」
ということですね。
新人は、表面的な質問ならできるかもしれないけれども、難しく本質的な問いを発することができない。なぜなら「わからない」から。
対して、玄人さんは本質的な質問ができる。なぜなら、わかっているから。
つまり、「わからないことを聞いてわかるようになる」という質問は、「個人の理解状況」に依存している、ということになります。
新人は、右も左もわからない状態にあるので、何を質問してよいかわからない。
つまりは「わからないことがわからない」。すなわち、その状況を言語化して、問いのかたちにして、わからないことをわかるようにすることは、今の段階ではできない。
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わからないことが、わからない。
新人は、新たな組織にエントリーした瞬間、圧倒的な不確実性に支配されます。
そこはどんな役割を担うことが期待され、何が評価されるのかすら、わからない。また組織の暗黙の規範も、行き交う人々がどのような仕事をしているかもわからない。つまり、彼/彼女には、質問を可能にする「軸」が全くありません。
このような状況下でなしうることは、おそらく、「自ら動くこと」であり、「環境に対して働きかけること」でしょう。その中で、わずかに得られる「人々からのフィードバック」を頼りにしつつ、環境の不確実性を自ら減少させ、わからないことは聞く。そうこうしているうちに、「わからない」ことが「わかる」ようになり、さらに質問することなどができるようになっていく。
新たに外部から組織に参入するときには、多かれ少なかれ、そのようなプロセスを得るのかな、と思います。
わからないことが、わからない
今は組織をよく知る立場にいる「あなた」も、以前、そのような状況を経験したことがあったのではないでしょうか? 皆さんは、どのように「わからないことが、わからない」状況を脱することができましたか?
「わからないことがわからない」状況からの脱出ストーリー、数百通りあったら、面白いですね。
そして人生は続く
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■2012/11/12 Twitter
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